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  • 廃棄された衣料品(左)とそのリサイクルによってできたポリエステルを使った新しいTシャツ(右)
  • “GO!デロリアン”走行イベント(2015年)

August 2020

古着をリサイクルする新たな技術

廃棄された衣料品(左)とそのリサイクルによってできたポリエステルを使った新しいTシャツ(右)

世界中で大量に生産・消費される衣料品は、その量に比例して毎年、大量に廃棄されるが、それを資源としてリサイクルすることは、あまり進んではいなかった。日本のベンチャー企業が、古着を資源とする独自のリサイクル技術を開発し、自動車の燃料にもなるバイオエタノールや再生ポリエステルを作り出すことに成功し、事業を拡大している。

日本国内で1年間に廃棄される繊維製品は約170万トンに上る。そのほとんどが衣料品という。このうち、フェルトの原料に用いる等リサイクルされるものはごく一部であり、そのほとんどは焼却又は埋め立て処分されている。これは欧米でも同じような状況で、世界のアパレル産業が排出するごみの量は年間約9000万トンを超えるという。日本の一年間のごみの総量約4300万トン(20203月環境省発表)の約2倍である。この焼却か埋めるしかない大量の廃棄される繊維製品について、独自の技術とアイデアでリサイクルに取り組んでいるのが、日本環境設計株式会社(以下:JEPLAN)である。

2007年、社員2人で起業した小さなベンチャー企業であった同社が、まず最初に取り組んだのは、古着を回収してからバイオエタノールを作る技術だった。バイオエタノールは、通常、サトウキビ、とうもろこし、廃木材などのバイオマス資源(生物資源)からつくる植物性のエチルアルコールで、ガソリンと混ぜて主に自動車の燃料として利用される。同社は、大阪大学との共同研究で、古着の綿繊維を糖化・発酵させ、重油の代替燃料に再生することに成功した。そして、2017年には世界でも非常に先進的と言える、古着に含まれるポリエステル繊維のリサイクル技術を開発し、石油から作るのと変わらない高品質な再生ポリエステルの製造に成功した。

現在、JEPLANは、リサイクル事業『BRING』を展開している。このプロジェクトは、衣料販売会社などのアパレル関連企業に参加を募り、その協力により全国約2000カ所に、古着などの不要となった繊維製品の回収拠点を設置する。そして、消費者からの持ち込みで回収したものから、再生したポリエステルでBRINGブランドのTシャツなどを製造・販売するほか、アパレルメーカーにも再生ポリエステルを素材として供給を行うというものである。こうして、従来リユースするしかなかった古着は、リサイクル技術によって全く新しい服へと生まれ変わって何度も着ることができる、「服から服へ」という新たな循環の資源となったのである。

JEPLAN広報担当の沖田愛子さんによると、BRINGの名はリサイクル品を「持ち込む」という消費者の行動をそのままブランド名にしたものだという。

「循環型社会を実現するには、我々1社ではどうにもなりません。多くの販売店やメーカーの協力が不可欠なばかりでなく、消費者にもその一翼を担ってもらうことが実現のカギです」と沖田さんは語る。

BRINGプロジェクトでは、消費者を巻き込み、リサイクルへの関心を高めるため、様々なイベントも企画している。その一つが2015年の“GO!デロリアン走行イベント”だった。デロリアンとは、映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』に登場するタイムマシン自動車で、生ゴミを燃料にして時空を駆け回る。映画の設定と同じ2015年10月21日に、イベント参加者から事前に回収した衣料から作ったバイオエタノールで自動車を走らせることにした。このイベントの発案者はJEPLANの創業者の一人で、現在は取締役会長を務める岩元美智彦氏である。学生時代にこの映画を見て感動した彼は、会社を立ち上げた時からこのアイデアをひそかに温め続けてきたのだという。

“GO!デロリアン”走行イベント(2015年)

映画配給会社の協力も得て実現した“GO!デロリアン走行イベント”は、国内外のメディアに取り上げられ、多くの人々の関心を集め、イベントまでの3ヶ月間に20トンを超える、それまで同社が回収してきた1年分に匹敵するリサイクルする衣料を集めた。

JEPLANでは、国内のリサイクル衣料の回収拠点を更に増やすとともに、ライセンスによりBRINGの海外展開も目指している。例えば、フランスの繊維産業の中核都市・リヨンでは、現地の繊維組織と共同で同プロジェクト実施のためのトライアル運用も行われたという。

「服から服へ」、という新たなリサイクルの輪が、日本から世界へと広がっていくことが期待されている。