VOL.195 AUGUST 2024
EXPLORE THE UNIQUE CHARM OF MANGA IN JAPAN 世界最大規模のマンガ同人誌の祭典「コミックマーケット」

2024年夏に開催されたコミックマーケットの様子
Photo: (左) ISHIZAWA Yoji (右)コミックマーケット準備会

1975年に始まった世界最大規模の同人誌即売会「コミックマーケット」通称「コミケ」。アマチュア各人の自由な発想と表現を楽しむ同人誌マンガの世界が堪能できるビッグイベントを紹介する。

日本のマンガブームを草の根的に支えてきた同人誌*。そのムーブメントを語る上で欠かせないのが、コミックマーケット(以下「コミケ」)と呼ばれる自費出版物(同人誌)の展示即売会だ。

コミケは、年に夏と冬の2回開催され、8月半ばと12月末開催が定番だ。直近の104回目の「コミックマーケット104」は、今年(2024年)8月11日と12日に、東京ビックサイトで開催され、2日間で延べ約26万人の来場があり、同人誌を出展、頒布するサークル数は、約2万4千に及んだ。1975年12月の初回開催から徐々に規模が拡大の一途をたどり、コロナ流行前の「コミックマーケット97」(2019年12月28日から31日)は、4日間で入場者数のべ約75万人、参加サークル数約3万2千と過去最高を記録し、さらに出版社やゲーム会社などの企業も数多く出展、マンガ同人誌の販売イベントとしては世界最大級の規模となった。

主催するコミックマーケット準備会の市川いちかわ孝一こういち共同代表は、「日本は、以前から高い印刷技術を持つ印刷所が街中に多くあり、一般のかたが自費での出版を頼みやすい環境にありました。マンガ人気が高まった1970年代は全国各地の大学等のマンガ研究会でもきちんと印刷された同人誌が発行されていました」と振り返る。今日のようにSNSもなく、マンガ愛好家同士が雑誌の読者ページくらいしか交流できなかった時代。同好の士が一堂に会する場を作るという試みとして、第一回目のコミケが1975年12月に開催された。

「都内のホールの一室を借りて即売会を行ったところ、全国から700人が集まりました」


まだまだ規模が小さかった初期のコミックマーケットの様子
Photo: コミックマーケット準備会

やがて80年代に入るとアニメブームが加熱。「キャプテンつばさ」**など女性ファンを獲得する作品の二次創作***が数多く生まれ、コミケ人気をさらに後押しした。準備会広報の里見さとみ直紀なおきさんによると、好きな作品の登場人物になりきるコスプレイヤー****が会場で増えるようになったのもこの頃だという。

「90年代には参加者も毎回のべ20万人を超え、そして、ついに40万人を超えました。それに合わせて開催会場もより大きな所が必要となり、現在は有明の東京ビックサイト(東京都江東区)で開催しています。コスプレイヤーのための膨大な数の更衣室の用意も必要になっていきました。」


1990年代の東京国際見本市会場でのコスプレイヤー同士よる花いちもんめ*****
Photo: コミックマーケット準備会

コロナ流行前の2019年には入場者数がのべ70万人を数え、参加サークル数も3万を超えた。参加コスプレイヤー数ものべ2万人から3万人という日本のみならず、世界でも最大規模のイベントとなったコミケ。しかしながら、運営は立ち上げ当初と変わらず、今もボランティアによって運営されているという。このことは驚くと同時に賞賛に値する。

「運営を行うのはコミックマーケット準備会ですが、約3,000人います。それでも、前日の設営や終了後の撤収には一般のかたやサークルの有志のかたも、無償で一緒に手伝ってくれています」

前日の設営の様子。数多くのボランティアが参加し、朝から作業する。
Photo: コミックマーケット準備会

「みんなにとって大切な場所だからこそ半世紀近く続いてきたし、今後も続けていきたい。また平野ひらの耕太こうた******さんやよしながふみ*******さんなど、コミケを通じて人気が出て、プロの漫画家として活躍されているかたが生まれたことは、本当に誇らしく嬉しいことです」


参加サークルのブースの様子。
Photo: ISHIZAWA Yoji 撮影協力: ありま秀丞、光月あず

1回の開催で5万種類以上の同人誌がそろい、「好みの作品が必ず見つかるのが魅力」と語る市川さん。また里見さんによると近年は海外からの参加も多いそう。

「海外からの参加者の問合せが非常に多いため、これに対応する国際部という専門部署を開設しています。直近のイベントでは少なくとも75か国から参加があり、こちらからの書類の発送が可能な住所が国内にあるかたに限り、サークルとしての参加も可能です。母国語ではない日本語で本を作られるかたも多いですし、韓国語、中国語の同人誌を頒布するかたもいらっしゃいます。以前は観光的な気分で参加されるかたも見受けられましたが、最近は目当ての作家さんのサークルなどを、事前に熱心に研究されてからいらっしゃるかたも多いです。また、アフリカや南米などからいらっしゃるかたもいて、日本マンガの国際的な人気を実感します。とにかく人が多く、想像している以上に並んで待つことが多いイベントです。暑い時期と寒い時期に開催されますので、暑さや寒さ対策は万全にして、安全に楽しく参加してほしいと思います」


* 趣味趣向が同じ仲間が集まって自費で製作をする冊子のこと。日本でのルーツは明治時代(1868年から1912年)にさかのぼるとも言われており、当時の文学作家が仲間内で冊子を作り、楽しんでいたという記録がある。
** 高橋たかはし陽一よういちによる日本のサッカー漫画。及びそれを原作にした派生作品。
*** 既存の作品を元にして新しい作品を創作する表現行為を指す。そこで先行するマンガ、アニメ、ゲームなどの作品が、個々の二次創作作家に固有の表現様式によって翻案され、同人誌やイラストを始めとする様々な形態で流通するもの。
**** 漫画やアニメ、ゲームなどの登場人物やキャラクターに扮する行為をコスチュームプレイの略で「コスプレ」と呼び。コスプレを行う人をコスプレイヤー 、レイヤーなどと呼ぶ。
***** 古来から日本に伝わる伝統的な遊びの一つ。2組に分かれて、歌を歌いながら手をつないで歩き、メンバーのやりとりをする。1990年代にコスプレイヤーの間で花いちもんめで交流することが流行していた。
****** ひらの こうた。アクション、ギャグ作品を主に手がけるマンガ家。代表作に「HELLSING」「ドリフターズ」など。
******* 日本の女性マンガ家。代表作に「大奥」「きのう何食べた?」など。


By MOROHASHI Kumiko
Photo: Comic Market Preparatory Committee; ISHIZAWA Yoji

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