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  • 日本のワインとしては「山梨」が初めて日本政府から地理的表示を指定された。(イメージ画像)
  • ワイナリーの樽で熟成される山梨ワイン
  • 高野正誠(左)と土屋龍憲
  • 山梨を代表するぶどうの産地である勝沼のぶどう畑
  • 甲州・勝沼産の赤ワイン
  • 甲州種ぶどう

September 2020

甲州ワインの繊細な味わい

日本のワインとしては「山梨」が初めて日本政府から地理的表示を指定された。(イメージ画像)

日本においてぶどうの栽培が始まったのは千年以上前と伝わっているが、ワイン造りが始まったのは明治時代になってからである。今日、そのワインは世界に輸出され、高い評価を得ている。

ワイナリーの樽で熟成される山梨ワイン

山梨県はぶどうの収穫量、ワインの生産量ともに日本一を誇り、2013年には日本のワインで初めて地理的表示「山梨」*の指定を、日本政府(国税庁)から受けることになった。現在、県内には約80のワイナリーがあるが、その半分弱が山梨県甲州市の勝沼地区にある。

勝沼は、東京都心から西へ100キロメートル余り、富士山の北に広がる甲府盆地の東に位置している。海から遠く離れた甲府盆地は雨が少なく、日照時間が長いため、古くからぶどうの栽培が盛んに行われてきた。それが、日本の固有品種「甲州種」と言われるぶどうであり、山梨県の気候に適している品種である。その一日の中でも気温差が大きいことを活かして、現在は主に白ワイン用として栽培されている。

高野正誠(左)と土屋龍憲

日本でワインの本格的な生産が始まった契機は、今から、約140年前、近代化が始まった直後の1877年のことである。勝沼に大日本山梨葡萄酒会社という民間のワイン会社が設立され、高野正誠と土屋龍憲という二人の若者がワインの醸造法を学ぶため、フランスへと派遣されることになったのだ。

大日本山梨葡萄酒会社の流れをくむシャトー・メルシャンのゼネラル・マネージャー兼チーフ・ワインメーカー、山梨県ワイン酒造組合の会長も務める安蔵光弘さんは、「日本でのワイン造りは、実は当時の政府の国策でもあったのです」と言う。当時は内乱や凶作の影響で米が不足していたため、政府はワイン造りを広めることで、日本酒の原料となる米の消費を抑えようと考えていたのだという。

山梨を代表するぶどうの産地である勝沼のぶどう畑

高野と土屋がフランスから帰国すると、早速ワイン醸造が始まったのだが、ワインの味になじみのない日本では売れ行きが悪く、やがて会社は倒産に追い込まれる。しかし、二人は地元の人々に本場のブドウ栽培やワイン造りのノウハウをのこしたことによって、その後、勝沼の地に数多くのワイナリーが誕生する道を開いたのである。

勝沼では現在、甲州種で作られる口中で穏やかな味わいを感じることができる白ワイン、マスカットベリーAという品種から造られるイチゴの果実を連想させる香りとタンニンによる穏やかな渋みを有する赤ワインなど、様々なワインが造られている。特に人気の高いワインの一つが、甲州種で作られる辛口の白ワイン「甲州シュール・リー」である。その軽く、フルーティーな香り、すっきりとした酸味は日本料理との相性が非常に良い。「アワビをしょうゆで漬け込んだ山梨名物の煮貝や出汁をきかせたハマグリの潮汁は、甲州シュール・リー**とのマッチングが絶妙です」と安蔵さんは話す。

甲州・勝沼産の赤ワイン

近年、山梨ワインは世界での評価も高まっている。2010年には甲州種が、バリの「ぶどう・ワイン国際機構(OIV)」が作成するぶどうの品種リストに、日本のワインの醸造用のぶどうとして初めて登録された。これにより、EU域内でワインラベルに「甲州」という品種を記載して販売できるようになった。そして、2013年にはマスカットベリーAも登録された。また、「インターナショナル・ワイン・チャレンジ(IWC)」など国際的なコンクールで、山梨ワインが賞を獲得することも多くなってきており、輸出量は着実に増加している。ぶどう栽培では古い歴史を持つ山梨のワインは、今や世界中で堪能されるようになってきており、とりわけ、日本固有種の「甲州」、「マスカットベリーA」のワインの人気が高まっている。

甲州種ぶどう

* 山梨県産のブドウを使い、山梨県で醸造されたワインがすべて「地理的表示」ワインを名乗れるわけではない。ブドウの品種や品質、醸造方法などに厳しい基準がある。それらをすべてクリアしないと、地理的表示はできない。
** シュール・リーは、瓶詰めまで、ワインから澱(おり)取り除かずに熟成させる方法。この方法は赤ワイン造りで一般的であったが、現在はワインの味に深みを与えるために様々なぶどうの品種で行われている。