VOL.192 MAY 2024
JAPAN’S HEALING FORESTS (PART 1) 阿寒摩周国立公園の森林散策を楽しむ


千島火山帯の活動が生みだした湖と豊かな自然が織り成す阿寒摩周国立公園の中にある「オンネトー湖」
Photo: 阿寒摩周国立公園

つつじヶ原探勝路沿いの森に広がるイソツツジの花
Photo: 阿寒摩周国立公園

日本列島最北に位置する北海道の東部に阿寒摩周国立公園(あかんましゅうこくりつこうえん)がある。91,413ヘクタールもの広大なその公園の大部分は、亜寒帯性の針葉樹林を中心とする天然林に被われ、原始的な姿をとどめている。この公園の管理事務所のかたに散策が楽しめるスポットを紹介してもらった。

阿寒摩周国立公園の見どころ

阿寒摩周国立公園が位置する北海道の東側は、北はオホーツク海、南は太平洋に挟まれ、遠く離れたカムチャツカ半島から千島列島に続く火山帯が中央を横断し、火山と森と湖が織りなす壮大な景観が特徴だ。管理事務所  国立公園利用企画官の末廣 圭司郎(すえひろ けいしろう)さんは説明する。

「この国立公園の基盤は、千島火山帯の活動によってできた三つのカルデラ地形*です。火山と湖とのペアが、狭い範囲でいくつも近接している地形は、全国的にも貴重なものです。公園は広大ですが、二つの特色あるエリアで構成されています。一つは、悠然とそびえる雄阿寒(おあかん)岳と雌阿寒(めあかん)岳、その周辺に広がる阿寒湖やオンネトーなどの湖沼を中心に、原始的な深い森に囲まれている〝阿寒地域″。もう一つは、日本最大のカルデラ・屈斜路(くっしゃろ)カルデラの西側半分を占める屈斜路湖や、世界有数の透明度を誇る摩周湖など、水の潤いや循環を感じる〝摩周地域″です。」

摩周地域と阿寒地域、それぞれの森林の楽しみかたを教えていただいた。

「摩周地域の川湯温泉街にある川湯ビジターセンターからアトサヌプリ(別名:硫黄(いおう)山)まで続くつつじヶ原探勝路は、道も平坦で1時間ほどで歩けます。そこは、硫黄山から噴出する火山ガスや酸性土壌などに耐えられる高山性の植物たちが特異な生態系を展開している貴重な場所で、「針葉樹林帯」を始め、「広葉樹林帯」や「イソツツジ**帯」もあり、約2.5kmという短い距離の中で、特殊な環境下でたくましく生きる植物の様子を観察しながら森の散策ができます。特に初夏(6月頃)の森に真っ白なイソツツジの花が100ヘクタールも広がる光景は圧巻です」


川湯ビジターセンターのすぐ裏に広がるアカエゾマツ***の森では森林浴が楽しめる Photo: 阿寒摩周国立公園

また、阿寒地域では、90年以上持続可能な森の保全に取り組み続けている前田一歩園財団****が管理してきた森を探索するガイドツアーがおすすめだ。阿寒湖管理官事務所の日比野 晃裕(ひびの あきひろ)さんによれば、「阿寒地域にある前田一歩園財団が管理する森林は、1900年始めには牧場造成や木材生産のために多くの木が伐採されました。しかしながら、初代園主である前田正名氏の「この山は、伐(き)る山から観る山にすべきである」という想いから、「自然の力に逆らわず、その力を最大限に生かす」という方針をもとに、原生の姿を保ち、後世まで残せる森として保全の取組が長く進められてきました。その中の「光の森」や「湖北の森」は、「一歩園森の案内人」という資格をもったガイドの同行で入林ができます。樹齢800年ともいわれるカツラの巨木や温泉の湧く手塚沼(てづかぬま)など見所が豊富ですので、ぜひ阿寒の人々が守る原始の森での森林浴を体験いただきたいです」


天然記念物に指定されている「クマゲラ」も生息する

現在、阿寒摩周国立公園では「国立公園満喫プロジェクト」が進行中だ。

「海外のかたにも訪れていただきやすい魅力的な公園にしようと、宿泊施設や展望施設のリニューアルなど様々な計画が進行中です。ぜひ、多くの人に阿寒摩周ならではの雄大な森林に足を運んでいただけたら嬉しいです」


* 火山の活動によってできた窪地のこと。
** 北海道の固有種で、草丈30から70センチくらいの常緑小低木。高山の礫地で見ることもあれば、火山灰地や湿原に生えていることもある。
*** 北海道及び本州の早池峰山(はやちねさん)に生息し、エゾマツとともに「北海道の木」に指定されている。
**** 1900年初め、北海道阿寒湖畔一帯の広大な山林の開発を行った前田正名(まえだ まさな)の想いを引き継ぎ、自然環境の保全とその適正な利用に資するため設立された財団。


By Morohashi Kumiko
Photo: Akan-Mashu National Park; PIXTA

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