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March 2020

南国のモノレール

沖縄県を走る「ゆいレール」に乗れば、沖縄の青い空と海、450年の歴史を持つ琉球王府が育んだ独自の文化に触れる旅ができる。

沖縄都市モノレール株式会社が運営する沖縄都市モノレール、愛称「ゆいレール」は、那覇市の那覇空港駅と浦添市のてだこ浦西駅を約40分で結ぶ17キロの路線である。ゆいレールは2003年8月に那覇空港駅と首里駅との間で開通、2019年10月には首里駅からてだこ浦西駅まで路線が延長された。

ゆいレール開通以前は、自動車が県民の移動手段の中心であった。しかし、沖縄県の最大都市である那覇市への人口や産業の集中が進み、交通渋滞が深刻化したため、その対策としてゆいレールが建設された。ゆいレールの乗客数は、2004年には年間約1,100万人であったが、2019年には約1,900万人を突破、交通渋滞の影響も受けず、定時運行されることから、地元住民や観光客の重要な交通手段となっている。

2両編成のゆいレールの車両には沖縄らしさを表すデザインが施されている。車体には、沖縄県の象徴である首里城をイメージした朱色のラインが引かれており、車内の座席には、沖縄伝統の織物「琉球かすり」の紋様をあしらっている。

ゆいレールは、地上10メートルの軌道上を走るので車窓からの眺めも良く、様々な観光地へのアクセスにも便利である。

そうした観光地の一つが、牧志駅から徒歩5分、沖縄を代表する繁華街、国際通り沿いのビルにある「那覇市伝統工芸館」である。沖縄では、海外との貿易を通じて栄えた琉球王府時代(1429-1879)以来、諸外国の影響を受けて様々な工芸が生まれている。工芸館では、鮮明な色彩の染物「琉球びんがた」、朱塗りが美しい「琉球漆器」、琉球王府の古都、首里で生まれた織物「首里織」、シーサー像、瓶や壺など日用品の陶器「壺屋焼」、ガラスを吹いて成形する「琉球ガラス」などの工芸品が展示・販売されている。また、これら5つの工芸品の作品作りを体験できるワークショップも開催されている。

旭橋駅から徒歩約15分、那覇港を望む崖の端には神社「波上宮」(なみのうえぐう)がある。波上宮が創建された年ははっきりと分かっていない。沖縄の人々ははるか昔から「ニライカナイ」(理想郷)と呼ばれる海神の国の神々に豊漁と豊穣を祈っていた。人々がニライカナイに祈りを捧げた場所の一つが、波上宮になったという。波上宮は琉球王府も深く信仰し、毎年正月には中山王が行幸し、王国の繁栄を祈っていた。波上宮が建つ崖の下には「波の上うみそら公園」が広がっており、砂浜での海水浴、シュノーケリング、バーベキューなどのレジャーを楽しめる。

そして、首里駅で降り首里の街並みを15分歩くと首里城公園がある。公園は、琉球王府の政治、外交、文化の中心地であった首里城の建造物の復元と合わせて1992年に一部が開園、その後、建物の復元、公園エリアの拡大が順次進められた。2000年に「琉球王国のグスク及び関連遺産群」(グスクは城の意味)の構成遺産の一つとして首里城跡が世界遺産に登録されている。2019年10月に発生した火災により公園内は一部立ち入り制限があるが、既に火災前の約8割の面積に当たる公園エリアで入場が可能で、首里城の主要な門の一つ「守礼門」(1958年復元)や那覇の街並みや青い海が一望できる「西のアザナ」と呼ばれる物見台などの施設を訪れることができる。

また、首里城公園の周辺には、琉球王府時代の面影を残す古い街並みが残されている。首里城南側斜面に位置する金城町(きんじょうちょう)石畳道は16世紀初めに作られた、石灰岩をモザイク状に敷き詰めた道である。全長は約300メートルの坂道で、両側には古民家が立ち並び、沖縄独特の風情がある。

ゆいレールに乗って旅をすれば、沖縄の青い空と海、琉球王府の文化を堪能することができる。