音声広報CD「明日への声」トラックナンバー4 vol.99(令和6年(2024年)9月発行)

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(イントロダクション:女性ナレーター)

2011年3月に発生した東日本大震災では、太平洋沿岸を襲った津波によって多くの尊い命が奪われました。これを教訓として、この年の6月に津波対策の推進に関する法律が制定され、毎年11月5日を「津波防災の日」とすることが定められました。また、2015年には国連総会が、津波対策への意識向上を図ることを目的に、同日を「世界津波の日」と制定しています。「津波防災の日」「世界津波の日」をきっかけに、万が一に備えて津波への対策を確認しましょう。

(本文:Q.女性ナレーター/A.男性ナレーター)

Q1:「津波防災の日」は、なぜ11月5日なのですか?

A1:この日は、安政元年(1854年)11月5日に発生した安政南海地震で、現在の和歌山県広川町を津波が襲った際、自らの田んぼで刈り取ったばかりの稲に火を付けて、暗闇の中で逃げ遅れている人たちを高台に避難させ、多くの命を救った濱口梧陵の逸話にちなんだ日です。この逸話をモデルに「稲むらの火」の物語が作られました。

Q2:日本は、これまで幾度となく津波の被害を受けてきたのですね。東日本大震災に加えて、2024年1月に発生した令和6年能登半島地震でも、津波の恐ろしさを実感しました。

A2:津波の力はとても強く、車も家も押し流してしまいます。人間は、ひざの高さの津波でさえ、立っていることはできず、大人でも簡単に押し流されてしまいます。そうした破壊力をもった水の塊が、皆さんが想像する以上のすごいスピードで襲ってくるのです。

Q3:令和6年能登半島地震では、地震発生からわずか数分で津波が到達した地域もあったと聞きました。

A3:津波は水深5,000メートルの沖合では時速800キロメートルとジェット機並みの速さで迫ってきます。海が浅くなるにつれてスピードは落ちますが、陸に上がった後も時速36キロメートルと短距離選手並みのスピードで進むと言われています。

Q4:津波が来るのを見てから逃げ始めても、間に合わない可能性が高いですね。もし地震が発生し、津波が来るかもしれないと思ったら、どうすれば良いですか?

A4:命を守るために一番にとるべき行動は、「素早い避難」です。強い揺れや、弱くても長い揺れを感じたり、地震を感じなくても「大津波警報」や「津波警報」が発令されたりしたら、各自がすぐに全力で高いところへ逃げてください。

Q5:とにかく早く避難を開始することが、何より大事ですね。他に注意しておくことはありますか?

A5:東京大学大学院の片田敏孝特任教授が提唱する「津波避難の三原則」というものがあります。
一つ目は「想定にとらわれるな」。例えば各地域で作成している「ハザードマップ」などに記載されている警戒情報は、「あくまで予想」と考えることです。相手は自然であり、想定を超えることもあるかもしれません。想定にとらわれず油断しないことが重要です。二つ目は「最善を尽くせ」。これは、避難した先が一番安全な場所なのか、より安全な場所に避難できないかを考えて、その時にできる最善を尽くしてほしいということです。そして三つ目は「率先避難者たれ」。通常、私たちは「自分は被害に遭わないだろう」と考えがちですが、この考えを無くし、率先して避難しなければならないということです。

Q6:地震のたびに津波がくるというわけではないですから、なかなかすぐに避難とはならないかもしれません。

A6:人は不測の事態や不都合な状況に直面すると、心の平穏を保とうとして「まだ正常の範囲だ、まだ大丈夫だ」と認識しようとする心理が働きます。これを「正常性バイアス」と言いますが、災害時には、「まだ大丈夫」「今まで問題なかったから大丈夫」という思い込みの元となり、避難が遅れる原因になります。「津波が来るかも」「いや、そんなわけない」という心理になるわけです。

Q7:この正常性バイアスを克服し、命を守る行動をとることが必要ですね。

A7:そうした心理的な働きを克服して行動できるように、防災訓練などに積極的な参加をお願いします。訓練を重ねることで、いざというとき、思い込みにとらわれず身を守ることができるようになります。

Q8:東日本大震災の時の津波でも、海岸近くの学校で、日頃からの避難訓練がしっかりできていたおかげで被害を免れた話を聞いたことがあります。

A8:岩手県釜石市の小中学校ですね。東日本大震災の大津波が東北地方沿岸部に甚大な被害を及ぼした中、児童・生徒の多くが無事に避難することができました。日頃の訓練と、先ほどの「津波避難の三原則」を徹底して身に付けていたことが実を結んだ例です。津波は発生までに若干の猶予時間がありますので、人的被害を少なくすることは十分に可能です。適切な避難行動を発災時にとるために、日頃から、実践的な訓練を重ねることで、一人ひとりがとるべき行動を体に刻み込んでおくことが極めて重要です。

Q9:令和6年能登半島地震でも、日頃からコミュニティの住民が協力し合い地区防災計画づくりをしていた地区では、早期避難によって津波の被害を免れたそうですね。

A9:例えば、石川県珠洲市三崎町寺家下出地区の事例が知られています。金思穎専修大学兼任講師をはじめとする地区防災計画学会の調査によると、当該地区では、東日本大震災の教訓を踏まえて、地区防災計画づくりを行っており、また、日頃から避難路を整備し、継続的に避難訓練を実施していました。令和6年能登半島地震により大津波が襲来した際には、日頃の訓練の経験をいかして、住民たちが声をかけ合い、相互に助け合って、整備していた避難路を利用して、早期に避難を行いました。その結果、住民全員の命が助かりました。

Q10:避難訓練のほかにも、日頃から備えておくことはありますか?

A10:日頃から家族で2つの約束を決めておきましょう。一つは、逃げる場所を決めておくこと。もう一つは自らの命を自ら守ることに全力を尽くすことです。家族は決めた場所に避難していると信じて、まずは自らを守るために全力を尽くす。避難してから家族と落ち合えば良いのです。

Q11:視覚に障害があるかたなど、自らを守るための適切な避難行動をとることが困難なかたは、津波にどのように備えておけば良いでしょうか。

A11:日頃から、支援者が不在の場合の避難方法や連絡手段を、家族や周囲の人と確認しておきましょう。お一人で避難する場合は、近くの人に助けを求めてください。また、災害時に適切な支援を受けられるように、お住まいの自治体の避難行動要支援者に対する支援の枠組みを確認しておきましょう。

(エンディング:女性ナレーター)

今年も11月5日の「津波防災の日」にあわせ、津波防災への意識を高めるとともに、適切な避難行動の定着に向けて、地方公共団体と連携した地震・津波防災訓練が行われる予定です。そこでは、津波に備えることや、災害時の適切な行動などを学ぶことで救える命があることを確認します。津波への備えを確認して、自分の命、自分の家族を守りましょう。内閣府の「津波防災特設サイト」では、津波に関する資料やイベントの情報などを見ることができます。「津波防災特設サイト」で検索してください。

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