VOL.193 JUNE 2024
SUMMER FUN IN JAPAN: SEASIDE FESTIVALS AND EVENTS
北の港町で開かれる盛大な夏まつり
日本列島最北端にある北海道の南西部に位置する室蘭市。この街の夏を彩る一大イベントが「むろらん港まつり」だ。毎年7月末、三日間にわたり盛大に開催される。
室蘭市は、製鉄所、製鋼所とともに発展してきた北海道を代表する、重工業が発達した都市の一つだ。また、1872年に開かれた同市の室蘭港は古くから天然の良港として知られ、現在でも国際海上貨物輸送網の拠点となる港湾「国際拠点港湾*」と位置付けられ、物流の要となっている。室蘭港に面する入江臨海公園周辺を会場として開催される、今年で78回となる「むろらん港まつり」について、室蘭市役所で観光PRを担当する佐藤瑞貴さんに話を聴いた。
「第1回目のお祭りは1947年に遡ります。先の大戦の終結(1945年)で沈滞した港町のムードを盛り上げようと、市民が主となって1週間にわたってマラソン大会、仮装行列、船員対抗野球大会など、多彩な行事が開催されました。その後、紆余曲折と市民の尽力を経て、現在の「むろらん港まつり」の形式となりました。オープニングとして室蘭港に総数約2200発の花火が盛大にあがる花火大会、電飾をつけた神輿**が大通りを練り歩く“室蘭ねりこみ”、“総参加市民踊り”などが行われます。例年、7月末の週末3日間に開催され、昨年(2023年)は約10万人以上の人出になりました」。
室蘭港に面した入江臨海公園とその横の広場がお祭りのメイン会場だ。初日の花火大会の観覧場所でもあり、広場では食べ物の屋台が出店し、ステージでは踊りや歌などの出し物で賑わう。その年によって、室蘭港に寄港した大型客船を眺めながら、港の雰囲気の中、祭りを楽しむことができる。そのほか、市民参加型の“総参加市民踊り”は、「室蘭ばやし」と「北海盆唄」の曲に合わせて、約600人もの市民が参加し、商店街を大群舞するパレードだ。また、祭りのフィナーレは、市内外から約15の団体が集まり、独自の群舞を披露する「よさこいソーランin室蘭」は港のステージで行われ、祭が締めくくられる。
「北海道の民謡であるソーラン節***を各チームが独自にアレンジした曲に合わせて踊ります。色とりどりの衣装をまとい、鳴子****を手にした踊り手が息の合ったダンスを披露します。演出を引き立てる大きな旗や太鼓などの道具もぜひ見て欲しいですね。最後に参加者全員で大群舞となるのですが、華やかで見応えがあります」と、佐藤さんは祭りの見どころを語った。
* 港は国経済活動などから見た総合力と、使用目的で分類されている。室蘭港は特に貿易の面で重要度が高く、国の経済活動に大きな影響をもつ港「国際拠点港湾」に分類されている。
** 神様が乗るための神社を模した乗り物。それを担ぎ、祭りの際に練り歩く。担いだ時には掛け声を掛けながら神輿を揺すりながら移動する。
*** 北海道の民謡。ニシンの漁場での仕事歌。
**** 持ち手をつけた板に木片をつけて振りながら音を出す。打楽器。
By TANAKA Nozomi
Photo: Muroran Tourist Association