VOL.192 MAY 2024
JAPAN’S HEALING FORESTS (PART 1)
[日本刀の美]太刀 銘安綱(名物童子切安綱)
刀工「安綱」の銘が刻まれた、日本刀の最高傑作の一つ「童子切安鋼」(東京国立博物館所蔵)
Photo: ColBase
国宝「太刀 銘安綱(名物童子切安綱)」(たち めいやすつな めいぶつどうじぎりやすつな)は、酒呑童子(しゅてんどうじ)という鬼を斬った伝説を持つことで名高い名刀だ。伝説の一つによれば、源氏物語を書いた紫式部*が活躍した第66代・一条天皇(在位986年から1011年)の御代、当時の京の都で鬼たちが悪事をなし、人々を苦しめていた。そこで、武将にして貴族となった源頼光**とその一党が追討し、頼光は鬼の首領・酒呑童子をこの太刀をもって退治したとされる。
この太刀は、平安時代(8世紀末から12世紀末)の中期あるいは後期(諸説ある)に活躍したとされる名刀工「安綱」の作。日本刀の最高傑作とされる5振(ふり)のうちの1振。刃長80cm、反り2.7cmで、美しい曲線を描く刀身と、複雑な変化をみせる小乱れの刃文が特徴だ。
これまで豊臣秀吉、江戸幕府初代将軍の徳川家康や2代将軍の徳川秀忠ら名だたる武将が所持。現在は東京国立博物館が所蔵している。
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日本刀「童子切安鋼」は、古くから日本の絵巻物などに描かれてきた。(絵巻物は、日本の絵画形式の一つ。紙を横につないで長くし、物語などを連続して描いた。)
Photo: ColBaseを加工して作成
* 970年代生まれで1010年代没と推定される。
** 948年生まれ、1021年没とされる。摂政となった藤原道長(966年から1027年または1028年)の側近とされる。
日本刀の刀身に表れる模様。流派や刀工によって様々だ。