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Highlighting JAPAN

冬の夜に輝く光の花

栃木県足利市には、春に咲く美しい藤で知られるフラワーガーデンがある。また冬には「光の花」が咲き、春にも負けない人気を誇っている。

栃木県の南部に位置する足利市に、100,000平方メートルの敷地に350本以上の藤が植えられた「あしかがフラワーパーク」がある。園のシンボルとなっている樹齢150年以上の藤を鑑賞するため、仕立てた藤棚は約1000平方メートルに及ぶ。満開時には長いもので1.8メートルにもなる紫色の花房が頭上一面を覆う。2014年には、アメリカのニュースチャンネルCNNが、その幻想的な花の姿をから、「世界の夢の旅行先10か所」に選出したことでも話題を呼んだ。

あしかがフラワーパークの藤が見頃を迎えるのは4月中旬から5月中旬である。しかし、LEDの「光の花」が咲き乱れる冬にも来園者が増加する。それが2001年以来、毎年10月下旬から2月上旬にかけて夜間に開催されているイルミネーション「光の花の庭」である。年間来園者数約160万人のうち約60万人がこの時期に訪れている。

「藤の他にも四季それぞれに咲く様々な花木を植えていますが、どうしても冬は花の停滞期になります。それでも園内のレストハウスを利用してくださるお客様がいらっしゃったので、少しでも楽しめるようにスタッフが窓の外の木に飾ったささやかな電飾が『光の花の庭』」の始まりでした」と園を管理する株式会社早川ホールディングスの代表取締役社長、早川公一郎さんは振り返る。これが好評を博したことで、少しずつ園内に電飾が増え、「光の花の庭」の開園に至った。

今もあしかがフラワーパークのイルミネーションは、園のスタッフが樹木の手入れをする傍ら、約5か月をかけ、全て手作業で設置している。

「彼らは、花がどのようにつくか、どんな色で咲くか、知り尽くしています。ですから藤の花の表現には、既成の電球色では満足できず、花弁の電球一つ一つに花色の濃淡を手描きで色付けしています」と早川さんは話す。この藤の花の再現が他に例を見ない独自性が認められて、全国の「夜景鑑賞士」が選ぶイルミネーションアワードで4年連続1位を獲得している。

また、それぞれ趣の違った4つの大藤棚や80メートルにも及ぶ藤のトンネル、山の斜面に季節の風物詩を描き出すイルミネーション、園内に点在する池の水面を利用したイルミネーションなどが毎年テーマを加えて登場し、来園者を楽しませる。今季の一番の見所は、藤のイルミネーション「光のふじのはな物語」である。あしかがフラワーパークの藤は品種によって開花時期が少しずつ異なっており、さくら色のものから咲き始め、紫、白、そして黄色の花と咲き進む。「光のふじのはな物語」では、イルミネーションならではの演出として、この色の移ろいを1本の幹で表現している。

2019年10月、日本の広範囲に被害を及ぼした台風19号の大雨で園内全体が冠水したこともあり、今季また「光の花の庭」を眺められることは足利市民にとって、大いに感慨深いという。スタッフ総出で排水作業や傷んだ樹木の回復作業にいそしみ、「光の花の庭」は例年より1週間遅れての11月2日に点灯を開始した。

「イルミネーションに来園くださる市民の方々に『よくぞここまで復旧してくれてありがとう』とたくさんの声を掛けていただきました。それがスタッフ一同の何よりの励みになりました」と早川さんは話す。

今季は過去最大となる500万球の光を灯し、色とりどりの温かいイルミネーションが足利の夜を照らしている。