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  • 白神山地のトレッキング
  • ブナ林
  • 暗門渓谷ルートにある滝
  • 白神山地の希少な固有種のアオモリマンテマ
  • 白神山地の希少な固有種のクマゲラ

July 2021

白神山地:自然博物館さながらのブナの森

ブナ林

ユネスコの世界遺産に登録されている白神山地(しらかみさんち)は、美しい原生的なブナの森に、多種多様な動植物が共存する山地である。

白神山地のトレッキング

白神山地は、日本の北東部である東北地方の青森県と秋田県にまたがる広さ約13万ヘクタールの山地帯の総称である。1993年12月、白神山地のなかでも最もよく原生状態が保たれている約17000ヘクタールのブナの天然林が、日本初のユネスコ世界自然遺産として登録された。この登録は、白神山地の山間部に住み、昔ながらの狩猟を行うマタギと呼ばれる人々の狩猟文化や、白神岳(標高1253メートル)を対象とする山岳信仰など、独自の文化についても考慮されたものである。急峻な地形を縫うように6本の河川が流れ、標高千メートルを超える山々が並び、滝も多く見られる。さらに、一年の半分ほどは雪に覆われる厳しい気候条件のため、マタギによる、熊猟、山菜やキノコの採取、炭焼き以外、ほとんど人の活動がないため、その影響は少なく、原生状態が保たれてきた。

暗門渓谷ルートにある滝

静けさに包まれたブナ天然林は、地域固有種であるアオモリマンテマやツガルミセバヤといった植物や、イワナやウグイなどの魚類、クマゲラやイヌワシといった鳥類、またニホンカモシカやツキノワグマといった哺乳類などの生息地であり、さながら原生の森を保存展示する博物館である。寿命200年ほどと言われるブナの木が朽ちれば、時間とともに土壌の栄養となり森を育んでいる。その土壌からはパンづくりに適した「白神こだま酵母」菌が見つかり、また、「白神ささら」という乳酸菌が発見され、将来のバイオビジネスにもつながる研究が進められている。多くのミネラルを含むブナ林の養分は、やがて谷川、さらに海へと運ばれてプランクトンの栄養となり、様々な魚介や藻類を育んでいる。そうして育った川や海の魚類が美味しい「白神の魚」としてブランド化されている。

そんな白神山地のいちばんの魅力は、何といっても四季折々に移り変わる景色だ。

白神山地の希少な固有種のアオモリマンテマ

「黄緑色のブナの若葉が芽吹く春、爽やかな風がわたる夏、山全体が紅葉する秋、そして雪に覆われる冬と、四季それぞれに素晴らしい」と、青森県西目屋村にある白神山地ビジターセンター館長の辻村収(つじむら・おさむ)さんは言う。

ビジターセンターでは、初心者でも楽しめるガイド付きツアーを開催している。ブナ林を手軽に体感できる「ブナ林散策道コース」、三つの滝を楽しめる「暗門渓谷ルート」、白神山地の大パノラマを堪能できる「白神山地眺望コース」、また森林浴(Highlighting Japan 2019年8月号参照)を堪能できる「十二湖散策コース」などの七つの散策コースに加え、登山家のために七つの登山コースが準備されている。ブナ林の息吹を感じ、鳥の鳴き声やせせらぎを聞き、そして足元の可憐な花々を愛でることができる。

白神山地の希少な固有種のクマゲラ

ビジターセンターでは、若い世代のガイド育成に力を入れるとともに、課外授業や修学旅行を積極的に受け入れ、伝統的な食や工芸、そして、森について体験して学ぶ楽しさを提供して、白神山地の森の素晴らしさを伝えている。辻村さんは「これからも、少しでも多くの人々が白神山地を体感できる機会を充実していきたい」と言う。