VOL.195 AUGUST 2024
EXPLORE THE UNIQUE CHARM OF MANGA IN JAPAN 見る、読む、描くミュージアム「北九州市漫画ミュージアム」


松本まつもと零士れいじ*の代表作の一つ「宇宙海賊キャプテンハーロック」の等身大フィギュアがミュージアムの入り口で出迎える。
Photo: 北九州市漫画ミュージアム

さまざまな漫画本を楽しめるコーナー。
Photo: 北九州市漫画ミュージアム

日本列島の南西部に位置する九州の玄関口、北九州市にあるマンガ専門のミュージアム「北九州市漫画ミュージアム」。人気のマンガやアニメの展覧会を開催し、約7万冊のマンガ単行本が読み放題という、マンガファンにとっては桃源郷のような場所だ。常設の展示内容は英語など多言語音声ガイドで聴くこともでき、海外からの観光客にも人気という。ミュージアムの担当者にその特徴を聴いた。

北九州市(福岡県)は、九州では福岡市と並ぶ大都会だ(2024年7月現在で人口約91万人**)。JR東京駅から新幹線で市の中心部にある小倉こくら駅まで約4時間40分ほど。この小倉駅のほど近くにマンガ専門のミュージアム「北九州市漫画ミュージアム」がある。北九州市になぜ、マンガ専門のミュージアムができたのか。「北九州市漫画ミュージアム」の広報を担当する平野ひらの 優子ゆうこさんはその背景をこう説明する。

「北九州市にある門司もじこう***が国際貿易港として発展し、当市が西日本の経済の中心となった1900年代以降に新聞社や広告会社の本社が北九州にできました。当時の新聞雑誌、広告の挿絵など図版は手書きのため、絵を描く仕事が北九州には豊富にあったという時代背景があります。また第二次世界大戦後の北九州は、貸本屋や映画館の数が全国でも多かった地域で、人々がマンガや映画といったビジュアルアートへの関心が高く、松本まつもと零士れいじ*、北条ほうじょう つかさ****を始めとして、多くのマンガ家たちを輩出してきたこと。また、1966年から現在まで続くマンガの同人サークルがあるほど、市民にマンガ文化が根付いている土地柄ともいえます。そうした背景がミュージアム設立へとつながりました」。

このマンガミュージアムは「見る、読む、描く」をテーマに掲げ、人気のマンガやアニメの展覧会を開催し、約7万冊のマンガ単行本が読み放題だ。また、プロの道具を使ってマンガの作画を体験するイベントなど、幅広く楽しめる企画を開催している。


漫画タイムトンネルという展示コーナーでは、1945年から2012年まで日本のマンガと社会の歴史を紹介している。
Photo: 北九州市漫画ミュージアム

来館者数は年間平均約10万人で、そのうち2023年度は海外から約4,000人の観光客が訪れた。「海外で放映されたアニメーションの原作マンガが見たいとよく聞かれます。韓国、イタリアなどでは松本零士先生原作の「銀河鉄道999」や「宇宙海賊キャプテンハーロック」が放映されていたため、常設展示を見て感動している姿が見られます」と平野さん。来館者自身のスマートフォンを用いて、常設展示内容は多言語音声ガイド(英語・中国語・韓国語・フランス語)で聴くことができ、多くのかたに利用されているそうだ。

また、海外観光客から人気があるのは、「漫画のコマ」というフォトスポットだ(写真参照)。日本のマンガのコマには、登場人物の動きや心情を表すために、背景の代わりに効果線と言われる線を入れたり、物事の様子や人の心の動きを表す言葉(オノマトペ*****)を入れたりして、臨場感を演出するのが大きな特徴だ。日本ならではの効果線やオノマトペ入りのコマをバックに記念撮影もでき、多くの観光客が足を止める展示となっている。「最近では、海外からの修学旅行や大学の研修で利用されるかたも増えています。マンガの模写やデジタル作画、四コマ漫画の作画体験、漫画家アシスタント******体験、背景の描き方や立体感を出す影のつけ方など、初心者向けから一歩進んだマンガの描き方まで直接指導してもらえるメニューの予約が増えています」と平野さんは話す。日本のマンガが好きなかたは、来日の際、この北九州市の専門ミュージアムへぜひ足を運んでみて欲しい。

常設展示「漫画のコマ」の様子。(左)「ドドド」という、大きな物あるいは大量の物が勢いよく進行している様子などを形容するオノマトペ(擬音語)が表現されているコマの背景。(右)「キラキラ」という光り輝いている様子を表しているオノマトペ(擬態語)が表現されているコマの背景。
Photo: 北九州市漫画ミュージアム


* 1938年生まれで2023年没。1970年代に多くの作品がアニメ化され、世界中で愛された。代表作「銀河鉄道999」「宇宙海賊キャプテンハーロック」など。少年時代を北九州市で過ごした。
** 北九州市役所による推計人口(2024年7月1日現在)
*** 1889年に国の特別輸出港に指定されてから石炭の貿易が始まり、1916年には外国貿易の出入港船舶数が全国一だった。異国情緒に溢れた建物も多くたてられ、現在は歴史的建造物を生かした観光地となっている。
**** 1958年生まれ。1980年代に「キャッツ♥アイ」や「シティーハンター」が大ヒットし、熱狂的な人気を博す。いずれもアニメ化や実写化されており、海外のファンも多い。北九州市出身。
***** 擬音語と擬態語の総称。日本語では約4,500語あり世界的に見てオノマトペが多い言語。マンガではイラストでの視覚表現に、オノマトペによる聴覚表現を加え臨場感を演出する効果がある。
****** 日本のマンガ制作では、作業を分担することが多く、メインのキャラクターを漫画家が仕上げ、背景や吹き出しなどはアシスタントが作業することが多い。


By TANAKA Nozomi
Photo: Kitakyushu Manga Museum

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