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February 2022

日本のターミナル駅「東京駅」のもう一つの顔

  • 東京駅
  • スクエア・ゼロのデジタルサイネージ
  • エキナカのエキュート東京
  • 東京駅の赤レンガをモチーフにしたおみやげ用の菓子の一例
  • スクエア・ゼロに展示された「青森ねぶた祭り」にまつわる作品 (Highlighting Japan 2011年11月号特集「東北〜震災から半年を迎えて」参照)
東京駅

東京駅は、東海道新幹線、東北新幹線など全国の主要都市を結ぶ鉄道を含め一日約3千本の列車が発着し、一日平均約46万人(2019年度)の乗車人数を誇る日本の鉄道網の中心である。その東京駅は、ターミナル駅としての役割のみならず、ショッピングスポットとしても進化を続けている。

スクエア・ゼロのデジタルサイネージ

近年、主に都市圏にある日本の主要駅の構内では、専門店街でショッピングや飲食を楽しむことができる新しい商業スペースが次々とオープンしている。2000年代から急速な発展を見せる、こうした商業スペースは「エキナカ」と呼ばれ、そのほとんどが改札の内側にあることが大きな特徴だ。

東京の玄関口、JR東京駅には、多くのエキナカ施設があるが、その中でもこれから紹介する4つのエキナカに200以上の店舗が集まる。それぞれ、2020年8月にオープンした「グランスタ東京」、首都圏の東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本) 各駅で展開されている「エキュート」の「エキュート東京」と「エキュート京葉ストリート(現在リニューアル中)」、改札外にある「グランスタ丸の内」だ。これらの施設には、衣料品のブランド店、自宅での夕食の惣菜が買える店、洗練された和菓子や洋菓子の店などあらゆる種類の店舗がそろっている。そのため、これまでは朝も夕方も通勤と帰宅に急ぎ足だった人々が、時間に余裕のある帰宅途中に立ち寄るようになり、駅は鉄道の乗り降りだけではなく、魅力的なショッピングの場にもなっている。 (現在、これらのエキナカでは、厳しい新型コロナウイルス感染症対策が行われている。)

エキナカのエキュート東京

「TRY NEW TOKYO ST.を標榜するグランスタ東京は、約150店舗が集まる日本最大のエキナカです。全国からここに集まった老舗や名店でのお食事はもちろん、ここでしか手に入らない新しい東京土産もたくさんあり、大きな反響をいただいています」と、JR東日本の広報担当者は言う。

新幹線を始め東京へと向かう高速物流網を通じて、日本全国から当日の朝に獲れた鮮度の高い魚介類や野菜を提供するお店が多いのも東京駅ならではの魅力だ。新幹線の乗り場に近い「エキュート東京」には手土産や駅弁(電車内で食べるお弁当)が充実している。また、主に通勤客のニーズに合わせた飲食店やショップが並ぶ「エキュート京葉ストリート」は公園をイメージしたくつろぎの空間がデザインされている。グランスタ東京内の通路には、江戸切子や東京七宝、江戸簾などの伝統工芸品が環境装飾として展示され、さりげなく東京らしさを演出している。さらにグランスタ東京の開業に合わせて誕生した「スクエア・ゼロ(SQUARE ZERO)」は、吹き抜けのある多目的イベントスペースだ。高さ約6.9メートルのデジタルサイネージによる各種情報発信の他、産地直売や日本文化紹介など様々なイベントを通して、東京駅の新しい交流スポットとして、人と人が出会い、つながる機会を設けている。

東京駅の赤レンガをモチーフにしたおみやげ用の菓子の一例

東京駅の未来像を、JR東日本の広報担当者は次のように語る。

「エキナカの進化によって、駅は旅行や通勤の通過点から、人々が集う場所へと変わってきました。さらに東京駅では〈東京ステーションシティ〉と称し、一般社団法人東京ステーションシティ運営協議会が、「東京駅が街になる」というコンセプトのもと、周辺エリアである丸の内、八重洲、日本橋とともに、駅を中心とした一つの大きな街としてさらなる魅力と価値の向上を目指しています」

スクエア・ゼロに展示された「青森ねぶた祭り」にまつわる作品 (Highlighting Japan 2011年11月号特集「東北〜震災から半年を迎えて」参照)

かつては移動途中のニーズを満たすための売店やファストフードなど、クイックサービス型の店舗が中心だった駅は、多彩で魅力的な店が集まり、わざわざ買い物に出かけたいスポットへと変貌を遂げた。東京駅には美術館も併設され、折に触れて構内の広場では様々なジャンルのコンサートも開催しており、ショッピングと併せて、文化的な楽しみも享受できる。

2001年には、鉄道運賃の支払いだけでなく、ショッピングにも使用できるICカードが導入された。それを機に、東京駅は、エキナカの拡充によって、交通の要所としての駅という機能を超えて、人々を結ぶ、楽しくも豊かな空間作りが行われてきた。東京駅では様々なサービスが拡充されており、今も進化を続けている。