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  • ドローンで撮影したパラオのM-Dock処分場の3D画像
  • 沖縄で開催された大洋州島嶼国を対象とする廃棄物専門家養成研修
  • マーシャル諸島共和国でCDLによって回収されたアルミ缶
  • 福岡方式を導入したパプアニューギニア独立国のバルニ処分場

August 2020

太平洋の島々をごみから守る

ドローンで撮影したパラオのM-Dock処分場の3D画像

大洋州の島嶼国では近年、ごみ問題が深刻化している。日本は長年、ごみ処理改善のための支援を行っている。

沖縄で開催された大洋州島嶼国を対象とする廃棄物専門家養成研修

太平洋に大小様々な島が点在する大洋州は、美しい自然と多様な文化にあふれた地域である。しかし、大洋州の島嶼国では近年、人口の増加、そして、レジ袋やペットボトルの普及など、島民のライフスタイルの変化によってごみの種類が多様化し、量も増え続けている。また、観光客の増加も、当然にしてごみの増加を招いた。ごみは埋立地(処分場)に運ばれるが、島嶼国の狭い国土の中で新たな処分場を確保するのは難しい。そのため、増え続けるごみをどのように処理していくかが、これらの国々共通の大きな問題となっていた。

こうした中、国際協力機構(JICA)は、大洋州島嶼国で約20年にわたりごみ問題解決への取組を実施している。その一つが、ごみ処分場改善の支援である。大洋州島嶼国を含む多くの途上国では、分別せずに集めたごみをただ投棄するだけの「オープンダンピング」が一般的であった。しかし、こうした処分方法では、ごみの増加とともに、悪臭やメタンガスの発生、ごみから滲み出る汚水(浸出水)の川や海への流出といった問題が発生してしまう。そこでJICAは、「準好気性埋立構造」という、日本で広く導入されている廃棄物処分技術の普及に取り組んだ。1970年代に福岡市と福岡大学で共同開発されたことから「福岡方式」とも呼ばれている準好気性埋立構造は、処分場にパイプを張り巡らせ、そのパイプを通して、ごみから滲み出る汚水を排出させると同時に、外気を埋立地内に取り入れることで、ごみの中の微生物の活動を活発化させ、ごみの分解を促進するという仕組みである。

「福岡方式はごみの分解を促進することによって悪臭やメタンガスの発生を抑え、浸出水の水質を改善することができます。また、処分場の構造を改善し、適正な運営管理が行われることによって、処分場の寿命を延長させることもできます。さらに、パイプには、ドラム缶や廃タイヤなど、現地で入手可能な材料を使えるので、比較的低コストで建設・維持管理ができることも大きな利点です」とJICA地球環境部の中丸駿介さんは話す。

マーシャル諸島共和国でCDLによって回収されたアルミ缶

福岡方式の処分場は、2003年にサモア独立国で大洋州島嶼国として最初に導入されて以降、バヌアツ共和国、パラオ共和国など多くの国へと広がっている。

このほか、JICAは大洋州の22の国・地域が加盟する地域国際機関「太平洋地域環境計画事務局(SPREP)」と協力して、2011年から「大洋州地域廃棄物管理改善支援プロジェクト」(通称J-PRISM。2017年からフェーズ2) を実施し、ごみ問題に取り組む人材の育成や制度の構築・強化を行っている。特に島嶼国ならではの地理的な特性を踏まえて、島嶼国へのモノの流入を抑制し、できるだけ島内循環を増やし、リターン(島外のリサイクル市場へ戻すこと)を最大化する「3R+リターン*」のコンセプトを基に、島内の最終処分量を最小化することに取り組んでいる。例えば、人材育成の一環として、各国の廃棄物管理行政の担当者や民間のリサイクル業者等を対象に、ごみ処理の制度や地域での3Rの取組を学ぶ研修を日本や島嶼国間で実施している。地域内での好事例や教訓を現地の人同士で学び合うことによって、それぞれの国の廃棄物管理向上が促される。

また、消費者が缶やペットボトルに入った飲み物などの購入時にデポジット(預り金)を払い、消費者や回収者が使用済み容器を国内の指定場所に持ち込むと、購入時に徴収されたデポジットの一部が返却される「容器デポジット制度」(CDL )の構築を支援している。キリバス共和国、ミクロネシア連邦、パラオ共和国に続いて、2018年にCDLを導入したマーシャル諸島共和国(人口約58,000人)では、子供から大人まで多くの人々が参加し、1年間で缶、瓶、ペットボトルなど約1,600万本が回収されている。

さらに、プロジェクトでは最近、ドローンを使い、処分場の撮影と解析を始めている。従来は地上から観察することしかできず、処分場の全体像を把握することが難しかった。しかし、上空からの映像で、処分場の現状を可視化できるとともに、処分場があと何年利用可能であるかを、より正確に分析することが可能となった。

福岡方式を導入したパプアニューギニア独立国のバルニ処分場

「約20年にわたる日本の協力は、ごみ処理に関する人材の育成、人々の意識向上に貢献していると思います。最近、J-PRISMによって大洋州各国のごみ処理に携わる人材のデータベース化も進めているので、各国間の協力も更に進むでしょう」と中丸さんは話す。

日本の協力が、大海原に散らばる島々を結びつけている。

*ごみの減量(reduce)、資源の再利用(reuse)、リサイクル(recycle)、リターン (return)