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  • 日本で子供向けのツリークライミングクラスを指導するギャスライトさん
  • 国内外でプロのアーボリストの養成を目的にした「アーボリスト®トレーニング研究所」
  • ジャイアントセコイアの古木の上のジョン・ギャスライトさん
  • 日本で子供向けのツリークライミングクラスを指導するギャスライトさん
  • どのような身体能力者でも参加可能なギャスライトさんのツリークライミングプログラムの様子

July 2021

日本の「ツリークライミング」のパイオニア

ジャイアントセコイアの古木の上のジョン・ギャスライトさん

アメリカ生まれ、カナダ育ちのジョン・ギャスライトさんは、日本に初めてレクリエーション「ツリークライミング®︎」を紹介した。それは、20年の時を経て、日本古来の自然観も取り入れられて、日本を越えて広がりを見せようとしている。

日本で子供向けのツリークライミングクラスを指導するギャスライトさん
日本で子供向けのツリークライミングクラスを指導するギャスライトさん

NPO法人「ツリークライミング®︎ジャパン*」によれば、「ツリークライミング®︎」は、専用のロープやサドル(安全帯)、安全保護具を利用して木に登り、木や森、自然との一体感を味わう体験活動である。もともと、「アーボリスト(樹護士)」と呼ばれる樹木のスペシャリストが、木を傷めずに高木の剪定作業するための木登り技術だった。それが、1980年代にアメリカでレクリエーションとして普及するようになったのである。

ジョン・ギャスライトさんは、ツリークライミングを日本に紹介するためにツリークライミングジャパンを2000年に愛知県瀬戸市に設立、現在も第一人者として活躍し、6000名を超える資格取得者を養成して普及に努めている。

カナダのバンクーバー島で育ったギャスライトさんは、子どもの時に浜辺に流れ着いた木製の道具のように思われたものが日本の履物の「下駄(げた)」であることを知り、日本の文化に興味を持つようになった。「いつか日本に行きたい」という強い願いは、1985年に日本の大学で学び始めることで叶えられた。日本では、再び木の文化に出会った。彼の心を捉えたのは弁当箱だった。

どのような身体能力者でも参加可能なギャスライトさんのツリークライミングプログラムの様子

「日本では、香りづけや保存のために食べ物にも木の葉を利用するんですね。考えてみれば、弁当箱も箸も木でできている。本当に日本人の生活の中心には木があるのだと思いました」とギャスライトさんは言う。

大学を卒業後、日本で自然や環境、中でも森林文化の素晴らしさを伝える執筆や普及活動を行なっていたギャスライトさんが、ツリークライミングに取組むことになったのは車椅子に乗った日本人女性から「ギャスライトさんの著書に紹介されていたカリフォルニアのジャイアントセコイアに私も登ってみたい」と声をかけられたことだった。ジャイアントセコイアは、アメリカ・カリフォルニア州シエラネバダ山脈の標高およそ1000~2600メートルのごく限られた地域にしか生息しない樹高100メートルにも達する世界有数の巨木である。

ギャスライトさんは日本で医師をふくむ専門家チームを結成、3年の準備期間を経て、2001年に彼女は、車椅子を地上に置き、80メートルの高さの巨木の上で一晩を過ごすという夢を叶えた。ギャスライトさんによれば、重度の身体障害者がジャイアントセコイアの古木に登ったのは、世界初のことだった。

それから数年後の2005 年、愛知で開催された日本国際博覧会「愛・地球博」では木登り体験ができる自然体感プログラムをプロデュースした。

国内外でプロのアーボリストの養成を目的にした「アーボリスト®トレーニング研究所」

ギャスライトさんは、ツリークライミングにはストレスを軽減させ自律神経を整える効果があること解明した研究で、2007年に名古屋大学から博士号を授与された。その同じ年、「人も木も元気になる」をコンセプトに取り組んだ、ツリークライミングのプログラムは、経済産業省が普及推進する「第一回キッズデザイン賞**」を受賞した。ギャスライトさんの森に親しみ触れ合うプログラムは、“森へ入るためのルールや徹底した安全性の確保にも好感が持てる”と評価された。

2013年には日本で「アーボリスト®トレーニング研究所」を設立し、日本を中心としながら海外でもプロのアーボリストの養成に力を入れている。

「木の1本1本に神様が宿るという自然観がある日本で、ツリークライミングの活動を始めることができたのが良かった。僕たちは海外で活動するときも、森に入る際に‘おじゃまします’、木には‘ありがとう’と声をかけます。それを、日本古来の自然観に基づくものだと説明すると、皆、理解して共有してくれるのです」とギャスライトさんは微笑む。

ギャスライトさんが日本に紹介したツリークライミングは、古くからの日本人の自然観も取り入れながら、世界の森を愛する人々の間に広がりをみせようとしている。

* https://www.treeclimbing.jp
** 子どもや子育てに関わる社会課題解決に取り組む優れた製品・サービス・空間・活動・研究を顕彰する。