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INDEX

  • 西表島のマングローブ林
  • エメラルドグリーンの海に浮かぶ小さな島越しに見える西表島
  • 奄美大島の固有種、アマミクサアジサイ
  • 沖縄島北部の固有種、ヤンバルクイナ
  • 西表島の固有種、イリオモテヤマネコ
  • 奄美大島及び徳之島の固有種、アマミノクロウサギ

November 2021

生物多様性の島々

西表島のマングローブ林

日本列島の南端部分、南北約1200キロメートルにわたって連なる多数の島々「琉球列島」のうち、奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島の4地域は、2021年7月、UNESCOの世界自然遺産に登録された。

エメラルドグリーンの海に浮かぶ小さな島越しに見える西表島

2021年7月、日本で5番目となる世界自然遺産に登録されたのが『奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島』である。鹿児島県と沖縄県にまたがるこれら四つの地域は琉球列島の一部で、亜熱帯の森が広がる。世界遺産に登録されたのは、その豊かな生物多様性からである。

環境省の沖縄奄美自然環境事務所で国立公園企画官を務める浪花伸和さんは、これら4地域の生物多様性について、「今回、登録された4地域は、合わせて約43000ヘクタールで、面積で言うと日本の国土の0.5パーセントにも満たない狭い地域です。しかし、そこには95種もの国際的絶滅危惧種、そのうちの75種はこの地域にしかいない固有種です」と言う。4地域を含む琉球列島は、約1200万年前、地殻変動により大陸から分断され、その後気候変動によって近隣島嶼間で分離結合を繰り返した。その結果、これらの島々では、大陸で絶滅し、島にだけ生き残った遺存固有種や、それぞれの島の環境に合わせて独自の進化を遂げてきた新固有種などの固有種が多いのである。

奄美大島の固有種、アマミクサアジサイ

また、現在、日本全国の絶滅危惧種のうち、この4地域が占める割合は高い。例えば、国の特別天然記念物に指定されている奄美大島と徳之島のアマミノクロウサギ、沖縄島北部のヤンバルクイナ、西表島のイリオモテヤマネコなどは、それらを代表する生き物である。

沖縄島北部の固有種、ヤンバルクイナ

そんな希少な絶滅危惧種をはぐぐむ4地域の自然の豊かさは格別である。

奄美大島には手つかずのマングローブ原生林があり、トンネルのようなマングローブ林の中をカヌーで巡ることができる。アマミクサアジサイなどの貴重な植物を目にすることもあるという。

西表島の固有種、イリオモテヤマネコ

徳之島では、島人のエコツアーガイドが様々なコースのエコツアーを催行している。その中のひとつ、ナイトツアーでは、アマミノクロウサギを観察するため山中や林道を車で観察ポイントを目指すが、夜行性動物であるその原始的な姿を見ることができる可能性があるという。

奄美大島及び徳之島の固有種、アマミノクロウサギ

沖縄島北部は、山や森林などが多く残っている地域であり、「やんばる(山原)」と呼ぶ、緑豊かな亜熱帯照葉樹林の森が広がり、見所も多い。西表島は、面積の90パーセント以上を亜熱帯のジャングルの森が覆っている。夏の風物詩となっている、夜に咲き朝に散るサガリバナが有名だ。花が咲く時期に、カヌーに乗ってマングローブの林を抜けて花を見に行く企画が好評という。

4地域の世界自然遺産登録を契機に、浪花さんをはじめとする関係者は、これまで以上に島の絶滅危惧種や固有種の保全、エコツーリズムの推進のための準備に余念がない。