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April 2023

広島の酒都:西条酒蔵通り

  • 広島県東広島市西条酒蔵通りの町並み
  • 西条酒造協会理事長であり、亀齢(きれい)酒造社長の石井英太郎(いしい えいたろう)さん
  • JR西条駅と西条酒蔵通りの地図
  • レンガ造りの煙突と赤い瓦屋根の建物と「なまこ壁」
  • 白文字で酒蔵名の書かれたレンガ造りの煙突と赤い瓦屋根の建物
  • 石井英太郎さんのオフィスにある酒とグラス
広島県東広島市西条酒蔵通りの町並み

広島県東広島市の西条は、300年余り前からの日本酒造りの伝統を有する街として知られる。昔の面影を残す西条酒蔵通りは酒蔵が連なり、訪れた人は多くの異なるタイプの西条の日本酒を知り、味わうことができる。

JR西条駅と西条酒蔵通りの地図

広島県東広島市の西条は、京都府の伏見、兵庫県の灘と並び日本を代表する酒どころである。JR山陽本線の広島駅から電車で西条まで40分弱で行くことができる。JR西条駅の目の前の「西条酒蔵通り」には7軒の酒蔵が集まる。造り酒屋は白壁や“なまこ壁”*に赤い瓦で、屋根には銘柄を掲げるレンガの煙突が立ち並ぶ。西条は、江戸時代(17世紀初頭~19世紀半ばから後半)の幹線道路の一つ西国(さいごく)街道**の宿場町として栄え、西条酒蔵通りは当時の面影も残している。2017年に国際記念物遺跡会議(イコモス)国内委員会が選ぶ文化遺産の一つに選ばれている。

そんな古い時代の雰囲気を味わいながら、通りを歩いて一軒、一軒、酒蔵巡りを楽しむ観光客が多い。

西条の酒造りについて、西条酒造協会理事長であり、亀齢(きれい)酒造社長の石井英太郎(いしい えいたろう)さんは、「標高250~300メートルの盆地に位置する西条は、寒暖差の大きい気候で、名水に恵まれた、酒造りに理想的な土地です。そのため、この地の酒造りの歴史は古く300年以上前には始まっていました」と語る。

西条酒造協会理事長であり、亀齢(きれい)酒造社長の石井英太郎(いしい えいたろう)さん

日本酒は水と米から作られるが、「西条では隣接する龍王山(りゅうおうざん、標高約575 メートル)を源とする伏流水を仕込み水として使い、酒造りをしています。この水はほどよくミネラルを含んだ中硬水で、酵母を増殖させる力が強く、発酵がスムーズに進みやすいため、理想的な酒造りの水です。米については、広島県産の良質な米を100パーセント使用します。これらを原料にして、繊細で芳醇、純度の高い良質の日本酒を生産しています。古くは、1917年の全国新酒鑑評会(1911年に始まった毎年恒例の日本酒を品評する会)で初の名誉賞に輝いた3銘柄のうち、私の蔵の酒を含めた西条の酒二つが受賞しました。以来100年余り、今日でも、西条の日本酒は品評会で数々の賞を受賞しています」と言う。

西条の各酒蔵は、販売所を設け、蔵の自慢の様々な酒を販売する。訪問客は試飲ができたり、中には杜氏(とうじ)による酒造りの工程を案内する見学ツアーを開催している蔵もある。***

レンガ造りの煙突と赤い瓦屋根の建物と「なまこ壁」

亀齢(きれい)酒造の杜氏、西垣昌弘(にしがき まさひろ)さんは「日本酒は大変複雑な工程で造られる酒であり、手間をかけ、丁寧に扱うことでよい酒ができます。日本酒の酒質は造り手によって多様で、西条の酒も個性豊かで、酒蔵を巡って試飲しながらお好みの酒を探すのもよいと思います。私たちの酒蔵では、芳香な香り、旨さ、爽快なのどごしの辛口酒を伝統的な製法で造り、“また飲みたい”と思っていただける酒質を追求しています」と語る。

各酒蔵は、日本酒だけではなく、酒粕で作ったジェラートなどのスイーツ、日本酒を練り込んだうどんや、酒粕入りの石鹸、酒蔵のロゴが入った帆布(はんぷ)バッグなどのオリジナル商品もある。そして、酒蔵直営のレストランやカフェを始め、酒蔵通り沿いや少し横道に入った所に地元の酒蔵の仕込み水や酒粕を使ったパン屋、日本酒を使った料理を提供する古民家カフェなどもあり、様々な日本酒の顔を楽しめる。

白文字で酒蔵名の書かれたレンガ造りの煙突と赤い瓦屋根の建物

また、地元の名物料理として「美酒鍋(びしゅなべ)」がある。季節の野菜や豚肉などをたっぷり入れて、日本酒と塩、こしょうだけで調理するのが特徴の豪快な鍋料理だ。西条酒蔵通りの飲食店、あるいは周辺の場所で提供されており、西条のお酒と合わせて味わうのもおすすめだ。

広島駅から少し足を延ばして、日本酒の魅力を楽しむために、西条酒蔵通りに出かけてはどうだろうか。

石井英太郎さんのオフィスにある酒とグラス

* 雨水による漆喰の劣化を防ぐために、壁を平瓦で覆った日本の伝統的な壁仕上げのこと。瓦と瓦の間にある漆喰の帯は、ナマコに似ていると言われている。
** かつては西日本で旅をする際の主要道路であり、現在の国道2号線の元になっている。
*** 見学ツアーは事前申込みで有料の場合もあり、酒蔵へ事前確認が必要(2023年4月現在)