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  • 長野県の地獄谷野猿公苑内の温泉でリラックスするサルたち
  • 温泉に入るサルたち
  • 温泉に入って毛づくろいをするサル
  • リラックスする親子のサル
  • 遊んでいるサル
  • 雪玉を持つサル

January 2022

スノーモンキー

長野県の地獄谷野猿公苑内の温泉でリラックスするサルたち

1964年に開館した長野県の「地獄谷野猿公苑(じごくだにやえんこうえん)」は、一年を通じて野生のニホンザルを間近に観察できる施設である。特に、冬に温泉に入浴するサルは「スノーモンキー」として国内外で有名だ。

温泉に入るサルたち

地獄谷野猿公苑(以下「野猿公苑」)は、長野県の北部山ノ内町(やまのうちまち)の標高850メートルの山中にある。一帯は急峻な渓谷地帯であり、古くから多くの温泉がわき出す場所である。そして、野生の日本の固有種、ニホンザル*が群れをつくって生息している。

温泉に入って毛づくろいをするサル

のちに野猿公苑の初代苑長になる原荘悟(はら そうご)さん(故人)らが、地獄谷温泉の旅館「後楽館」周辺で野生のサルに餌付けを始めたのは今から60年以上も前のこと。冬季には1メートル前後の雪が積もるこの周辺では、当時、スキー場建設のために森林開発が進み、ニホンザルの群れが人家近くの麓の畑や果樹園にまで現れるようになっていた。原さんたち地元の人たちは、畑や果樹園に入って荒らさないように、ニホンザルの餌付けを始めたが、何か観光資源に活用できないかと考えた。そんな中、温泉宿泊客の真似をしたのか、好奇心旺盛な子ザルたちが、冬の雪の積もる時期に、何と後楽館の露天風呂に入るようになった。原さんたちも温泉に入るサルなど見たことがなく、この珍しい様子を、町の観光資源の一つとすることを思いついた。

リラックスする親子のサル

野猿公苑がオープンしたのは1964年。その3年後には、温泉を引いたサル専用の露天風呂が完成した。雪景色の中、気持ちよさそうに温泉に浸かるニホンザルが、1970年に『日本のスノーモンキー』としてアメリカの雑誌LIFEの表紙を飾り、世界にも広く知られるようになっていく。

遊んでいるサル

「サルは本来、身体が水に濡れることを嫌う動物なのです」と野猿公苑の営業主任、滝沢厚 (たきざわ あつし)さんは話す。「動物園などは別にして、サルの入浴シーンが見られるのは世界でも、おそらく、ここだけでしょうね」

現在、野猿公苑にやって来るサルは160頭ほどで、そのうち温泉に浸かるのは50頭ほど。小さな頃に湯に浸かったサル以外は、生涯、温泉に入ることはないと言われている。

雪玉を持つサル

冬の入浴シーンが人気だが、野猿公苑の魅力は、四季を通じて野生のニホンザルの群れを驚くほど間近で観察できることにある。春から秋にかけてはサルの子育て、近くにいる人間の存在を忘れて夢中でじゃれ合う子ザルたちの姿などを観ることができる。また、冬にはいつでも入浴シーンが見られるかというと、そうでもない。天気の良い日には、日当たりが良く食料も豊富な山の斜面など、温泉に浸からなくても、寒さをしのげる快適な場所で一日の大半を過ごすからだ。

そこで、野猿公苑では、サルの様子が分かるライブカメラを設置して、インターネット上で配信しているので、世界中どこからでもオンライン上で確認でき、時にはサルが温泉に浸かる様子も見ることができる。しかし、「将来、機会があれば、そんなサルたちが遊ぶ山ノ内町の大自然を直に見に来ていただきたい」と滝沢さんは強調する。

* オナガザル科の霊長類で日本固有種。常緑広葉樹林、落葉広葉樹林に棲み、十数頭から百数十頭の成獣雄を含む母系集団を構成し、群れで遊動生活をする。