Skip to Content

The online magazine HIGHLIGHTING JAPAN

INDEX

Language
  • 2021年11月、福島第一原発で、ALPS処理水のサンプルが入った瓶を見るIAEA職員と専門家
  • 2021年11月、福島第一原発を視察するIAEA職員と専門家
  • ALPS処理水の貯蔵タンク

December 2021

福島第一原発の廃炉とALPS処理水

ALPS処理水の貯蔵タンク

2021年4月、日本政府は、福島の復興に向けて福島第一原発の廃炉を安全かつ着実に進めていくため、福島第一原発敷地内に貯蔵しているALPS処理水の海洋放出を行う方針を決定し、現在、国際社会と協力し、安全性を確保しながら、その準備に取り組んでいる。

2021年11月、福島第一原発を視察するIAEA職員と専門家

2011年3月11日に発生した東日本大震災にともなって、東京電力ホールディングス株式会社福島第一原子力発電所(以下、「福島第一原発」)では全ての電源が喪失し、原子炉の安定的な冷却機能が失われた。その結果、高温になった燃料によって炉心が損傷し、放射性物質が大気中に放出された。しかし、事故直後から、原子炉の冷却などの対策が行われたことにより、2011年12月には「冷温停止状態」を達成、それ以降現在に至るまで、放射性物質の放出は極めて低いレベルに抑えられている。

事故直後には、福島第一原発の周辺の12の自治体、約8.1万人の住民に避難指示が発令されたが、放射性物質の除去やインフラの復旧作業の結果、2021年12月現在、6つの自治体では全ての地域、残る6つの自治体でも一部地域を除き避難指示が解除されており、避難指示対象者数は約2.2万人へと減少している。

また、事故後、55の国・地域が日本産の食品に対する輸入規制を実施していたが、その数は年々減少しており、2021年中には、イスラエル、シンガポール、アメリカ合衆国が規制を解除した。現在も輸入規制を継続している14の国・地域のうち、9つの国・地域では検査証明書の添付などにより、食品の輸入を認めている。

2021年11月、福島第一原発で、ALPS処理水のサンプルが入った瓶を見るIAEA職員と専門家

ALPS処理水の処分

福島第一原発の1号機、2号機、3号機の原子炉建屋内には現在も、溶け落ちた燃料と構造物が混じり合い固まった「燃料デブリ」が残されており、冷温状態を保つために水で継続的に冷却されている。冷却に用いた水は放射性物質を含む「汚染水」となるが、福島第一原発では、汚染水の放射線リスクを低減するため、ALPS(アルプス)と呼ばれる浄化設備などによって放射性物質を取り除く処理を行っている。

福島第一原発の廃炉を進めるため、大きな課題の1つとなってきたのがこの「ALPS処理水」(以下、「処理水」)の処分方法だ。浄化処理によってほとんどの放射性物質が取り除かれているものの、処分に伴って生じ得る風評などの社会的影響が懸念されてきた。

特に論点となってきたのは、浄化処理で取り除くことのできないトリチウムだ。水素の仲間で、飲料水や食べ物、人体の中に存在する。原子力発電所や再処理施設で発生するトリチウムは、世界中の数多くの原子力施設から、各国・地域の法令を遵守した上で、海や川、大気中に排出されている。なお、これらの施設周辺で、トリチウムが原因とされる影響は見つかっていない。

処理水を保管するタンクが敷地を大きく占有し、今後の福島第一原発の廃炉作業に必要な敷地の確保が難しくなっていることを踏まえ、日本政府は2021年4月、2年程度の準備期間を経て処理水を海洋放出する方針を決定した。安全に関する法令を厳格に遵守するとともに風評を最大限抑制するため、処理水は海水によって100倍以上に希釈して、トリチウムの濃度を規制基準の40分の1未満にする。加えて、科学的な根拠に基づく情報発信、風評による影響を受け得る産業の販路拡大支援といった、社会的影響を抑制する対策も徹底する。

日本は、国際原子力機関(IAEA)の専門家による科学的なレビューなど国際的な協力を得ながら、国際社会に対しても高い透明性を持って情報提供を実施する。方針決定直後に、ラファエロ・グロッシーIAEA事務局長は、日本政府の方針を歓迎するとともに、「(日本の)計画の安全性と透明性の実行をレビューする技術的支援を提供する準備ができている」「日本が選択した処分方法は技術的に実施可能であり、国際慣行に沿っている」と表明している。

国際的なレビューは既に始まっている。2021年11月には、IAEAの職員と専門家(フランス、ロシア、韓国)が日本を訪れ、福島第一原発の視察、経済産業省や東京電力との関係者との協議を行った。

日本政府は今後、福島の復興と福島第一原発の廃炉の両立を大原則に、国際社会と協力し、安全性を確保しながら、処理水処分の準備に取り組んでいく。

(ALPS処理水に関する詳細は、以下を参照。https://www.meti.go.jp/earthquake/nuclear/hairo_osensui/alps.html)


海洋放出するALPS処理水の処分方法