VOL.196 SEPTEMBER 2024
JAPAN’S ENJOYABLE PUBLIC AQUARIUMS
福島の自然環境を楽しく学べる体験型水族館「アクアマリンふくしま」
福島県いわき市の「アクアマリンふくしま」。
Photo: ISHIZAWA Yoji
福島県いわき市にある体験型水族館「アクアマリンふくしま」。ガラスドームで覆われた美しい館内には、約800種類、5万点の生き物が暮らしており、展示施設だけではなく、釣り場や広大なビーチを有し、鑑賞だけにとどまらず様々な体験型プログラムを楽しむことができる。昨年度(2023年度)は61万人ほどが訪れたという人気の水族館だ。
福島県いわき市にあるアクアマリンふくしま(正式名称:ふくしま海洋科学館)は、太平洋に面した水族館だ。水族館では「海を通して人と地球の未来を考える」を基本理念に掲げ、生涯学習施設として2000年に開館。
同館の学習企画営業部・西山 綾乃さんによると、この水族館の特徴は、展示のテーマが明確であること、そして水の中の「生き物」を展示するということだけでなく、日ごろ生き物たちが生活している自然環境を再現した「環境再現型の展示」を行っていることだという。
「福島県の沖合は、日本列島の南方の海から来る暖流・黒潮*と、北方から来る寒流・親潮**とが出あう「潮目の海」を形成していることから、当館は「潮目の海」を展示のメインテーマとしています。潮目の大水槽は、展示水量2,050トンの大型の水槽。三角形のトンネルをはさんで、黒潮水槽と親潮水槽に分かれています。黒潮水槽では、イワシやカツオなど外洋を泳ぐ回遊魚たちの力強い群泳が見られます。一方の親潮水槽では、ニシン、ヌマガレイ、チカなど北の海の魚とともに豊かに生い茂る海藻類を展示しています。」
また、「サンゴ礁の海」という展示も西山さんのおすすめだ。
「本物のサンゴのほか、細長く砂にもぐる様子がユニークなチンアナゴや、太陽の光に反射し輝くキンメモドキ***の群れなどを展示しています。」
「サンゴ礁の海」。写真の中央の左から右のオレンジの一群はキンメモドキの群れ。
Photo: アクアマリンふくしま
さらに「楽しく学べる水族館」として学習プログラムも充実している。
「釣り体験****では、自分で釣った魚をその場でから揚げにして食べることができます。命を「いただいている」ことについて考えることができる体験プログラムです。また、磯、浜辺、干潟の環境を水族館の敷地内に人工的に再現した広さ4,500平方メートルもの「蛇の目ビーチ」があり、実際に水に入って海の生き物を間近で観察できます。ほか、水生生物ではありませんが、ニホンリスなどの日本の森に暮らす動物の展示とともに、動物の能力にチャレンジできる遊具がある屋外エリア「えっぐの森どうぶつごっこ」など体験施設が充実しており、楽しみながら生き物について学ぶことができます。」
こうした展示や体験を通して自然環境の保全や命の大切さを学べる、アクアマリンふくしまの独自の運営の積み重ねは国内外で高く評価されている。
「公式ホームページは日本語のほか、英語、韓国語、中国語(簡体字/繁体字)で対応していますので、まずは当館について知っていただけたらうれしいです。」と西山さんは話す。
ぜひ、アクアマリンふくしまのホームページにアクセスしていただき、興味を持たれたかたは、機会があれば実際に同館へ行って展示を見るとともに、さまざまな体験にチャレンジしていただきたい。
* 「日本海流」とも言う暖流。東シナ海を北上して日本列島東側の太平洋に入り、日本の南岸に沿って北上する海流。
** 「千島海流」とも言う寒流。日本列島の北部・北海道の東端から北東に位置する千島列島に沿って南下して日本の本州の東北地方の太平洋側まで達する海流。
*** 体長約6cmで、浅い海の岩礁域やサンゴ礁に生息する魚。群れは様々な形に変化する。
**** 釣り体験は現在(2024年9月末現在)休止中。
By MOROHASHI Kumiko
Photo: Aquamarine Fukushima; ISHIZAWA Yoji