音声広報CD「明日への声」トラックナンバー3 vol.97(令和6年(2024年)6月発行)

シェアする

(イントロダクション:女性ナレーター)

パートやアルバイトで働く人の中には「年収が増えると扶養から外れてしまう」などといった理由で、働き過ぎないようにしている人も多いでしょう。このように、社会保険料の負担が増えないように年収を抑えようと意識する金額のボーダーラインが、いわゆる「年収の壁」です。この問題に対応するため、2023年10月から「年収の壁・支援強化パッケージ」が始まりました。

(本文:Q.女性ナレーター/A.男性ナレーター)

Q1:「年収の壁」とは、そもそも何でしょうか?

A1:現行の社会保険制度では、会社員の配偶者などで一定の収入がない人は被扶養者として社会保険料を負担していません。こうした人たちがパートなどで働いてその収入が一定額を超えた場合、社会保険料の負担が発生し、結果として手取り収入が減少してしまいます。このような形で手取り収入が減らないように年収を抑えようと意識する金額のボーダーラインが年収106万円や130万円であり、これがいわゆる「年収の壁」と呼ばれています。例えば、「106万円の壁」の場合、壁の範囲内で働くと、社会保険料が0円だったものが、年収106万円に達すると、一般的なケースでは年額で約16万円の負担が生じます。もちろん社会保険の加入により傷病手当金や出産手当金を受けられるようになったり、将来もらえる年金が増えたりといったメリットがあります。

Q2:「年収の壁」を意識して働く時間を調整すると、結果として働く人たち自身の所得向上を阻むだけでなく、企業の人手不足の原因にもなりそうです。

A2:そのとおりです。そこで、2023年10月から「年収の壁・支援強化パッケージ」が始まりました。パートで働く人が「年収の壁」を意識せずに働ける環境づくりを支援するため、「年収の壁」を超えても手取り収入が減らないようにするための対策を盛り込んだ内容となっています。

Q3:どのような内容でしょうか。早速教えてください。

A3:「年収の壁」は働くかたが加入することになる制度によって2種類あります。「106万円の壁」は、主に従業員101人以上の企業などに勤務しているかたが対象となり、壁を超えた場合、厚生年金保険や健康保険に加入することになります。また、「130万円の壁」は、主に従業員100人以下の企業などに勤務しているかたが対象となり、国民年金や国民健康保険に加入することになります。なお、2024年10月からは、従業員51人以上の企業などに勤務しているかたに厚生年金保険や健康保険の加入対象が拡大されます。それぞれの対策がありますので、順にご紹介します。

Q4:まずは「106万円の壁」対策ですね。

A4:「106万円の壁」の対策として、労働者を雇用する事業主向けに、キャリアアップ助成金の「社会保険適用時処遇改善コース」が新設されました。年収106万円を超えて働くなどして新たに社会保険適用となった労働者の収入を増加させる取組を行った事業主に助成されます。

Q5:その助成金は事業主向けで、労働者個人には支給されないのですね?

A5:そのとおりです。ただし、あくまでも事業主向けの助成金ではありますが、この助成を受けるに当たって、例えば次のような取組を事業主に求めているため、労働者個人の収入にも影響します。
1.手当等支給メニュー:年収106万円を超えて社会保険に加入した労働者に対して、手当の支給などで収入を増やす取組を講じた場合、事業主に、労働者1人当たり3年間で最大50万円の助成金を支給。
2.労働時間延長メニュー:労働時間を延長することにより、パートやアルバイトで働く従業員を新たに社会保険の被保険者とした場合、事業主に、労働者1人当たり6か月で30万円の助成金を支給。
なお、各助成額は事業主が中小企業の場合の金額を示していますので、大企業の場合は各助成額の4分の3の額になります。どの対応をとるかについては、各企業において事業主が労働者と話し合ってニーズを踏まえながら決めていくことになりますので、まずは、お勤めの企業に「年収の壁」に関する対応を検討しているかをご確認ください。

Q6:事業主のかたが検討する場合の留意点について教えてください。

A6:同一の事業所内で、対象労働者ごとの事情に応じて異なるメニューで取り組んでも問題ありません。また、いずれのメニューを選択した場合も、キャリアアップ助成金を受けるためには原則として助成対象コースの取組を始める日の前日までに、管轄労働局に「キャリアアップ計画書」を提出することが必要になりますのでご注意ください。

Q7:「106万円の壁」対策には、事業主と労働者が話し合いなどを行い、ニーズを踏まえて検討することが重要ですね。では、次に「130万円の壁」対策について教えてください。

A7:「130万円の壁」対策として、パートやアルバイトで働く人が繁忙期に労働時間を延ばすなどにより、収入が一時的に上がって年収130万円を超えた場合でも、健保組合などが被扶養者の収入を確認するタイミングで事業主がその旨を証明することで、引き続き扶養に入り続けることが可能となりました。なお、あくまでも「一時的な事情」によるものであることが必要であり、一人の労働者に対して、「一時的な収入増であること」を当該事業主が証明できるのは原則として連続2回までとなります。

Q8:被扶養者の年間収入の要件は、被扶養者が障害を持っている場合も130万円未満となるのでしょうか。

A8:被扶養者のかたが60歳以上の場合や障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害をお持ちの場合、年間収入の要件は130万円未満ではなく、180万円未満とされています。今回の取扱いは、年間収入が180万円未満であるか否かの判定についても適用されます。つまり、障害厚生年金の受給要件に該当する程度の障害をお持ちの被扶養者のかたの収入が一時的に上がって年収180万円を超えた場合でも、事業主がその旨を証明することで、引き続き扶養に入り続けることが可能となります。

Q9:ここまで年収の壁について紹介しましたが、内容が複雑で悩んでしまいます。困ったときの相談窓口はありますか。

A9:年収の壁突破・総合相談窓口があります。フリーダイヤルで0120-030-045、受付時間は平日8時30分から18時15分まで、土日・祝日・12月29日から1月3日まではご利用いただけません。「何から始めていいか分からない」「従業員とどのように話を進めればいいか分からない」といった事業主はもちろん、「どの年収の壁対策が自分に関係があるのか分からない」「社会保険に入るべきかどうか悩んでいる」といった労働者からの悩みや疑問も受け付けています。是非ご相談ください。なお、政府広報オンラインにおいて、年収の壁対策についてより詳しく紹介しています。「政府広報オンライン 年収の壁対策」で検索してみてください。

(エンディング:女性ナレーター)

誰もが希望どおりに働くことができる社会を目指すためにも、「年収の壁」を意識せずに働ける環境づくりはとても重要です。新たにスタートした支援などを踏まえて、事業主と労働者でしっかりと話し合い、お互いが納得した上で取組を進めていきましょう。

リンク・著作権等について
このコンテンツは役に立ちましたか?
このコンテンツは分かりやすかったですか?
このコンテンツで取り上げたテーマについて関心が深まりましたか?

ご意見・ご感想

関連サイト

  • 世論調査別ウインドウで開きます
  • 首相官邸別ウインドウで開きます

外部のウェブサイトに移動しますが、よろしいですか。
よろしければ以下をクリックしてください。

ご注意
  • リンク先のウェブサイトは、内閣府政府広報室のサイトではありません。
  • この告知で掲載しているウェブサイトのURLについては、2023年11月21日時点のものです。
  • ウェブサイトのURLについては廃止や変更されることがあります。最新のURLについては、ご自身でご確認ください。
Top