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Highlighting JAPAN

未来の未来を創る

日本の建築家藤本壮介さんは、未来を先取りする建築デザイン、見る者それぞれに未来の想像を掻き立てる建築デザインで、海外にうねりを起こしている。

1971年生まれの藤本壮介さんは海外の企画展で作品が認識され数々の賞を受賞している建築家だ。2000年の青森県立美術館設計コンペで、国内外から応募された393件の作品中第2位(優秀賞)となり注目を集めた。以来、住宅から公共建築まで100を越えるプロジェクトに携わり、2012年の「第13回ベネチア・ビエンナーレ国際建築展」の日本館展示で(伊東豊雄さん(参照)と共に)参加国最高の金獅子賞に輝き、2014年にはウォール・ストリート・ジャーナル紙の「イノベーター・オブ・ザ・イヤー」の建築部門に選出され、2015年には彼の事務所が提案した“sound waves-inspired”がブダペストの「House of Hungarian Music 国際設計競技」で受賞するなど、数々の受賞歴を誇る。

藤本さんの「藤本壮介展 未来の未来」巡回展が、2017年11月、ブラジルのサンパウロのJAPAN HOUSE(参照)からスタートし、日本の魅力を発信するJAPAN HOUSEの3つの拠点(サンパウロ、ロサンゼルス、ロンドン)で、それぞれ約3カ月間開催される。これは、公募巡回企画展に選出されたもので、2015年に東京のTOTOギャラリー・間で開催され好評を博した同名の展覧会を再現するものとなる。

2015年の同展は、藤本さんの「過去の代表作や現在進行中のプロジェクトだけでなく、未来に向けた僕自身の現在進行形の試行錯誤を展示したい」という思いから、創作活動の軌跡と思考のプロセスをたどるものとして企画された。会場には111個の建築模型がランダムに配置され、「模型の森」として来場者を魅了した。

藤本さんは、今回の巡回展でも使われる「未来の未来」というタイトルに込められた思いを次のように語る。

「僕たちの作り続けている個々の建築は、言ってみれば一つの小さな点です。小さな点ですが、その中には未来への思いが詰まっています。小さな点を見た人々が、そこからまた彼らなりの未来を想像し始めます。そうやって小さな点は、無数のインスピレーションの連なりとなって、やがて本物の未来を作り上げていくでしょう」

「建築とは、創造とは、未来の種をまいていくことではないでしょうか。その未来の種が、他の多くの人々の想像力によって芽吹き、育ち、また新しい未来の種となっていきます。そんな創造性の連なりをイメージして『未来の未来』というタイトルを付けました」と説明する。

「House NA」、「Tokyo Apartment」といった住宅から「武蔵野美術大学美術館・図書館」、「Serpentine Gallery Pavilion 2013」といった公共施設まで、藤本さんが手掛けてきた建築は、空のようであり、森のようであり、風のようであり、その土地に見事に溶け込み、不思議な関連性、新しい空間を創出して、来場者に未来を見ている感覚を覚えさせる。


今回の巡回展で、藤本さんは再び多数の建築模型を展示する。その展示は、来場者に、それぞれの近い将来を予感させるだろう。藤本さんは「模型とは、思考の断片であり、未来の予感です」と言う。「完成された建築とは異なり、模型は始まりであり、無数の可能性に満ちています。たくさんの模型を展示することによって、来場者の方々がその模型の中の可能性を発見し、楽しみ、そして未来を想像し始めてくれることを期待しています。そこから無数の未来が生まれ、無数の未来が会話し、そして豊かな未来へとつながっていくはずです」と語る。

藤本さんは「建築は人々のための場所を生み出すものです」と言う。「人々がより自由を実感し、個人と共同体の両方の尊さを感じ、世界の楽しさを感じ、世界の多様性の素晴らしさを感じ、自分が未来を選択し作り上げていくことができるのだという感覚を感じられるような、そんな「場所」を生み出すことが、これからの時代の建築だと考えています」

藤本さん自身にとっての未来は、「素晴らしい建築を作り続けること」であり、同時に未来の未来は、「可能性」や「思考の断片」を提示し続けることである。