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August 2020

循環型社会に向けて

ジャーナリストの崎田裕子さん


日本は今、循環型社会の実現に向けた動きを加速させています。ジャーナリストで、環境問題に関する様々なNGO活動を先導され、環境省中央環境審議会委員を務める崎田裕子さんに日本の取組について伺いました。

崎田さんは、中央環境審議会委員として、日本の循環型社会の形成に向けた計画を定めた「第四次循環型社会形成推進基本計画」(2018年閣議決定)の策定に関わられましたが、基本計画のポイント、循環型社会に向けた日本の動きを教えてください。

基本計画の重要なポイントは「地域循環共生圏」の形成です。地域循環共生圏とは、各地域が、再生可能資源や循環資源などその地域固有の資源を活かしながら、その特性に応じて、持続可能で活力ある地域づくりを目指すというコンセプトです。資源は可能な限り地域内で循環させますが、難しい場合は広域で循環させ、地域間で補完し支え合います。

こうした循環型社会の実現に向けて、日本は今大きく変化をしています。例えば、7月には全国でレジ袋が有料化となりました。これは私たち市民が使い捨てを見直し、プラスチックごみ削減やリサイクルの徹底を考えるきっかけとなっています。大手の製造業や小売業などの企業も意欲的に取り組んでいます。ある大手飲料メーカーは、店頭に回収箱を置く小売店と連携し、回収したペットボトルから再びベットボトルを作っています。

エネルギーに関しても、これまでは大規模電力会社が日本の隅々まで電力を供給していましたが、近年は、例えば、地域で間伐材などバイオマスを使って作る電気や、廃棄物発電を売電したりして地域の活性化につなげるなどの動きが広がっています。

持続可能な循環型社会に向けて、市民、自治体、企業、政府が連携して行動する意識が今、非常に高まってきていることを実感しています。

そうした意識の高まりを示す事例を教えてください。

来年夏に東京で開催が予定されているオリンピック・パラリンピックの約5,000個の金・銀・銅メダルを、使用済みの携帯電話など多様な小型家電から抽出した金属で作るプロジェクトが動いています。廃棄された家電製品に含まれる様々な有用金属は貴重なものであり、集めて再生することができる資源ですから、「都市鉱山」とも呼ばれています。2017年4月から全国の自治体、企業、学校などの協力の下で回収が進み、2年間でメダルに必要な金属量を確保することができました。リサイクル金属でオリンピック・パラリンピックの全てのメダルが作られるのは、大会史上初めてです。

このほか、東京のオリンピック・パラリンピックでは、太陽光や水素など再生可能エネルギーの利用や、「3R」[ごみの減量(reduce)、物の再使用(reuse)やリサイクル(recycle)]の実施が計画されています。例えば、食品ロスの削減、大会で調達する物品の99%再使用・リサイクルや、安全のため使い捨てを活用する選手村レストランの紙製食器の100%リサイクルです。オリンピック・パラリンピックの日本開催は、我が国の循環型社会に向けた取組が内外に広がるきっかけとなるでしょう。私も、持続可能な運営計画づくりに参加しています。

循環型社会の実現に向けて、日本の文化や習慣は、どのように役立っているとお考えでしょうか。

日本語には、自然の恵みの食べものや使える物を無駄にしてしまう時の、惜しい気持ちを表す「もったいない」という言葉があります。日本には物を大切にするという文化が古くからあります。例えば、たった一枚の布で様々な物を包む「風呂敷」はそうした文化を象徴していると言えます。

また、物のリサイクルを普及させるためには、ごみをできる限り資源ごとに分別して捨てるという個々の消費者の行動が重要ですが、日本ではこれが定着しており、世界からも高く評価されています。こうした日本人の行動は、もったいないという意識に深く根ざしていると思います。

世界の循環型社会の実現に、日本はどのように貢献できるでしょうか。

アジア諸国では急速な経済発展とともに、ごみの量も急増しており、3Rの技術、制度、文化を急ぎ定着させる必要があります。そのために、日本は先端的な科学技術分野から、ごみの分別や生ごみの堆肥化など人々の生活スタイルに根ざした活動まで、幅広い分野で貢献できると思います。

日本政府のイニシアティブで国連機関と連携し、アジアでの3Rを推進するために、各国政府、国際機関、企業、NGOなどが参加して、2009年に「アジア3R推進フォーラム」が設立されています。現在は「アジア太平洋3R推進フォーラム」と拡大し、ほぼ毎年、その政府間会合が開催されていますが、私はサイドイベントである「アジア3R推進市民フォーラム」に関わり、各国のNGOが、それぞれの国での状況や取組を発表して、お互いの取組の参考にし合うワークショップを開催しています。今後、各国の市民が互いの知恵や経験を共有することが、ますます大切になると思います。