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  • OrigamiUSAのイベントで折り紙を楽しむ人たち
  • 2021年「World Origami Days」のフライヤー
  • 1950年代からアメリカで折り紙を普及させたリリアン・オッペンハイマー
  • 折り紙の作品をかぶったOrigamiUSAのイベント参加者
  • OrigamiUSAの会報誌の表紙

December 2021

「折り紙は、誰でも、どこでも、いつでも」:OrigamiUSAの沿革と活動

OrigamiUSAのイベントで折り紙を楽しむ人たち

折り紙に出合った一人のアメリカ人女性が、その芸術性に魅せられ、折り紙を広める様々な先駆的な活動を展開した。その女性、リリアン・オッペンハイマーの活動は、折り紙の普及啓発活動を行う非営利団体「OrigamiUSA」の設立へとつながっていった。現在、全米各地やカナダや南米など世界各地の折り紙団体と連携して活動するOrigamiUSAの沿革と活動の一端を紹介する。

1950年代からアメリカで折り紙を普及させたリリアン・オッペンハイマー

OrigamiUSA(OUSA)は、アメリカ合衆国(以下「アメリカ」)のニューヨークにあるアメリカ自然史博物館に事務所を置く、世界最大級の折り紙団体だ。「折り紙の普及」を使命とし、現在では、オリガミグループという地域団体が全米あるいは世界各国100以上、1700人に及ぶ愛好家が参加する。かつては「paper folding」と英訳されていた折り紙を、日本語のまま「origami」として世界への普及に貢献したのはOrigamiUSAだ。

「OrigamiUSAの創設は、アメリカ人女性、リリアン・オッペンハイマー(1898-1992年)の先駆的な活動に端を発していると言えます。オッペンハイマーは、1953年頃に『羽ばたく鳥」という、尻尾を引っ張るとパタパタ羽ばたく作品の折り方を学んで折り紙の魅力に目覚め、本格的な普及活動を始めました」と、折り紙に関する研究を行っている松浦英子さんは話す。*

2021年「World Origami Days」のフライヤー

松浦さんによれば、イギリスのマジシャンでもあったロバート・ハービンが執筆した『Paper Magic: The Art of Paper Folding』(1956年。「紙の魔法:折り紙芸術」の意味)を読んだオッペンハイマーは、折り紙が大人も楽しめる文化的な活動であると確信したという。

彼女はハービンに手紙を書いて送ると、早速イギリスへ渡り、彼との会合を持った。これをきっかけに、「現代折り紙の父」と呼ばれ、創作折り紙の第一人者であった吉澤章(1911-2005年)を始めとする世界中の折り紙作家たちとも連絡を取ることを進め、オッペンハイマーの活動は国際的になった。

そして、1958年に設立したOrigami Centerを拠点として世界の折り紙関係者と文通を重ねて、知識や技術、資料を収集するとともに、折り紙に関する本を出版するなどして、情報を発信して普及に務めた。1959年になると世界中を歴訪し、4月には日本で吉澤との面会が実現して、その姿は日本のマスコミにも取り上げられた。

折り紙の作品をかぶったOrigamiUSAのイベント参加者

オッペンハイマーとその仲間たちの活動はやがて実を結び、彼女の没後とはなったが、折り紙の全米における目覚しい普及に伴い、1994年には、OrigamiUSAが誕生し、現在に至っている。

OrigamiUSAは、会報の配布、書籍の刊行、講習会の開催など、様々な方法で折り紙の普及に努めてきている。アメリカ自然史博物館には、オッペンハイマーの収集が元となった世界最大規模の折り紙関係の専門図書館を有するとともに、近年ではオンラインの講習会も始まっている。OrigamiUSAで評議委員長も務めたブラジル出身の日系二世、野口英史マルシオ(野口・ヒデシ・マルシオ)さんは「私は、母から折り紙を伝えられましたが、その慣習のないアメリカの人たちが折り紙に出会う機会として、OrigamiUSAの活動はとても重要です」と言う。

OrigamiUSAの会報誌の表紙

そのOrigamiUSAの最大のイベントが、毎年6月にニューヨークで開催されるコンベンションだ。そこで開催される展示会には、全米あるいは世界の傘下グループの会員から意欲的な最新作が集結する。

「展示会には、実在する動植物を始め、空想上の動物、あるいは幾何学的な形態など多種多様なテーマの作品が出品されます。また、著名な作家も数多く参加しています。しかし、OrigamiUSAでは審査や序列付けを行わず、有名な作家の作品も無名のアマチュア作品も、同列に並べられます。これは、OrigamiUSAならではの精神です」と、マルシオさんは微笑む。

マルシオさんの好きな言葉は、OrigamiUSAの共同創設者で、折り紙の普及活動に挺身したマイケル・シャル(Michael Shall、1949-95年)の「折り紙は、誰でも、どこでも、いつでも(できる)」だ。これはOrigamiUSAの公式スローガンでもある。その言葉通り、マルシオさんは、仕事で世界各地に赴任するたびに折り紙を始めると、人種も言葉も、文化の違いも超えてコミュニケーションの輪が広がることを強く実感してきたという。「一枚の紙を折ることで思いもよらない造形物ができる驚きは世界共通だ」とマルシオさんは言う。

オッペンハイマーの文通以来、現在も、OrigamiUSAと日本の折り紙団体や作家との交流は続いている。OrigamiUSAでは、その交流を証明するかのように、オッペンハイマーの誕生日の10月24日から日本の「折り紙の日」である11月11日までを「World Origami Days」と定めている**。6月のコンベンションと並び、このDaysの間、OrigamiUSAのグループが活動するアメリカ始め各国の各地で多様なイベントが開催される。

オッペンハイマーらの精神を受け継ぐ、これら二つのイベントは、世界中の折り紙愛好家たちをつなぐとともに、世界中へ折り紙をより広げていく役割を果たしている。

* 松浦英子「Origamiの誕生―リリアン・オッペンハイマーによる普及活動を中心に―」『東洋大学大学院紀要』57号2021年 pp. 199-214
** 折り紙の日は、日本折紙協会によって1980年に制定された。数字の「1」を正方形の一辺に見立て、11月11日で「1」が4つで正方形の折り紙になるという意味と、11月11日が世界平和記念日(第一次世界大戦休戦条約が調印された日)に当たり、平和を願う折り紙の心と相通じるものがあることで制定。