VOL.195 AUGUST 2024
EXPLORE THE UNIQUE CHARM OF MANGA IN JAPAN 日本初の「マンガ原画」をテーマとした横手市増田まんが美術館


現在の横手市増田まんが美術館。2019年にリニューアルオープンした。
Photo: ISHIZAWA Yoji

展示の一例。キャビネットに収納されたマンガの原画を上から順に引き出して見ると、ちょうど1話分のストーリーが展開する工夫された展示。
Photo: ISHIZAWA Yoji

秋田県にある横手市増田まんが美術館は、常時100名近い漫画家の「マンガ原画」を展示しており、間近に鑑賞できる。「マンガ原画」をテーマとした日本初の美術館である横手市増田まんが美術館を紹介する。

日本の東北地方で日本海側にある秋田県。その東南に「かまくら」*で有名な横手市が位置する。横手市は、2005年に増田ますだまちも含む周辺7町村と合併した。横手市増田まんが美術館は、その合併前に増田町の町制施行100 周年記念事業の一環として1995年に開館した。同館広報担当の大日向おおひなた玲奈れいなさんはその設立の経緯を振り返る。

「当初、増田町出身の漫画家・矢口やぐち 高雄たかおさん**の功績を称える「矢口高雄記念館」を建設する構想もあったそうですが、矢口さんから「自身が影響を受けたマンガは芸術そのもの。一流の漫画家の原画を見せることでそれを伝えたい」という提案があり、その提案がきっかけで、現在の「マンガ原画」をテーマとした美術館を建設することになりました」

以降、マンガ原画を収集、保存、展示するこの美術館の取組は、日本でも先駆的として注目を浴びることとなった。その後、マンガ原画の収蔵と保存機能を更に強化して2019年にリニューアルオープン。「マンガの原画は、もともと雑誌や単行本等の印刷のための版下はんした***として描かれたもので、実はそれ自体に価値付けはされてきませんでしたが、心血を注いで描いた唯一無二の作品として、漫画家が各自それぞれに大切に保管していました。昨今、「マンガ」は世界中で高く評価され、価値は確実に高まっていますが、国内において原画の価値付けが定まっていないため、廃棄されたり、海外を含めて散逸したり、中には無くなったりと原画を取り巻く状況は危機にさらされています」


横手市増田まんが美術館の内部。常設展は無料であり、気軽に鑑賞することができる。
Photo: ISHIZAWA Yoji

日本のマンガ文化を生み出す、言わばもととなった原画が消失するということは、言い換えれば日本の文化が消失することを意味する、と危機を訴える大日向さん。

「当館では1995 年の開館当初から原画の収集、保存に力を入れており、現在は48万点以上の原画を収蔵し、今もなお多数の収蔵要望が寄せられています。そこで文化庁からの委託を受け、日本で唯一のマンガ原画の収集や保存の相談窓口となる「マンガ原画アーカイブセンター」を設けました。原画保存に関する相談のほか、他の類似施設とも連携して原画の一時的な保存事業にも取り組んでいます」


原画だけが持つ細やかな情報の記録やデジタルデータ化などアーカイブ作業も見学できる。
Photo: ISHIZAWA Yoji

約25,000冊のマンガ本を自由に読むことができるライブラリー。話題の作品や、外国作家のマンガ原画展示なども行う。Photo: ISHIZAWA Yoji

大日向さんは、「現在はまだ海外からの来館者はそれほど多くはありませんが、特定の作家や作品のファンの方々が訪れ、原画の素晴らしさに感激している様子が見受けられます」と言う。

「「原画」はカラー、モノクロに限らず、普段から目にしている本などの印刷物とは比べ物にならない程の迫力と美しさを持っています。原画だからこそ、作品に込められた作家の創造性や熱意が伝わってくることを海外の方々にも感じていただけると思います。マンガの好きなかたが日本に来られた際は、ぜひとも当館で原画を観賞いただき、独特のコマ割りや、感情や情景がリアルに表現されている繊細さ、美しさをぜひ間近で鑑賞していただけければと思います」

マンガのコマ割りをイメージした展示のマンガ文化展示室。スマートフォンを活用した多言語音声ガイド(日本語、英語、中国語)のサービスも一部で取り入れている。Photo: ISHIZAWA Yoji


* 毎年2月に行われる横手市に伝わる水神様をまつる行事。かまくらと呼ばれる高さ3メートルほどの雪のドームを市内に60ほどつくり、家内安全・商売繁盛・五穀豊穣などを祈願する。
** 日本の漫画家・エッセイスト。自然の中での生活をテーマにした作品を描き、代表作の「釣りキチ三平」、「幻の怪蛇バチヘビ」で、釣りとツチノコブームを起こした。
*** 印刷の後工程である製版工程に渡すために仕上げられた原稿のこと。


By MOROHASHI Kumiko
Photo: ISHIZAWA Yoji

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