The online magazine HIGHLIGHTING JAPAN

INDEX

Language
  • 上空から見る川崎エコタウンの位置する地域
  • 公害問題の克服に取り組み、環境が改善した川崎市の様子(1967年と2010年の、上空からの写真)

August 2020

資源を再活用・循環させる「エコタウン」

上空から見る川崎エコタウンの位置する地域

第二次世界大戦後の日本では、高度経済成長の影で公害問題が深刻化した。日本有数の工業都市の一つ、川崎市でも、大気汚染や水質汚濁などの甚大な公害が発生したが、企業、市民、地方自治体が連携して、その克服に取り組み、現在、同市臨海部は、日本を代表するエコタウン*となり、国内外から注目されている。

公害問題の克服に取り組み、環境が改善した川崎市の様子(1967年と2010年の、上空からの写真)

川崎市は、東京都に隣接する神奈川県にある人口約150万人の工業都市である。日本の高度経済成長期(1950年代~70年代)には、石油製品、化学工業、鉄鋼などの製造業を中心に京浜工業地帯の中核都市として日本の成長・発展をリードしたが、一方で、急速な工業化は大気汚染や水質汚濁など、深刻な環境悪化を招くことになった。

これに対処するため、1980年代から企業、市民、川崎市が連携して、環境改善のための取組を行った。企業は、公害対策への積極的な投資、公害防止技術の開発、関連技術者の養成などを実施。市民は環境意識を醸成し、川崎市は公害被害者救済制度の整備、大気汚染防止に関する企業との協定締結、公害防止条例制定などに取り組んだ。こうした努力の結果、川崎市は、公害問題を徐々に克服するとともに、大気浄化、廃棄物処理・再資源化の分野を中心に、環境対策技術と様々なノウハウが蓄積されることになった。現在では、約400の研究機関集積地となり、従来の製造業に加え、医療・福祉、学術研究、情報通信分野が大きな成長産業となりつつある。

公害問題に端を発する川崎市の環境問題への取組は、現在も進化しながら発展を続けている。中でも、エコタウンの取組は内外の高い注目を集めている。

1997年、川崎市は、臨海部の2800ヘクタールを対象に、環境と産業活動が調和したまちづくりを目指す「環境調和型まちづくり構想(エコタウン構想)」を策定し、政府から国内第1号となるエコタウン地域の認定を受けた。翌1998年から本格的に、エコタウンの実現に動き出した。

川崎市国際経済推進室の担当者は、川崎エコタウン構想を策定した背景には、「重工業から情報・サービス産業への産業構造転換による深刻な産業の空洞化、地球環境問題があり、それらの課題に直面する中で培った環境技術やノウハウ等の蓄積により環境保全コストの最小化をめざし、世界をリードする産業地帯に転換していくという発想があった」と語る。

川崎エコタウンは、地域の産業蓄積等を活かした環境産業の振興と地域の独自性を踏まえた廃棄物の発生抑制・リサイクル推進を通じた資源循環型経済社会の構築を目指し、これを日本政府が補助金交付を含めて支援を行った。企業は先導的な資源リサイクル施設の整備や研究開発拠点の整備を進め、川崎市は国内外に向けて、川崎エコタウンの取組についての情報発信などの観点から事業に関わった。

今日、構想は実現し、川崎市臨海部は日本を代表するエコタウンとなった。その大きな特徴の一つが、エリアに立地する企業間において事業活動から発生する排出物・副生物を相互利用する関係性の構築であり、まさにゼロ・エミッションの理想形と言える。中でも象徴的なのが、循環型・省資源型の「川崎ゼロ・エミッション工業団地」である。川崎エコタウン構想の先導的モデル施設として、排出物や副生産物を可能な限り抑制すると同時に、再利用・再資源化やエネルギーの循環活用を進めている。例えば、再生紙として利用するのが難しいとされていた難再生古紙のリサイクルや、団地内での水の循環利用など、資源やエネルギーを有効利用し、「環境負荷の最小化」の実現を目指している。

また、再資源化や循環利用の取組は川崎ゼロ・エミッション工業団地内に限らず、エコタウン域内の各施設においても同様に行われている。ステンレス廃材を原料として活用したセメントの製造や、使用済プラスチックを原料としたアンモニアの製造など、エコタウン構想に基づいて整備されたリサイクル施設を始め、周辺施設と連携して、資源の循環・有効利用を図っている。

川崎エコタウンには、国内外から毎年1000人前後の視察者が訪れる。

「海外からはアジアを中心とした国々からの視察が多いですね。昨年視察に来られた、東アジアの国の地方都市の幹部も『工業地帯を整備する際に川崎市の例を特に参考にしたい』と話されていました。視察に来られる他の国々の皆さんも同様のケースが多いです。川崎市の技術・ノウハウの蓄積は、これから経済成長期を迎える国や地域にとって参考になるのだと思います」と担当者は言う。

同市は、2020年2月に脱炭素宣言を行い、2050年に向けてカーボンゼロを目指すなど、環境先進都市としての取組をさらに加速させるとともに、川崎国際環境技術展の開催などを通じて、川崎エコタウンの成果の情報発信や海外への貢献に資する努力を続けている。

*すべての産業廃棄物を他の分野の原料として活用し廃棄をゼロにすることを目指す都市