VOL.193 JUNE 2024
SUMMER FUN IN JAPAN: SEASIDE FESTIVALS AND EVENTS 豊漁と海上の安全を願って海を渡る神輿


担ぎ手たちは約600kgある神輿みこしを海に浮かべ、泳ぎながら押し進める。
Photo: 日本精蠟株式会社徳山工場

祭りは七月末から八月上旬に行われる。
Photo: 粭島市民センター

日本の本州最西端に位置する山口県は三方を海に囲まれており、豊かな自然と温暖な気候が特徴だ。その東南部にある周南しゅうなん市の粭島すくもじまでは、神輿みこし*が海を渡る祭りがある。地域の市民センターの担当者に話を聴いた。

周南しゅうなん市にある大島おおしま半島の先端に浮かぶ島が粭島すくもじまだ。この島は、フグの延縄はえなわりょう**発祥の地であり、島の北端にある貴船きふね神社***の夏祭りの一環で、神輿みこしが海を渡る祭礼があることで知られている。周囲3.7㎞の島には、島民250人ほどが暮らしている。だが、毎年7月下旬から8月上旬の日曜に行われるこの祭りを目当てに、夏は多くの観光客でにぎわう。粭島すくもじま市民センターの高松たかまつ 満里奈まりなさんは語る。

粭島すくもじま貴船きふね神社の夏祭りの由来について、詳細は明らかではありませんが、漁業が盛んであった約300年前、このお祭りは貴船きふね神社の夏祭りとして豊漁と海上の安全を祈願して執り行われたことが始まりと島に伝えられています。また、神輿みこしが海を渡り、それを船で伴走するという今のやりかたになったのは150年ほど前のこと。地元の海運業者の提案だったそうです。身を清めた約40名の白装束の男性たちで、重さ600kgの神輿みこしを担いで貴船きふね神社から“チョーサヨーイ”****という独特の掛け声とともに海へ入り、対岸までの500mほどを約1時間かけて泳いで渡ります」。

また、神輿みこしを先導する伝馬船てんませんという小型船も見所の一つだと高松さんは説明する。「船首には、ボンデンと呼ばれる色紙の束を手に舞う踊り子、船尾には、長さ1m程のかいを持ち舞う二名の踊り子がいて、“ホーランエー” *****という掛け声とともに、祭りを大変盛り上げます。この踊り子と掛け声には、神様を乗せた神輿みこしを華やかに先導し、また16名の漕ぎ手を鼓舞する役割があるとされています」。


神輿みこしを先導する伝馬船てんません。16名の漕ぎ手たちと踊り子が乗船している。
Photo: 粭島市民センター

近年、島の人口が減少しているのが悩みの種だというが、将来、神輿みこしの担ぎ手や伝馬船てんませんの漕ぎ手を担うであろうこどもたちによる、こども神輿みこしも本神輿みこしの後に見ることができる。


船首で祭りを盛り上げる踊り子。
Photo: 粭島市民センター

高松さんは、観光で訪れた際の祭りの楽しみかたを最後に教えてくれた。「島の人々は、祭りの当日は家から祭り装束を着て集まります。観光でいらした際には、一緒に記念撮影するのもよい思い出になるでしょう。島民も祭りを続ける励みになりますし、そうしたふれあいを楽しみにしています。島で代々大切に受け継がれてきた貴船きふねの祭り。大切な文化なので、次世代へつなぐことが島の切なる願いです」


粭島すくもじまの特産品のフグ。島の漁師たちが考案した延縄はえなわりょうは、フグを傷付けずに漁獲することができる。

* 祭礼の時に、御神体を安置してかつぐ輿こし。普段は神社に鎮座している神霊が御旅所などへ渡御とぎょするに当たって一時的に鎮まるとされる輿こし
** 釣り針の付いた多数の縄を一本の長い縄に取り付け、一定の水深に仕掛ける漁法。フグには鋭い歯があり、ロープを噛み切ってしまうため、粭島すくもじまの漁師らは、鋼線を使った延縄はえなわりょうを考案。フグを傷めることなく新鮮なまま収穫できる漁法としても広まった。
*** 貴船きふね神社は万物の命の源である水の神を祀っている。全国二千社を数える。
**** 重いものを動かすときに出る、意味のない掛け声のようなもの。
***** 船を漕ぐかいの調子を合わせるための掛け声。豊漁祈願の行事であることから、「宝来栄ほうらいえ」というめでたい言葉が由来という説もある。


BY TANAKA Nozomi
Photo: Tokuyama Plant, Nippon Seiro Co., Ltd.; Sukumojima City Center; PIXTA 

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