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  • 自動で集材作業を行うAI搭載架線式マシン
  • 無人自動走行で材木を運ぶフォワーダ(積載式集材車)
  • 無人荷おろし作業中のフォワーダ
  • AIの画像処理技術により、木材の迅速かつ簡単な調査と収集が可能になる。
  • AIの画像処理技術により、木材の迅速かつ簡単な調査と収集が可能になる。
  • AIの画像処理技術により、木材の迅速かつ簡単な調査と収集が可能になる。

July 2021

スマート林業

自動で集材作業を行うAI搭載架線式マシン

日本は、先端技術を活用して、より安全で、より効率的な木材生産を可能とする「スマート林業」を推進している。

無人自動走行で材木を運ぶフォワーダ(積載式集材車)

日本は、国土の約67パーセントを森林が占めており、豊かな森林資源に恵まれている。しかし、森林面積の大部分は急峻で複雑な地形となっているため、森林の管理や経営には課題も多い。例えば、急斜面の森林の整備には大型機械を導入することが難しいため、林業従事者が手作業で伐倒や枝払いを行っており、労働生産性が高くはないといったことや、林業の担い手が高齢化する一方で、若者の新規就労が進んでいないこと等である。

そうした課題を克服し、恵まれた森林資源を維持活用する方策が、「スマート林業」である。林野庁によれば、スマート林業とは、地理空間情報やICTなどの先端技術を駆使し、作業の生産性や安全性の飛躍的な向上、そして、需要に応じた高度な木材生産を可能とする林業とされている。

林野庁は、スマート林業を推進するために、2018年度以降、長野県、石川県、熊本県など、スギやヒノキなどの人工林を有する12の地域で「スマート林業実践対策」を実施している。これらの地域では、以下のようにスマート林業を支える様々な技術の実証が行われている。

無人荷おろし作業中のフォワーダ

■レーザー、ドローン、スマートフォン

樹種の判別や樹高といった森林資源情報を収集するため、従来は林業従事者が直接森林に入り、測定を行ってきたが、人手も時間もかかっていた。そこで、省力化のために、航空機からレーザー光を照射して測量したり、ドローンで撮影した画像を解析する方策を導入することによって、そうした情報を、簡単かつ短時間で得られるようになった。

また、スマートフォンを使った木材検収システムも実施されている。これは、切り出された丸太をスマートフォンで撮影するだけで、本数、木の直径などの情報を、AIを使った画像認識技術が解析して、素早く簡単に把握、収集できるシステムである。このシステムも、人が数え、計測するという従来の検収作業に比べ、大きな省力化につながっている。

AIの画像処理技術により、木材の迅速かつ簡単な調査と収集が可能になる。 AIの画像処理技術により、木材の迅速かつ簡単な調査と収集が可能になる。
AIの画像処理技術により、木材の迅速かつ簡単な調査と収集が可能になる。

■消費者ニーズの把握

これまで、「消費者がどんな木を求めているのか」、「どこで、どれだけの木が生産されているのか」などの情報が十分に共有されてこなかったため、消費者が必要とする木材を迅速に供給することが難しかった。そこで、需給マッチングの円滑化のため、ICTなどの技術で収集したデータをクラウド化することによって、林業従事者間での森林情報の共有化が進められた。これにより、木材供給が迅速化された。例えば、森林で伐採された材木は、木材を扱う「市場」をいったん通して、製材所へと供給されていたが、需要ニーズが予め分かるため、森林から直接、製材所まで木材を直送することが、より容易になった。

また、建設機械が進入できない傾斜地等の伐倒・搬出作業を遠隔操作で行う作業車や、AIが伐倒木を画像識別して自動で集材作業を行う機械の導入も徐々に進んでいる。さらには、作業道上に誘導用センサーを敷設することにより無人自動走行での木材運搬を可能にしたフォワーダ(積載式集材車)の開発なども進められている。

■新たな木材用の樹種

こうした先端的な林業技術の開発に加えて、日本では新たな木材用の樹種の研究開発、普及が行われている。特に力が入れられていることは、成長の早い樹種の普及である。日本の人工林の主流であるスギやヒノキは、植樹してから伐採まで平均して約50年もの長い年月がかかることが課題となっていた。そこで、20年から30年ほどで伐採可能な太さに成長するセンダンやコウヨウザンといった新たな品種の育成方法の研究が進められており、各地で試験的な植栽が始まっている。

以上のような様々なイノベーションによって、日本の林業が直面している様々な課題が克服され、今後、日本の森林資源の可能性がさらに高まることが期待されている。