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  • 国際協力機構(JICA)の支援の下、インドの学校で行われたキャラバンカーで回る「もったいないばあさん」の読み聞かせ
  • インドで行われた「もったいないばあさん」イベントの様子
  • 「もったいないばあさん」の絵本(日本語)。絵本は多言語に翻訳されている。

August 2020

世界で活躍「もったいないばあさん」

国際協力機構(JICA)の支援の下、インドの学校で行われたキャラバンカーで回る「もったいないばあさん」の読み聞かせ

『もったいないばあさん』は、ものの大切さを伝えるおばあさんが主人公の絵本である。現在、多言語に吹き替えられたアニメもネットで配信されており、世界中で楽しまれている。

「もったいないばあさん」の絵本(日本語)。絵本は多言語に翻訳されている。

小さな子供が、食べ物を残したり、まだ使えるものを捨てようとすると、「もったいない!」と言っておばあさんが現れ、知恵を授けてくれる――そんな絵本が『もったいないばあさん』である。

この絵本は、絵本作家の真珠まりこさんが、自分の幼い子のために「もったいない」という言葉の意味と、ものの大切さを伝えようと、それを教えるおばあさんキャラクターを主人公とした作品を手作りしたことから生まれた。それが、出版社の目に留まり、2004年に絵本として出版された。一見こわそうに見えるけれど、本当は愛情あふれる優しいおばあさんのキャラクターが子供たちの間で人気となり、シリーズ化された17作品の累計発行部数は100万部を超えた。多言語に翻訳出版された絵本は、広く世界各国の子供たちにも読まれている。

2020年、この『もったいないばあさん』が、講談社と環境省の共同プロデュースでアニメとなった。日本語、英語、フランス語、スペイン語、中国語、ヒンディー語の6か国語に吹き替えした4作品が、「世界環境デー」の6月5日から YouTube上でオンライン配信されている。

環境省環境再生・資源循環局総務課の土居健太郎さんは、「絵本『もったいないばあさん』は、親しみやすく、分かりやすいお話でありながら、限りある資源の大切さ、豊かな環境の尊さを伝えています。地球全体の環境汚染が深刻化する今、この作品をより多くの人が視聴できるよう、アニメにしました」と語る。

「もったいない」という日本の言葉は、2004年にノーベル平和賞を受賞したケニアの環境保護活動家・故ワンガリ・マータイさんが、来日時に感銘を受けて、日本語のまま世界に広めようとした。マータイさんは、「もったいない」を、環境保護活動の「Reduce」「Reuse」「Recycle」の3Rを言い表せるだけでなく、かけがえのない地球資源に対する「Respect」までも込めて一言で言い表す言葉だと考え、自ら提唱した「MOTTAINAI」キャンペーンのキャッチフレーズとした。

ものを大切にすることを教える1作目から始まった『もったいないばあさん』だが、「もったいない」という言葉が命の大切さを伝える言葉であるということから、自然の循環や生物の多様性、そして命の大切さなどを取り上げ、テーマを、気候変動、生物の絶滅、食料不足といった地球的課題につながるようなものへと広げていった。

2008年には、そのような地球上で起きている様々な問題と自分たちの生活とのつながりを考える『もったいないばあさんのワールドレポート展』が開催され、シリーズの中から、『地球の問題と世界の子どもたち』『生きものがきえる』が、東京にあるユニセフハウスや名古屋市で開催された (生物多様性条約第10回締約国会議COP10の会場などで展示された。展示会では、「自分さえよければと思わず分け合えば、世界は平和になる」「命は全てつながっていて、一つ一つの命が大切なんじゃよ」というもったいないばあさんのメッセージが伝えられている。

インドで行われた「もったいないばあさん」イベントの様子

2016年からは、国際協力機構(JICA)の事業で、インド国内をキャラバンカーで回り、環境教育として子供たちに『もったいないばあさん』を読み聞かせるプロジェクトも行われている。「このプロジェクトで訪問したインドの小学校では、子供たちの学校生活に「もったいない」が浸透していました。改めて「もったいない」という言葉には力強さがあり、そのマインドは世界で共有できるものだと思いました」と土居さんは語る。

今回のアニメ化に当たっては、廃棄プラスチック問題を解決するために世界の化学メーカーが共同で設立した非営利団体「Alliance to End Plastic Waste」が協賛し、国内7企業がパートナー企業となっている。

環境問題は、企業の活動も個人の生活も含めて、人間の活動全て、つながりを持つ地球規模の問題である。『もったいないばあさん』は、そのことを温かく問いかけている。