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Highlighting JAPAN

雪深き里の「合掌造り」

岐阜県の山中にある「白川郷」は冬になると絵本のような美しさを見せる。

1995年に世界遺産に登録された岐阜県白川村の「白川郷」は、約100-300年前に建てられた「合掌造り」の木造家屋群で知られる。急傾斜のかやぶき屋根が特徴の合掌造りが59棟(母屋)立ち並ぶ荻町地区は、春から秋にはのどかな田園風景を見せるが、冬になると雪にすっぽり覆われる。

一般社団法人白川郷観光協会の手塚勇樹さんは「積雪量はその年によって変動がありますが、少ない年でも1.5メートル、多ければ2メートル以上3メートル近く積もる年もあります」と話す。

白川郷の合掌造りの家屋は、雪の重さで屋根が潰されないように、他の地域のかやぶき屋根の家屋以上に、屋根雪下ろしの負担軽減のため急傾斜となっている。合掌造りは、丸太を三角形に寄り掛けた構造で建てられており、祈る時に手のひらを合わせる「合掌」の形を思わせることから「合掌造り」と呼ばれるようになったと言われている。

市街地からは遠く離れた山中にあり、冬の間雪に閉ざされる白川郷は、農業を行う土地も期間も限られていた。そのため、白川郷では養蚕が人々の生活を支える重要な産業で、第二次世界大戦前まで、合掌造りの家屋の屋根裏では、広い空間を利用して蚕の飼育が盛んに行われていた。

合掌造りの屋根のかやは積雪で滑り落ちることもあるので適宜修復を行うほか、約30年に1度は、「結」(ゆい)と呼ばれる相互扶助によって全てふき替えを行う。(現在は業者によるふき替えもある)

「結には年配の者から若者まで地域住民が全員参加します。こうして長い歴史の間、技を世代間で引き継ぎ合掌造りを守ってきました」と手塚さんは語る。

40年ほど前の豪雪で、この地域へ通じる唯一の国道も閉鎖され、集落は孤立した。しかし、道路網が整備されたほか、集落に通じる道の除雪も完全に行われているので、冬でも比較的アクセスは容易になった。

「今では年間180万人近い観光客がいらっしゃいます。そのうち約80万人は外国人観光客で、特に雪の降らない国からいらした方々は、皆さん白川郷の雪景色には感動の声を上げられます」と手塚さんは話す。

荻町地区では、積雪のある時期の夜間、ライトアップイベントが数回行われ、神秘的な雰囲気を作りだしている。(予約制。詳細は白川郷観光協会HPをご確認ください)。荻町地区には、合掌造りの屋内を客室に改装して、冬季営業する民宿が20軒ほどある。これらの宿で、夜が更ければ雪が降り積もる音以外何も聞こえない静寂の中、人々が守り継いできた古き良き伝統を堪能するのも良いだろう。

「白川村には、荻町地区以外にも冬を楽しめる場所があります。白川郷の近くにある平瀬温泉郷では雪景色の中で露天風呂に入ることができます。また、白川郷から車で10分ほどの場所にあるトヨタ白川郷自然學校では、雪の森のスノーシュー散歩など、様々な雪遊びができます。是非、こうした場所へも足を延ばして、冬ならではの体験を満喫して欲しいです」と手塚さんは話す。