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February 2022

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温泉がある駅:わたらせ渓谷鐵道「水沼駅」

  • 温泉施設の上流に住むと言われる伝説の生き物にちなみ名付けられた「かっぱ風呂」(かっぱ像に会える)
  • プラットホームに水沼駅温泉センター(右)のある「水沼駅」
  • 線路越しに見える水沼駅温泉センターの入り口
  • 露天風呂
  • しだれ桃(左)と桜(右)の下を通り抜ける、古いディーゼル機関車が牽引するわたらせ渓谷鐵道の列車
  • 春には花桃と桜を楽しみに、わたらせ渓谷鐵道の観光列車に多くの人が乗る。
プラットホームに水沼駅温泉センター(右)のある「水沼駅」

東京都心から約100キロメートル離れた、群馬県桐生市にある「水沼駅」は、駅に温泉施設がある珍しい駅である。温泉付きの駅は、地域住民と訪問客の憩いの場として大切にされている。

線路越しに見える水沼駅温泉センターの入り口

東京都心から電車を乗り継いて2時間弱で群馬県桐生市の桐生駅に着く。乗客は、桐生駅から、風光明媚な景色が楽しめる「わたらせ渓谷鐵道(けいこくてつどう)」に乗って、温泉や寺院、特に国宝日光東照宮(Highlighting Japan 2017年9月号参照)で有名な栃木県日光へと向かうことができる。

桐生駅からわたらせ渓谷鐵道に約40分乗ったところに、温泉施設がある珍しい駅「水沼駅」がある。わたらせ渓谷鐵道は、鉄道からの素晴らしい眺めを楽しめるだけでなく、駅から外に出なくても温泉につかることができる、ローカル鉄道ファンにとっては申し分のない路線である。

水沼駅温泉センターがオープンしたのは、1989年12月。利用客が減少した路線に観光客を呼び込むためであった。この温泉施設は、ホームに沿って約100メートルの長さで、細長くつくられている。温泉の利用者は、施設のホーム側の窓から、発着する列車が見える。鉄道ファンではなくても、心踊る光景だ。また、水沼駅は渡良瀬川の渓谷の素晴らしい眺めを望む立地にあり、渓谷側に設置された浴場の窓からは、渓谷の四季折々の美しい景色を楽しむことができる。水沼駅周辺には9種類、約300本の桜、また、千本余りのしだれ桃が植えられた「小夜戸(さやど)・大畑(おおはた)花桃街道」があり、4月上旬に開花し始めると、渡良瀬川沿いは薄紅色に染まる。その光景を露天風呂につかりながら愛でることができる。

しだれ桃(左)と桜(右)の下を通り抜ける、古いディーゼル機関車が牽引するわたらせ渓谷鐵道の列車
春には花桃と桜を楽しみに、わたらせ渓谷鐵道の観光列車に多くの人が乗る。

温泉施設の湯は、赤城山中腹の猿川温泉から約8キロメートルのパイプを通じて引かれている。「泉質は肌に柔らかく、消化器病や動脈硬化にも効能があります。サウナや内湯もあり、地域の60歳以上のお年寄りには無料で開放されていますから、観光客だけではなく、地域住民の憩いの場としても活用されています」と、水沼駅温泉センターの神山登さんは言う。

露天風呂

また、ここには、レストランと宴会場もある。マイトサーモン*や栄養豊かで粘り気の強い「山うなぎ」と呼ばれる大和芋など、地元の食材を使ったメニューが目玉である。

このわたらせ渓谷鐵道は、1912年、栃木県の日本有数の銅山であった足尾銅山で採れる銅を運ぶ私鉄の足尾鐵道として操業し、その後、国有化されたが、1970年代初頭の銅山の閉山や沿線人口の急激な減少により、いったん廃止が決まった。しかし、地元の人たちの熱心な残すための運動が実を結び、1989年に、わたらせ渓谷鐵道の運行がスタートした。足尾銅山の跡地は今、この地域の人気スポットの一つとなっており、わたらせ渓谷鐵道の水沼駅から簡単にアクセスできる。

温泉施設の上流に住むと言われる伝説の生き物にちなみ名付けられた「かっぱ風呂」(かっぱ像に会える)

水沼駅は駅そのものが、美しい自然環境、リラックスできる温泉、そして美味しい地元料理という魅力が凝縮された、人気の名所となっている。

* ヤシオマスという名でも知られるマイトサーモンは、栃木県で品種改良して生まれたニジマスの一種。