VOL.196 SEPTEMBER 2024
JAPAN’S ENJOYABLE PUBLIC AQUARIUMS アートと生きものたちが共存する水族館

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「PLANETS 奇跡の惑星」ゾーン。日本最大級の球体水槽「AQUAアクア TERRAテラ」(直径3メートル)が展示されている。
Photo: ISHIZAWA Yoji

兵庫県神戸市には、アクアリウム*とアートが融合した新感覚の水族館「AQUARIUMアクアリウム ×バイ ARTアート átoaアトア (※以降átoaと表記)」がある。デジタルアート**や、最新の舞台美術の手法***による空間演出の中で生きものたちを観賞する水族館だ。水族館と美術館が一体化したかのようなátoaアトアのコンセプト、特徴などについて、運営会社の広報担当に話を聴いた。

兵庫県神戸市は古くから港町として栄え、大阪市や京都市と並ぶ関西圏****の中心都市だ。神戸市の中でも大型商業施設が集まる三宮さんのみや駅周辺では、海側の地域の再開発事業が進んでいるが、その一つとして2021年、水族館の「átoaアトア」が開館した。オープンから来場者数はすでに200万人に達したという。広報を担当している福﨑ふくざき 扶美ふみさんは施設の特徴をこう話す。

「デジタルアートや最新の舞台美術の手法による演出された空間でアクアリウムを鑑賞できるのが特徴です。名称の“átoaアトア”は、Aquariumu(水族館) to Artアートが合わさった造語で、言わば、アクアリウムとアートの融合です。八つあるゾーンには、それぞれテーマがあり、そのテーマを形象するシンボリックな水槽を配し、アートとしての空間演出をしています。水面を歩いているようなガラス床の水槽”MINAMO”や、直径3メートルもの日本最大級の球体水槽”AQUA TERRA”など、特徴のある水槽をより幻想的に見せるような音、光、香りなど五感で感じられるような演出で鑑賞いただけます。」


「CAVE はじまりの洞窟」ゾーン。海中を泳ぐ魚の群れをイメージした照明が床に反射し、幻想的な空間を演出している。
Photo: ISHIZAWA Yoji

「ELEMENTS 精霊の森」のゾーン。背景の植栽が前衛的な生け花のようにアレンジされ、全体をアートとして鑑賞する。
Photo: ISHIZAWA Yoji

館内では、海水魚や淡水魚をはじめ、海辺や川辺に生息する生き物など、約100種類3,000点が展示されている。魚たちだけでなく、カピバラ*****やコツメカワウソ******の展示コーナーもある。

「“PLANETS 奇跡の惑星”と名付けられたゾーンには直径3メートルある日本最大級の球体水槽“AQUAアクア TERRAテラ”があります。こちらでは、無数の星に囲まれた宇宙をイメージした空間の中に、生命が存在する惑星を、球体水槽で表現しています。そこでは、10分間隔で上映するレーザーパフォーマンスや天井から降り注ぐミストなどにより全身で宇宙空間に浮かぶ惑星の生命力を感じ、没入体験を楽しめるように演出されています。」と福﨑さんは説明する。また、和風様式を感じさせる演出が特徴の、「MIYABI 和との間」と名付けられたゾーンは日本の観光客だけでなく外国人観光客にも特に人気だという。

「“MIYABI 和と灯の間”は、足もとのガラス床の下で錦鯉が泳ぎ、日本由来のイズモナンキンやトサキンといった種類の金魚*******も、ご覧になれます。こちらでは、日本の伝統工芸や舞台美術の手法を取り入れるだけでなく、和の香りの演出も加えることで、日本の伝統的な美意識を感じさせるような空間演出にこだわっています。まるで日本庭園を歩いているみたい、どこを撮っても絵になる、という声をよくいただきます。時間によって移り変わる光の演出で、日本の四季折々の情景を鮮やかに演出する幻想的な空間は好評です。」

MIYABI 和と灯の間の全景
ガラス床の下に鯉が泳いでいる。

「MIYABI 和との間」と名付けられたゾーン。和風の演出とガラス床の水槽が特徴。
Photo: ISHIZAWA Yoji


「MARINE NOTE 生命のゆらぎ」のゾーン。直径5m、水深約2.4mの大きな円柱型の水槽「Megaメガ Cylinderシリンダー」にはウシバナトビエイが泳ぐ。
Photo: ISHIZAWA Yoji

アフリカのマラウィ湖に生息する珍しい淡水魚「スキアエノクロミス・フライエリー」も見られる(「FOYER 探求の室」のゾーン)。
Photo: ISHIZAWA Yoji

館内の案内は、日本語とともに外国人観光客向けに英語を併記し、パンフレット類は英語、中国語(簡体語、繁体語)、韓国語を用意し、対応しているという。

また、同館では生物の展示だけでなく、生き物関連の研究をテーマとした企画を積極的に開催している。「当館で飼育するコツメカワウソは絶滅が危惧されている種ですが、カワウソ類の保全に関する意識を啓蒙する企画なども行いました。生き物や、生き物が暮らす地球の環境問題についても引き続き、知識を深められるようなイベントを今後も開催していきます。」と福﨑さんは話す。

海外からの来館者は全体の約1.4%ほどだが、海外からの来館者からは、写真映えするとして撮影した写真をSNSにアップして、撮影画像をシェアするなど好評だという。

「神戸の交通の要所である三宮駅、あるいは元町もとまち駅から歩いて20分ほど。街を散策がてら訪れていただきたいです。」

コツメカワウソ
カピバラ

屋上にある開放的な「SKYSHORE 空辺の庭」ゾーン。近年生息数が減っているコツメカワウソや、カピバラが飼育されていて人気だ。Photo: ISHIZAWA Yoji


* 水生生物の飼育設備を指す。水族館のような大型施設から個人宅に設置するような小規模のものにまたがる概念。
** パソコンやタブレットなどのデジタルデバイスを使って作られる芸術作品。
*** 舞台芸術において観客の視覚や想像力により舞台表現を助ける諸要素の総称。衣装、舞台装置や照明などの視覚効果などの分野を指すことが多い。
**** 京都・大阪・神戸を中心とする一帯の総称。
***** ネズミの仲間の中でいちばん大きなサイズの種類。南アメリカからアルゼンチン北東部の川沿いの草原や湿地帯に生息。
****** 13種いるカワウソの仲間の中で小型の種類。東南アジアの小さい河川や灌漑用水路などに生息。近年、生息数が減少し、国際自然保護連合(IUCN)の危急種(VU)に指定。
******* 鑑賞用に交配を重ねた鑑賞魚である金魚の品種。島根県産のイズモナンキン、高知県産のトサキンは指定天然記念物となっている。


By TANAKA Nozomi
Photo: ISHIZAWA Yoji

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