VOL.196 SEPTEMBER 2024
JAPAN’S ENJOYABLE PUBLIC AQUARIUMS [日本刀の美]太刀 銘 長光(大般若長光)

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備前国で隆盛した刀工の一派「長船派」の基礎を築いた名刀工「長光ながみつ」が手掛けただい般若はんにゃ長光ながみつ(寸法:刃長約74㎝)
Photo: ColBase

国宝「太刀たち めい 長光ながみつだい般若はんにゃ長光ながみつ)」は、13世紀(鎌倉時代*)に備前国びぜんのくに(現在の岡山県東南部)の名刀工として活躍した「長光ながみつ」により制作された。長光は、日本刀の刀工の一派である「長船おさふね」を創始したとされる光忠みつただの子で、この流派を引き継いで隆盛させた人物として知られている。

「この太刀は長光の代表作のひとつで、室町時代にこの太刀が、かんという価値などをあらわす単位にして600貫と、大変高いものとされていたことから、全部で600巻の大般若経に結び付けて「大般若長光」と呼ばれ」**たとされる。「特にこの太刀では丁子ちょうじの木の実のような「丁子刃ちょうじば」と半円の形をした「互の目刃ぐのめば」という刃文が複雑に交じり合っているのが特徴」***だ。当初、足利将軍家****に伝えられ、のちに織田信長*****の所有となり、徳川家康******へ与えられた。その後所有者は変転して、現在は東京国立博物館の所蔵となっている。

刃文

丁子の実

丁子の実(下画像)のような形状の「丁子刃」と半円型の「互の目刃」という刃文が交じり合う。
Photo: ColBase, PIXTA


* 12世紀末(始期は1185年、1192年と諸説あり)から1333年までの期間を指す。 
** *** 国立文化財機構所蔵品統合検索システムより引用。
**** 足利将軍家…14世紀前半から16世紀後半まで約240年、武家政権の最高権力者・征夷大将軍に任じられた家系。
***** 織田信長…1534年生まれ、1582年没とされ、群雄割拠していた戦国時代から天下統一への端緒を開いた武将。
****** 徳川家康…1543年生まれで1616年没。17世紀初頭から19世紀後半半ばまで続いた江戸幕府を開いた初代将軍。

≪引用箇所の用語について≫

  • かん…当時の貨幣の単位のこと。銭1000枚を一塊として、銭の中央に空いた穴に通して1貫と数えるようになった。諸説あり特定はできないが、一説によれば1貫が現在の貨幣価値でおよそ5万円から10万円とされる(室町時代末期)ので、中間の8万円と仮定すると、600貫は4800万円で約5000万円が目安の値となろう。
  • 大般若経…仏教経典。「大般若波羅蜜多はらみった経」の略称。
  • 丁子ちょうじ…西洋では香辛料、東洋では薬用に使用された丁子の実(英名:クローブ)を連ねたように見える模様。
  • 互の目刃ぐのめば…半円形が連なる模様。
  • 刃文…日本刀の制作過程の一つである、高温状態から急激に冷やして鋼を硬くする「焼き入れ」の際に付けられる白い波のような模様。
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