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INDEX

  • 三鷹天命反転住宅
  • 短期滞在用の部屋
  • 全9戸の住宅は、様々な形で作られている。
  • 凹凸がある床で遊ぶ子供
  • 室内では、6色以上の色が視界に入るように設計されている。
  • 様々な色で塗られた外廊下や階段

October 2020

色鮮やかなアートの住宅

全9戸の住宅は、様々な形で作られている。

東京郊外のある集合住宅は、居住者、短期滞在者、地元住民の五感を刺激する芸術作品でもある。

三鷹天命反転住宅

東京の郊外、閑静な住宅地の広がる三鷹市にカラフルで、一風変わった建物が建っている。1960年代から2000年代初頭まで国際的に活躍してきた美術家にして建築家、荒川修作(1936–2010)と彼のパートナーのマドリン・ギンズ(1941–2014)の共同設計による「三鷹天命反転住宅(みたかてんめいはんてんじゅうたく) イン メモリー オブ ヘレン・ケラー」である。

短期滞在用の部屋

2005年に竣工したこの住宅は、彼らの特徴的なコンセプトである「天命反転」に基づいている。住む人や訪れる人を刺激し続けることで、「死なない」ように設計されている。「天命反転」を実践した人物として彼らが尊敬する盲ろう者のヘレン・ケラーに刺激を受けて制作された。

全9戸の住宅は、球体、円筒、直方体の3種類の形が組み合わさって、できている。外廊下や階段などを除けば、通常の鉄骨の柱が使われていない。外観は鮮やかな14色に塗り分けられており、内装も多彩な色が使われている。

凹凸がある床で遊ぶ子供

「ここは地元の人やタクシーの運転手などにはカラフルな家と呼ばれ、ランドマークにもなっているんですよ」と三鷹天命反転住宅の支配人を務める松田剛佳さんは話す。

室内では、6色以上の色が視界に入るように設計されている。

三鷹天命反転住宅は、様々な色や形状で人の五感を活性化する機能的なアート作品として設計された。一見無秩序に見える室内の配色は、6種類以上の色が視界に入ってくるように設計されている。しかも、気分は不思議と落ち着く。その理由を松田さんは、「無数の色があふれかえる自然の中のように、人は6色以上の色が視界に入ると、無意識のうちに、色を一つ一つの単体ではなく、全体の色として認識するようになるからです」と説明する。五感を刺激されるのは視覚からだけではない。部屋の床にある奇妙な凹凸によって、自分自身の足で歩いているということを、そっと意識させられるのである。

様々な色で塗られた外廊下や階段

三鷹天命反転住宅は、9戸のうち5戸が貸し出されている。また、最低3泊4日のショートステイ、見学会も行われている。荒川とギンズは「この作品(住宅)は、人が住んで初めて完成する」と述べている。これに刺激を受け、世界中から年間約1000人余りの人が住宅を訪れている。