VOL.193 JUNE 2024
SUMMER FUN IN JAPAN: SEASIDE FESTIVALS AND EVENTS
[日本刀の美]群鳥文兵庫鎖太刀 刀身銘 一(上杉太刀)
群鳥文兵庫鎖太刀の刀身。写真左の持ち手部分に「一」の銘がある。
群鳥文兵庫鎖太刀を携帯するための刀装*。制作当初からほぼそのままの形で伝わる希少な作例。鞘の上部の二つの金属製の帯取り(太刀を身に着けるための装具)が兵庫鎖である。
Photo: ColBase
国宝「群鳥文兵庫鎖太刀 刀身銘 一」は、別名「上杉太刀」とも呼ばれる。それは、この太刀がもともと武家の名家・上杉家が所持しており、上杉家から三嶋大社(静岡県三島市)へ奉納されたと伝わることに由来する。さらに、この太刀は、同社から明治天皇(第122代、在位1867年から1912年)に献上され、現在は東京国立博物館の所蔵となっている。
備前国(現在の岡山県東南部)で栄えた「福岡一文字派」という刀工の流派による13世紀の作という。刃長76.1cm、反り3cmで、制作当初の姿からほぼ変わらない貴重な太刀だ。刀身とともに、刀剣を携帯するための外装・刀装も同時期に作られたと考えられる数少ない例である。刀装は、鞘**、あるいは鐔***などの金具に、飛んでいる鳥の姿が精緻かつ巧みな技で表現されている。
![](/en/assets/hj_2024_06_12_03.jpg)
ColBaseを加工して作成
* 刀装とは刀剣を携帯するための外装のこと。刀装の部品を刀装具と言う。 大まかには、写真(下)の左から、柄、鐔、鞘と呼び、さらに細部に分かれる。
** 刀身を収める筒。
*** 鞘と刀身の間に挟む金具。