VOL.195 AUGUST 2024
EXPLORE THE UNIQUE CHARM OF MANGA IN JAPAN [日本の技術]地球誕生と生命の起源を探るーはやぶさ2の小惑星探査技術ー

小惑星Ryuguリュウグウに到着した「はやぶさ2」
©︎ Akihiro Ikeshita

2020年12月、52億4千万kmもの長旅を経て、小惑星Ryuguリュウグウから、石と砂のサンプルを持ち帰ることに成功したJAXAの小惑星探査機「はやぶさ2」。火星と地球の間にある小惑星Ryuguのサンプルは、太陽系の成り立ちや地球誕生の謎、生命の起源を解き明かす重要な手掛かりとして期待されている。

「はやぶさ2」は、2010年6月に世界で初めて小惑星Itokawaイトカワ*の表面から、その一部をなす微粒子のサンプルを持ち帰ることに成功した無人探査機「はやぶさ」に、大幅に改良を加えた後継機だ。小惑星探査技術をより精緻なものにするために、超高精度のピンポイント着陸を実現する誘導制御技術,人工クレーターの形成実験のための衝突装置,日本の深宇宙**機としては初めてとなるKa***帯高速通信技術,4台の地表探査ロボットの搭載など,様々な試みに挑戦した。現在発見されているだけで130万個におよぶ小惑星は、望遠鏡観測でわかる色味から推察される主成分によって、さまざまな種類があるが、Ryuguは主成分が炭素質(Carbon)のC型で、太陽系形成期の始原的な特徴を持つと推察されていた。

2014年12月に地球を出発し、約3年半かけて2018年6月にRyuguに到着した「はやぶさ2」は、着陸して組成物質を採取する「タッチダウン」の準備に取り掛かった。当初の計画では100m四方の平地を探してタッチダウンを行う予定であった。だが、実際のRyugu上には十分な広さの平地は存在せず、やっと見つかった平地は直径6mの円形という想定よりもはるかに狭いスペースしかなかった。そこで、着陸予定地に先に目印を落とし、搭載カメラによって位置を精密に観測、分析しながら、タッチダウンに成功した。誤差わずか1mという精度であった。続く二回目のタッチダウンでは、「はやぶさ2」から分離させた「衝突装置」をRyuguの地表に高速で衝突させて人工クレーターを形成し、露出した地下物質を採取することにも成功した。


高度70mから撮影した小惑星Ryugu(写真中央右寄りは「はやぶさ2」の影)
Photo: JAXA

採取した地下物質を含む石や砂などのサンプル入りカプセルは、「はやぶさ2」からオーストラリア南部のウーメラ砂漠へ投下され、無事に回収。その量は当初計画を大きく上回る5.4gもあった。サンプルの分析・研究は、現在も継続中だが、すでに水や数十種類のアミノ酸の存在が確認されたという。有機物であるアミノ酸は生命を形づくるもととなる物質であり、太陽系始原期の生命誕生の謎を解き明かす大きな手がかりとなると考えられる。


はやぶさ2のサンプルキャッチャー。容器の内径は約48mm。
Photo: JAXA

「はやぶさ2」が小惑星Ryuguから持ち帰った石や砂などのサンプル。大きなものでは10mmを超える。シャーレの直径は60mmでグリッドの間隔は5mm。
Photo: JAXA

今回のミッションは、太陽系探査技術の向上等に寄与したとして、2024年度文部科学大臣表彰科学技術賞(開発部門)を受賞した。「はやぶさ2」は現在、今回のミッションの成果をもとに、新たな小惑星探査へと挑戦中だ。小惑星は地球に落ちてくる隕石の母体と考えられるため、探査機を小惑星の周りで正確に航行させる技術の確立や、近くからの観測データを得ることは、将来起こり得る隕石飛来への対策「プラネタリーディフェンス」にも役立つと期待されている。


* 地球に近接する軌道を持つS型(主成分がケイ素質)小惑星。
** 宇宙空間で地球からの距離が非常に遠いところ。 一般的には、地球からの距離が200万キロメートル以上である宇宙空間。
*** 人工衛星との通信に使用される高周波帯で、大容量データの高速通信が可能。


By FUKUDA Mitsuhiro
Photo: JAXA, Akihiro Ikeshita

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