Skip to Content

The online magazine HIGHLIGHTING JAPAN

INDEX

Language
  • 余市蒸溜所は創業以来、石炭直火蒸溜を守り続けている。
  • ピートで大麦をいぶしながら乾燥させた余市蒸溜所のキルン塔
  • ウイスキーのロック(イメージ画像)
  • 1940年に作られた初代ニッカウヰスキー
  • ニッカウヰスキーの創業者、竹鶴政孝
  • 鮭など北海道産の食材を使ったランチセット

October 2020

北海道で育まれる重厚で力強いウイスキー

余市蒸溜所は創業以来、石炭直火蒸溜を守り続けている。

豊かな自然に恵まれた北海道の余市町(よいちちょう)では、スコットランドの伝統的な蒸溜(じょうりゅう)技術を活かしてウイスキーが造られており、その味わいは世界的な評価を受けている。

ウイスキーのロック(イメージ画像)

日本を代表する上質なシングルモルトウイスキー*「余市」は、北海道の日本海側に面する雪深い余市町にある、ニッカウヰスキー株式会社の余市蒸溜所で造られている。その力強く、重厚感がある個性的な味わいは、ワールド・ウイスキー・アワード(WWA)を始め世界の蒸溜酒のコンペティションでも高く評価され、数々の賞を受賞している。

余市蒸溜所は、“日本のウイスキーの父”と呼ばれるニッカウヰスキーの創業者、竹鶴政孝が設立した。

1940年に作られた初代ニッカウヰスキー

「1894年、広島県の日本酒の蔵元に生まれた竹鶴政孝は、英国北部・スコットランドのグラスゴー大学に単身留学し、約1年間、現地のウイスキー蒸溜所で修業を積みました。帰国後、ウイスキー造りに理想的な土地を求めてたどり着いたのが、余市町でした」とニッカウヰスキーのマーケティングを担当するアサヒビール株式会社の桐山修一(きりやましゅういち)さんは話す。

余市町は、スコットランドによく似た冷涼で湿潤な気候、豊かな水源と澄んだ空気がそろい、さらにウイスキーにスモーキーな香りをつけるピート(泥炭**)が豊富に産出する土地だった。

ピートで大麦をいぶしながら乾燥させた余市蒸溜所のキルン塔

ウイスキーは蒸溜した原酒を長い年月寝かせ、熟成を経た後、ようやく商品として販売することができる。そこで、竹鶴は熟成期間の経営を支えるため、まず1934年にりんごジュースを生産販売する会社を設立し、その2年後に余市蒸溜所でのウイスキーの蒸溜***を開始した。

余市蒸溜所では創業以来、昔ながらの石炭直火蒸溜を守り続けている。現在ではスコットランドでもほとんど見かけなくなった希少な伝統の技である。

ニッカウヰスキーの創業者、竹鶴政孝

「石炭直火蒸溜では、内部温度が1000℃を超える釜にもろみ****を入れて、焦げないように混ぜながら蒸溜します。蒸溜の間、適切な火力が保たれるように石炭をくべ続けるには熟練の職人の技が必要です。非効率的かもしれませんが、この技術により、余市の重厚で力強い味わいの要素が生まれます」と桐山さんは話す。

木樽に詰められたウイスキーは、樽の中で長い間熟成される。「気温が高く乾燥した環境の下では、水分が抜けていく蒸散が促されて熟成が早く進みすぎてしまうのです。四季を通じて寒冷な余市の気候は、ゆっくりとウイスキーを熟成させるのに適しています」とも話す。また、余市の熟成には主に新樽が使われるため、木の成分が多く溶出することで、豊かなバニラのような香りも生まれる。余市湾から吹く海風を樽が吸収し、熟成の長い歳月の間に原酒に溶け込んでいるせいか、わずかな潮の香り、大麦麦芽を乾燥させるために焚いたピートの香りを強めに感じるため、海産物やスモークした食品との相性がとてもよい。

鮭など北海道産の食材を使ったランチセット

余市蒸溜所の敷地内には、国の登録有形文化財に認定されている歴史建造物9棟があり、見学ツアーを実施している。余市のウイスキーとともに北海道の人気の食材を味わえるランチが堪能できるレストランも併設されている。機会があれば、北海道の豊かな自然の中で、重厚なウイスキーと食を堪能されたらいかがだろうか。

* 大麦麦芽のみを使用したウイスキーを「モルトウイスキー」と呼び、単一の蒸溜所でつくられたウイスキーをボトリングしたものを「シングルモルトウイスキー」と呼ぶ。
** 炭化のあまりすすんでいない石炭。スコットランド北部の原野に多いヒースという野草や水生植物などが炭化した泥炭が一例。
*** 液体を熱することで蒸気(湯気)となって蒸発していった気体を、冷やして再び液体にすること。
**** 発酵中の麦汁に酵母を加えると、酵母は麦汁中の糖分を分解し、アルコールと炭酸ガスに変え、ウイスキー特有の香味成分をつくる。約60時間の発酵終了後、これでできた発酵液をもろみと呼ぶ。