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  • 長良川の鮎を手で捕まえる子供たち
  • 清らかな水の長良川
  • 長良川のシンボルである鮎
  • 長良川の鵜飼
  • 鮎のつかみ取りを楽しめ、鮎を食べられる岐阜県郡上市の「清流長良川あゆパーク」
  • 炭を使った伝統的な方法で焼かれる、塩をまぶした鮎

July 2021

清流長良川の鮎

長良川の鮎を手で捕まえる子供たち

代々、地元の人々により、長良川と清らかな水に育つ川魚の鮎(アユ)は守られてきた。こうした努力と、関連する伝統が評価され、2015年に「清流長良川の鮎」は国連食糧農業機関(FAO)の世界農業遺産に認定された。

清らかな水の長良川

全長166キロメートルにおよぶ長良川は、岐阜県北西部の大日ヶ岳(だいにちがたけ)を源流とし、岐阜県の郡上(ぐじょう)市、美濃(みの)市、関(せき)市、岐阜市などを流れ、太平洋に面する伊勢湾へと注ぐ。

長良川のシンボルは、“清流の女王”といわれる川魚の鮎だ。天然の鮎は川底の石についた良質の苔を食べて育つ。

若く小さめの鮎は天ぷらにして、成長した鮎は塩焼きにして食べる場合が多い。成魚は、独特の苦みと、スイカに似た芳醇な香りがある。他の川魚にはないその香りのよさから、昔から“香魚(こうぎょ)”とも呼ばれてきた。長良川には、鮎以外にもサツキマスなど約100種の魚類、特別天然記念物で世界最大級の両生類であるオオサンショウウオなどが生息し、生物多様性豊かな川となっている。

長良川のシンボルである鮎

長良川には、鮎を獲るための様々な伝統漁法も受け継がれている。例えば、つないだ鵜を巧みに操って鮎を獲る漁法で、1300年の歴史を誇る「鵜飼(うかい)」、川底に敷いた白い布(あるいはビニール)と水面に張ったロープの音で、10月頃、産卵のために下ってきた鮎を驚かせ、停滞したところを網で捕らえる「瀬張り網漁」、夜に船で漁を行い、櫂(かい)で水面を叩く音とかがり火で鮎を捕らえる「夜網漁」などである。

長良川の鵜飼

「鮎には、天ぷらや塩焼き以外にも、鮎鮨や鮎の形をした和菓子もあります。まさしく、長良川の鮎は“岐阜の食文化”の代名詞ともいえます。その他、流域には、ユネスコ無形文化遺産に登録された本美濃紙(高品質の手漉き和紙)など、水と深いつながりのある伝統工芸も多くあります」と、岐阜県農政部・里川振興課里川振興係の井上茜さんは説明する。

鮎のつかみ取りを楽しめ、鮎を食べられる岐阜県郡上市の「清流長良川あゆパーク」

このように、長良川と鮎は流域の伝統的な食や文化と深く結びついており、人々はその自然と伝統を代々大切にしてきた。それが、2015年の「清流長良川の鮎~里川における人と鮎のつながり~」の世界農業遺産認定につながった。

「世界農業遺産に認定された理由は、鮎、長良川の清流、その清流を守る取組、川に栄養分を付与する源流域の森の維持、漁業、そして、伝統文化が結びついた、独自の“長良川システム”が機能しているからです。そのために、人々は長良川の恩恵を享受するだけではなく、流域の自然環境を守る様々な活動を続けてきました」と井上さんは話す。

炭を使った伝統的な方法で焼かれる、塩をまぶした鮎

例えば、漁業者、林業者、地域住民が連携して原流域での植林事業を進めている。また、自治体が、魚類の生息や繁殖を助けるために伐採等を制限する「魚つき保安林」の指定地域を拡大させている。こうした森林保全が、長良川への土砂や木の流出を抑制し、川の水質悪化を防いでいる。さらに、流域の自治体による水質監視や、企業や地域住民による河川の清掃も行われている。様々な主体が関わるこれらの取組により、流域に約86万人が住んでいるにもかかわらず、長良川の清らかな水と生物多様性は守られている。そして、そうした環境があるからこそ、地域の伝統や文化も守られているのだ。

長良川の清流を次の世代へ引き継ぐために、今後も多様な主体が協力し、長良川システムを動かしていく。