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April 2023

広島の大きく濃厚なカキ

  • 広島の殻付きの生ガキと、付け汁、日本酒(イメージ)
  • 広島湾でのカキ棚
  • 網焼きされる新鮮なカキ
  • カキフライ
  • 焼きガキとお好み焼き
  • カキ鍋
広島の殻付きの生ガキと、付け汁、日本酒(イメージ)

「海のミルク」と呼ばれるカキ。広島は日本のカキの約6割の生産量を占め、身が大きく濃厚な味わいのカキが評価されている。

広島湾でのカキ棚

身が大きくプリッとした食感、磯の香りと濃厚な味わいが特徴の広島のカキ。広島のカキ生産量は年間約2万トンで日本の6割ほどを占める。広島市の中心を流れる太田川をはじめとする大小河川が注ぐ広島湾は、河川が運んだ栄養塩*に恵まれ、カキの生育に必要なプランクトンが豊富であることから、その養殖に適している場所だ。岬や島々のお陰で波静かな広島湾にはたくさんの養殖いかだが浮かぶ。

広島では2000年以上前の貝塚**からカキの殻が出土しており、古代から人々が広島湾に生息するカキをとって食べていたことが分かっている。養殖が始まったのは17世紀と言われ、戦後になると養殖いかだが普及し、広島のカキ養殖は発展してきた。

網焼きされる新鮮なカキ

広島県では一般的にカキの水揚げは10月から5月で、生鮮出荷の最盛期は11月から3月ごろ。4月以降は主として冷凍加工として生産され、生鮮生ガキが徐々になくなります。

しかし、最近は夏でも生ガキが食べられるようになってきている。広島県内で養殖されているカキの種類はほとんどマガキ(真牡蠣)であるが、マガキは、梅雨の時期から夏場は産卵するために栄養分を使い果たし、水ガキと呼ばれる身が透明な状態になってしまう。水ガキはおいしいとは言えず、これが夏場に出荷されない要因となっていた。ところが、広島県が開発した産卵しないマガキの一種「かき小町」の登場によって夏場でもカキの出荷が可能になってきているという。そのため、4月以降、夏になっても生ガキをメニューに載せているレストランもあるという。

カキフライ

実は、広島県は日本有数のレモンの産地であり、国内生産量の4割以上を占める。***広島産のカキの料理に広島産のレモンを絞って合わせるのもおすすめだ。更には、同じく広島の特産、西条の日本酒(参照)と合わせるのもよい。

「広島のカキは、カキらしい磯の香りと濃厚な味が特徴」と話すのは、広島県漁業協同組合連合会・専務理事の渡邉雄蔵(わたなべ ゆうぞう)さん。カキは、餌となるプランクトンが豊富な広島湾で良く育ち、その身にグリコーゲンなどの旨味を溜め込みプリッと太った状態になる。

カキは生食のほか、蒸し焼き、揚げ、鍋もの、炊き込みご飯にとさまざまに調理される。他の食材では出ないカキ独特の香りが美味しさを倍増させる。

カキ鍋

「殻ごと網焼きすると、殻にエキスが滲み出てきます。そのエキスと一緒に身をほおばれば、シンプルながら、深みのあるカキ本来の味を堪能できます」と渡邉さんは言う。「また、広島名物のお好み焼き****の具にしてカキを出す店も増えてきており、広島の名物をいっぺんに堪能できます」とも言う。

焼きガキとお好み焼き

広島市に隣接する東広島市の三津(みつ)湾一帯は、広島県が2021年10月にEUへの輸出に必要な生産海域に指定、2023年1月に農林水産省が衛生管理の国際基準HACCP(危害分析重要管理点)に認定した。そしてその翌2月、日本の生産地で初めてカキがEUへ輸出された。殻付きのまま冷凍処理したカキは、解凍後に生で食べることができる。世界各地にカキの生産地は数多あるが、2022年の欧州での商談で大きな身と濃厚な味わいの広島のカキは高い評価を得ていただけに、大きな自負と期待があっての出発となった。

おりしも、今年(2023年)5月には広島でG7サミットが開催される。世界中の多くの人たちに広島のカキの美味しさが知れ渡り、やがてカキ目当てに広島を訪れる、そのような日が近いかもしれない。

* 海水中に溶けた、植物プランクトン、海藻等の栄養となるけい酸塩、りん酸塩、しょう酸塩、・亜しょう酸塩等の総称。栄養塩類とも言う。
** 古代人の食べた貝がらが積もった遺跡
*** 2018年の国産レモンは約5,528トン生産され、広島県(42パーセント)、愛媛県(31パーセント)、和歌山県(10パーセント)など、21都府県で栽培・出荷されている。
**** 小麦粉の生地に、イカ・豚肉・キャベツなどの具材をのせて鉄板で焼き、ソースなどで味付けした料理。大阪風と広島風が有名。