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  • 日本で開催されるチアリーディングの大会「USA Nationals」で踊るジャパンポンポン(2019年)
  • 日本で開催されるチアリーディングの大会「USA Nationals」で踊るジャパンポンポン(2010年)
  • 2020年、東京で行われたリハーサルでの滝野文恵さん
  • 日本で開催されるチアリーディングの大会「USA Nationals」で踊るジャパンポンポン(2018年)

February 2021

チアリーダーは89歳

日本で開催されるチアリーディングの大会「USA Nationals」で踊るジャパンポンポン(2019年)

チアリーディングは年齢に関係なく、日本で人気の競技だ。

2020年、東京で行われたリハーサルでの滝野文恵さん

チアリーダーの笑顔、鮮やかな衣装、そしてエネルギー溢れるダンスが、観客を魅了し、世界中のスポーツイベントを盛り上げる「チアリーディング」。1860年代、アメリカの大学フットボールの応援から始まったチアリーディングは、スポーツ競技として発展し、今や多くの国で行われている。

日本でも全国の大学や高校、地域や企業のクラブチームなど、多くのチームが活動している。その中で、小さな愛好者のサークルが注目を集めてきた。このチームは1996年に結成された「ジャパンポンポン」といい、入会の条件は55歳以上、2019年時点のメンバー数は24名で平均年齢72歳。今でこそシニアチームは珍しくないが、結成当時、そんなチームは存在しなかった。

ジャパンポンポンの創始者の滝野文恵さんは1932年生まれの89歳。この数年、チームの運営は少しずつ後進に任せるようになったが、今も代表としてジャパンポンポンを率い、アップテンポの曲に合わせて演技を続けている。

日本で開催されるチアリーディングの大会「USA Nationals」で踊るジャパンポンポン(2010年)

「チアは健康のためとか何か目的のためにやっているのではないんですよ。メンバーのみんなも、私も、楽しいから、好きだから、チアをやっているの」と滝野さんは話す。

滝野さんは、大学を卒業後、結婚して2人の子どもに恵まれた。当時の日本社会では、女性は家庭に入って夫と子どもを支えるのが当たり前だった。滝野さんは、そんな女性像になじめず、52歳の時に、「後悔を残して死にたくない」という想いから自分自身の人生を歩むべく決心して、家族と離れ一人暮らしを始めた。

滝野さんは、人の老いを様々な面から研究する「老年学」を学ぼうと、53歳でノーステキサス大学に留学、修士号を得た。帰国後、アメリカから送ってもらった本を通して、アメリカにはチアのシニアチームがあることを知り、「是非日本でもやってみたい」と思った滝野さんは、友人たちに声をかけ、5人でジャパンポンポンを立ち上げた。現在、週1回、専門のコーチを招いて、観客に披露することを前提に本格的な練習を続けている。

そうは言っても、本当のところは自分たちが楽しむために始めたチアだったのだが、7周年記念のチャリティーショーを行った時、メンバーたちの心境に変化が起こり始める。その日の演技後、観客から「元気をもらった」「励まされた」という感想がたくさん届いたのだった。

日本で開催されるチアリーディングの大会「USA Nationals」で踊るジャパンポンポン(2018年)

「その感想を聞いて、初めて私たちがやっていることはそういうものだったのだと実感しました。そう、『チア』という言葉には陽気、歓喜そして応援という意味があるのですよね」と滝野さんは当時を振り返る。

以来、ジャパンポンポンは、高齢者像を刷新するため、チームのモットーに「夢と元気と希望を与えること」を掲げ、様々な大会にゲスト出場や本場アメリカのシニアチームとの交流を重ねた。

「何か新しいことを始めるのに年齢を理由に諦めることはない」と言う滝野さんは、80歳からウクレレも習い始め、演奏を楽しんでいる。

ジャパンポンポン結成25周年に当たる2020年は、チャリティーショー開催準備も進めてきた。しかし、新型コロナの流行に見舞われ、ショーは中止、練習への参加を見合わせるメンバーも出てきた。現在、活動人数は16名まで減少した。

それでも、滝野さんは「2021年は、改めて結成25周年のショーを開催したい」と意欲を示す。

そんな滝野さんに、これまで多くの人々が「チア」されたにちがいない。25周年のショーでも、観客はきっと「チア」されるだろう。