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  • 連鶴の「布晒(ぬのざらし)」(2016年の「ジュニア・サミットin三重」で7か国の子どもたちへの贈呈品になったもの)
  • 桑名市博物館歴史専門官の大塚由良美さん
  • 百鶴。1枚の紙から折られた97羽の鶴が連なる。
  • 「布晒(ぬのざらし)」の折り方を示した長圓寺所蔵の『秘伝千羽鶴折形』
  • 八橋(やつはし)。8つの鶴を連ねて丸く配置。

December 2021

一枚の紙から折る「連鶴」

連鶴の「布晒(ぬのざらし)」(2016年の「ジュニア・サミットin三重」で7か国の子どもたちへの贈呈品になったもの)

「連鶴(れんづる・れんかく)」は、一枚の紙からたくさんの鶴をつなげて折り上げる独特の折り鶴であり、200年以上前から伝承されている。この独創的な折り方を復元させ、後世に伝えるための活動が行われている。

桑名市博物館歴史専門官の大塚由良美さん

日本人にとって最も馴染みの深い折り紙は「折り鶴」だろう。「鶴は千年、亀は万年」という諺(ことわざ)にあるように、日本では、鶴は長寿で縁起の良い鳥とされる。健康や安全、更には平和を祈るために、折り鶴をたくさん折って糸でつなぐ「千羽鶴」の風習がある。

三重県桑名市に、ひときわ複雑で優雅な折り鶴を作る技が伝わっている。1枚の紙に切り込みを入れ、複数羽の鶴が連なる「連鶴」という折り鶴であり、古くはこちらも「千羽鶴」と呼ばれていた。

百鶴。1枚の紙から折られた97羽の鶴が連なる。

1797年に、様々な連鶴の簡単な折り方の図と完成形の絵、それぞれに趣のある題名と狂歌*が添えられた『秘伝千羽鶴折形(ひでんせんばづるおりかた)』が京都の版元から刊行されている。後年の調査で、この本が現存する連鶴に関する最古の出版物で、考案者は三重県桑名市にある長圓寺(ちょうえんじ)の僧侶、魯縞庵義道(ろこうあんぎどう・1762-1834)であることが判明した。これを受けて、桑名市では1976年に、『秘伝千羽鶴折形』に掲載された49種の連鶴を、「桑名の千羽鶴」として市の無形文化財に指定した。

「布晒(ぬのざらし)」の折り方を示した長圓寺所蔵の『秘伝千羽鶴折形』

桑名市博物館で歴史専門官を務める大塚由良美さんは、「『桑名の千羽鶴』は、一枚の紙から2羽から最高97羽つながるように折る連鶴が記載されています」と語る。

「桑名の千羽鶴」が無形文化財となった当時、実際に折ったことがある人は少数で、『秘伝千羽鶴折形』には詳しい折り方の説明はなく、また、折り図の一部に曖昧なところもある。これを一つ一つ解き明かし、誰でも折ることができるようにしたのが大塚さんだ。

「義道の考案した連鶴は、創造的思考が発露されており、後世に伝える価値があると思います」と大塚さんは言う。

現在は、大塚さんを含む2名が、桑名市から「桑名の千羽鶴」技術保持者の認定を受け、伝承活動に努めている。今では、市内の小学校や中学校での折り方指導、博物館での公開講座などの様々な活動を通して、多くの桑名市民が「桑名の千羽鶴」に親しんでいる。

八橋(やつはし)。8つの鶴を連ねて丸く配置。

2016年、「G7伊勢志摩サミット」に関連して「ジュニア・サミットin三重」が桑名市で開催された際、大塚さんは、参加した7か国の子どもたちに、「桑名の千羽鶴」の一つ「布晒(ぬのざらし)」を折って贈った。まるで7か国の子どもたちが手をつないだかのように、華やかな和紙の折り鶴が7羽つながった連鶴の様子に、子どもたちは歓声をあげて喜んだという。

「昔の人々は、手間のかかる連鶴を、心を込めて折って、大切な人に贈ったのではないでしょうか」と語る大塚さんは、未来に向かって、連鶴折りの研究に余念がない。

* 狂歌は、短歌と同様の「5・7・5・7・7」の5つの句で構成される古典詩歌で、ユーモアをまじえて日常の事柄などを詠んだもの。江戸中期ごろに流行した。