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  • 中村能史さん(右から二人目)と「ドリームチームジャパン」
  • 医師の中村さん
  • 脚前挙支持の演技を決める中村能史さん
  • 体操選手の中村さん

February 2021

生涯現役の医師、そして体操選手

中村能史さん(右から二人目)と「ドリームチームジャパン」

39歳の頃から医師と体操選手の両立を続ける中村能史さんは、現在82歳。生涯現役を目指している。

医師の中村さん

赤と黒の体操着に身を包んだ中村能史さんが、つり輪種目で脚を上げ、体をL字型に保つ脚前挙支持の演技を決めると、会場から大きな拍手が起こった。2020年9月に開催された第53回全日本シニア・マスターズ体操競技選手権大会でのことである。1985年に初めて参加して以来、この大会で27回目の出場を数えた東京在住の中村さんは、現在、日本で現役最高齢のアマチュア体操選手である。この出場で、日本最高齢出場記録を81歳8カ月として更新した。

「演技が上手くできると、会場の空気が一瞬はっと張り詰める。それが快感ですね」と、中村さんは朗らかに笑う。

この大会に合わせて、前回大会の年代別優勝者など5名で「ドリームチームジャパン」が結成され、中村さんはそのメンバーの一人として出場した。大会ではドイツ選手との交流戦も予定され、楽しみにしていた中村さんだったが、新型コロナウィルスの影響でドイツチームの来日は中止となり、次回大会に延期されてしまった。

コロナ禍は中村さん自身にも及んでいた。大会に先立つ5月、東京都内の病院の院長として診療に当たっていた中村さんは新型コロナウィルスに感染し、約3週間の入院とその後2週間の自宅療養を余儀なくされた。症状は比較的軽かったものの強い倦怠感があり、この5週間で筋力も大きく落ちてしまった。回復後はすぐにもトレーニングを再開したかったが、行きつけのジムはコロナ禍で休業中だったため、まずは自宅でゴムチューブを使って少しずつ体を動かすことから始めた。ジムが再開されると本格的な筋肉トレーニングをスタートさせ、諦めかけていた9月の大会出場に何とか間に合わせることができた。

脚前挙支持の演技を決める中村能史さん

「何としても大会に出場しようという目標があったことで、病後の回復も早かったと思います」と中村さんは復活を振り返る。

中村さんは高校時代から本格的に体操を始めた。高校2年生、3年生と2年連続で、出身地の静岡県の代表として国民体育大会(毎年開催される国内最大のスポーツの祭典)に参加し、高校3年次には静岡県大会で個人総合優勝を果たすほどの実力者だった。その後は医師の道に進み、体操から離れていた。39歳の頃、子どもたちが通い始めた体操クラブに社会人クラスがあり、中村さんはもう一度体操を始めたのだった。

「体操の醍醐味は、練習を積んで恐怖心に打ち勝つこと。昨日できなかったことが今日できる進歩が分かるし、大会出場という目標もある。だから今まで続けてこられた」と、中村さんは語る。

仲間がいなければ試合に向けた練習ができない他のチームスポーツと違い、体操は個人競技であり、現役の外科医で都内の病院の院長としてどんなに忙しくても、自分の都合の良い時間に一人でも練習できることが継続の大きな理由だと中村さんは強調する。

体操選手の中村さん

再開当初は、高校時代後のブランクを埋めることに一生懸命だったが、やがて老化していく自分の体と向き合うことになる。

しかし、中村さんは、「老いていく体と正直に向き合って、これまでと変わらない動きが維持するように日々トレーニングして体操競技に挑戦するのは、むしろ楽しいことです」と語り、「この年齢で頑張っている僕の姿を見て、体操経験のある多くの人たちに、一緒に大会に参加してほしい」と笑顔を見せる。

「記録更新も意義があると思うが、より長く体操を続けたい」と中村さんは意欲を見せる。

それゆえに、今も中村さんは、今年2021年の大会参加を目指して日々のトレーニングを欠かさない。