VOL.192 MAY 2024
JAPAN’S HEALING FORESTS (PART 1) 清流と原生林の森が織りなす「菊池渓谷」


夏の盛りでも涼しい菊池渓谷の渓流 Photo: 菊池市役所


大小さまざまな瀬を観察することができる Photo: 菊池市役所

ケヤキ、カエデ、カシなど天然の広葉樹林で覆われた森と、阿蘇外輪山(あそがいりんざん)の伏流水*が、変化に富んだ景色を作り出している菊池渓谷。その魅力や楽しみかたについて取材した。

日本列島の南西部に位置する九州。ほぼ中央に「阿蘇山(あそさん)」とよばれる火山群がある。世界最大級の大きさを誇るカルデラ(東西約17km、南北約25km)**の中に中央火口丘群(主に阿蘇五岳(あそごがく)など)があり、それらを総称して"阿蘇山"と呼ぶ。そして、カルデラを取り囲んでいるのが、周囲約130㎞の阿蘇外輪山と呼ばれる山々だ。

その阿蘇外輪山の西北部に「菊池渓谷」とよばれる約1,192ヘクタールもの森が広がっている。「森林浴の森 日本100選」、「名水百選」や「日本の滝100選」などにも選出されている名所だ。熊本県菊池市役所の前島 赳(まえじま たけし)さんに菊池渓谷の魅力を教えてもらった。

「菊池渓谷には、菊池川の源流や広葉樹などの原生林があり、阿蘇外輪山から湧き出した伏流水が、大小さまざまな瀬や渕、滝をつくり出しているのが特徴です。四季の移ろいと豊かな自然が生み出すさまざまな景観は”渓谷美の極致”と言われ、見る人の心を癒してくれるまさに自然の別天地と言えます」

春から初夏にかけては初々しい若葉、秋は紅葉といった四季折々の森の姿を楽しむことができる。また、日本の蒸し暑い夏の盛りの時期でも、涼しさを感じることができる。

「渓流の水温は夏でも13℃と冷たく、川を通る風や木陰が生む、ひんやりと澄んだ空気に包みこまれます。暑い季節は避暑地として、癒しを求めて訪れる人がたくさんいらっしゃいます」
森林を楽しむには、渓谷の手前にある菊池渓谷ビジターセンターから往復1kmを、約40分かけて巡る「癒しコース」がおすすめだ。

「コバルトブルーの清流を眺めながらゆっくりと森林を散策するコースです。一番の見所である「黎明(れいめい)の滝」は、渓谷内でも最も人気のある撮影スポット。特に初夏は水量が多く、大きな岩から水が流れ落ちる景観が楽しめます」

 


撮影スポットとしても人気の高い「黎明(れいめい)の滝」 Photo: 菊池市役所


菊池渓谷にある竜ヶ渕(りゅうがぶち)に咲く美しいキツネノカミソリ Photo: 菊池市役所

ほかにも水が激しく落ちる圧巻の様相を楽しめる「天狗滝」、「竜ヶ渕(りゅうがぶち)」など変化に富む渓流の美を楽しめる。7月下旬には、竜ヶ渕周辺で咲く美しいキツネノカミソリの花を見ようと多くの人々が訪れるという。また海外から訪れるかたには、さらに足を伸ばして原生林の奥へと進む「満喫コース」も人気だという。


「満喫コース」で見られる「四十三万滝」 Photo: 菊池市役所

「この満喫コースは、約1時間20分程度かけて、さらに森の奥へと進むコースです。見るものを圧倒する大迫力の「四十三万(よんじゅうさんまん)滝」や「天狗滝」など、森の中でしぶきをあげる、自然にはぐくまれた清らかな水の動きは見飽きることがありません。また、コースの折り返し地点にある「広河原」の休憩所で、木のベンチに座りながら一休みするのがおススメです。目を閉じて川の音を聴いているだけで気分がスッキリします。さらには、渓谷入り口にあるビジターセンターでは、名物のヤマメの塩焼きや軽食も販売されており、散策の後、渓谷を堪能しながら食事を楽しまれる方も多いです。機会があれば、ぜひゆっくりと滞在していただけたらと思います」


* 水がしみ込みやすい土地で、地中にもぐりこんで流れる水のこと。
** 火山で見られる1km以上の直径の窪地で、その多くは地面の陥没により形成される。窪地の底をカルデラ床、周辺の高まりを外輪山と呼ぶ。
*** 阿蘇山の中核をなす5つの山の総称。東から根子(ねこ)岳(1,433メートル)・高岳(1,592メートル)・中岳(1,506メートル)・烏帽子(えぼし)岳(1,337メートル)・杵島(きしま)岳(1,326メートル)が並ぶ。


By Morohashi Kumiko

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