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  • 父島の大村海岸
  • 父島のウェザーステーション展望台からの夕日
  • 父島の旭山のハイキングコース
  • 母島の乳房山からの景色

November 2021

東洋のガラパゴス「小笠原諸島」

父島の大村海岸

東京都心から約1000キロメートル離れた太平洋上に浮かぶ小笠原諸島は、独自の進化を遂げた生物が多く「東洋のガラパゴス」と呼ばれる。

父島のウェザーステーション展望台からの夕日

小笠原諸島は、東京都心から約1000キロメートル離れた30ほどの群島である。飛行場がなく、フェリーのみが交通手段であり、東京港から約24時間かかるが、行政上は東京都に属する小笠原村である。小笠原諸島の中で父島と母島のみが有人島であり、その他の島々はすべて無人島*だ。

これらの島々は、本州から切り離されたのではなく、火山活動による海底隆起で誕生した。その島々に生息する生物は、風や流木で漂着し、島の環境に適応しながら長い時間をかけて独自の進化を遂げたため、小笠原諸島は「東洋のガラパゴス」と呼ばれる。その豊かで独特な生態系が評価され、2011年に世界自然遺産に登録されている。

すべての島の面積を合わせても約105平方キロメートルしかない小さな島々だが、気候帯では亜熱帯に含まれており、海域にはイルカ、クジラ、ウミガメといった海洋動物などが生息している。陸域にはヒメツバキやムニンノボタンのような植物、ハハジマメグロのような鳥類、ヒメカタゾウムシのような昆虫類、更にはカタマイマイのような陸産貝類(カタツムリ類など陸域に生息する貝の仲間)など、数多くの固有種が生息・生育している。特に陸産貝類は、島の様々な場所に分布を拡げながら、その環境に適応していった結果、顕著な種分化が生じ、今もなお進化を続けている。

父島の旭山のハイキングコース

環境省小笠原自然保護官事務所の若松佳紀さんは、「この小笠原の島々には100種以上の陸産貝類の仲間がいます。それだけでも驚きなのですが、そのうちの9割以上が小笠原でしか見られない固有種なのです」とその特徴を語る。

若松さんによれば、小笠原諸島では他の海洋島と比べ陸産貝類の種の絶滅率が低いという。例えば開拓が進んだハワイ諸島では、かつては750種以上の陸産貝類が生息していたが、その多くは絶滅してしまったという。小笠原諸島は1830年ごろまで定住者がいなかったとされ、開発による環境の改変が少なかったことから絶滅率が低いと考えられる。そのため、「現生種を研究すると、過去から現在までの進化系列や種の変遷を追うことができる」のだという。

母島の乳房山からの景色

そんな小笠原の豊かな自然を堪能できる場所として、父島と本土を結ぶ港や集落の近くにある大村海岸(別名:前浜)が挙げられる。わざわざ潜らなくても、透き通った海の中を泳ぐ魚やサンゴを見ることができる。また、父島の西側の海を望むウェザーステーション展望台は、太平洋に沈む夕日が雄大であることから人気スポットで、晴れた日には母島まで望める。さらには、植物や生物の自然観察をしたい場合、父島の旭山ハイキングがおすすめだ。旭山(標高267メートル)の山頂まで整備された遊歩道が続いているので、子どもでも山歩きを楽しめる。新型コロナウイルス感染症の影響が出る以前は外国人観光客の姿もよく見かけたという。母島にも、時期によっては陸地からでもホエールウオッチングができる鮫ヶ崎、固有植物の宝庫である乳房山(ちぶさやま。標高463メートル)など見所がたくさんある。

美しい自然環境から、「日本の楽園」とも呼ばれる小笠原諸島。小笠原諸島でしか見られない生き物たちも、その魅力の一つだ。

* 自衛隊の施設のある硫黄島と、自衛隊と気象庁の施設のある南鳥島には隊員、職員が在住している。