VOL.195 AUGUST 2024
EXPLORE THE UNIQUE CHARM OF MANGA IN JAPAN [日本刀の美]刀 無銘正宗(名物観世正宗)

相模国さがみのくにの名刀工である「正宗まさむね」が手掛けた刀剣(寸法:刃長約65cm)
Photo: ColBase

国宝「かたな 無銘むめい正宗まさむね名物めいぶつ観世かんぜ正宗まさむね)」は、鎌倉時代*末期の14世紀前半ごろに、相模国さがみのくに(現在の神奈川県の大部分)の名刀工として活躍した「正宗まさむね」により制作されたとされる。正宗は、日本刀の作刀流派として名高い「相州そうしゅうでん**」を完成させた人物として知られている。

名物観世正宗は「がねのよさ、にえと呼ばれる粒子のきらめきが無類」***と評され、相州伝の特徴をよく備えた作風となっている。「能楽の観世家が所持していたことから「観世かんぜ正宗まさむね」と称されるが、江戸時代の刀剣書『享保名物帳』によれば、徳川家康が観世家から召し上げて秀忠に与え(中略)たという。明治維新後、徳川家から有栖川宮ありすがわのみやに献上、同家を継いだ高松宮家に伝えられた。」**** 現在は東京国立博物館の所蔵となっている。

つかに収まる部分のなかご*****には梵字******などの彫り物が記されている。
Photo: ColBase


* 12世紀末(始期は1185年、1192年と諸説あり)から1333年までの期間を指す。 
** 鎌倉時代中期から後期にかけて、相模国鎌倉(現在の神奈川県鎌倉市)で生み出されたとされる日本刀の作刀流派。
*** **** e国宝より引用。
***** 刀剣の握る部分を柄と呼び、その中に収まっている刀身の部分を茎という。茎には刀工の名前や制作年月日など刀の情報が記されている。
****** 古代インドでサンスクリット語を表記するのに用いられた文字と、その系統の文字の総称。日本には仏教とともに大陸から伝わり、神聖な文字として主に仏教寺院で使われてきた。

≪引用箇所の用語について≫

  • がね…日本刀の原材料であるたまはがねを熱して打ち延ばし、2枚に重ねてさらに打ち延ばすという折り返し鍛錬を幾度も繰り返すことでできる刀身本体の肌模様のこと。
  • にえ…熱した刀身を水につける焼き入れにより現れる刃文を構成する微粒子の一つ。微粒子にはにえにおいがあり、光に当てるとにえは粒子が輝いて見え、においがは霞がかったように見える。にえは比較的粒子が荒いので肉眼でも確認できる。
  • 能楽…日本の古典芸能の一つ。室町時代(1336年から1573年)から約650年以上にわたり演じ継がれてきており、ユネスコの無形文化遺産にも登録されている。観世流は能楽の流派の一つでその宗家が観世家。
  • 江戸時代…17世紀初頭から19世紀後半半ばまでの時代。秀忠は第2代将軍。
  • 明治維新…19世紀後半、日本における江戸幕府の支配体制が崩壊し、代わって近代的な明治新政権が形成されていった一連の政治的社会的変革過程を指す。
  • 有栖川宮、高松宮家…日本のかつての宮家の一つ。
Was this article interesting?

Feedback and Comments

Links

  • Prime Minister's Office of JapanOpen a new window
  • JAPAN GOV THE GOVERNMENT OF JAPANOpen a new window

You will be redirected to an external website. Would you like to proceed?
If you wish to continue, please click the link below.

Please Note:
  • The linked website is distinct from the website of the Public Relations Office of the Cabinet Office.
  • The URL of the website mentioned in this notice is as of November 21, 2023.
  • The website's URL may be discontinued or changed. Please verify the latest URL on your own.
Top