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Highlighting JAPAN

餃子の町

栃木県宇都宮市では、餃子人気を活用した地域振興が行われている。

中国発祥の餃子は、日本では第二次世界大戦後に、家庭や飲食店で一般的に食べられるようになった。中国の餃子は、ひき肉、野菜などの材料を混ぜた餡を小麦粉の皮で包んだものを主に茹でて作るが、日本の餃子は皮が中国より薄く、焼いて食べるのが主流である。

日本には餃子を専門とする飲食店が数多くあるが、栃木県宇都宮市は餃子を目玉に地域振興に成功し、「宇都宮といえば餃子」と言われるまでになった。市内には300店以上の餃子提供店が軒を連ねる。

餃子が宇都宮の人気料理として脚光を浴びるようになったきっかけは、総務省が毎年実施している全国家計調査だった。1987年、調査項目に餃子が初めて追加されると、宇都宮市は餃子の一世帯当たりの年間購入金額が全国1位であることが明らかになった。その後も現在に至るまで、宇都宮市は全国で1位、あるいは2位の餃子購入額となっている。

「餃子は昔から、地元の人間にとっては非常に身近な食べ物でした。お祭りやお祝いの席で人が集まれば必ず餃子が振る舞われましたし、学校帰りなどにお腹が空けば餃子店に寄り道するのは当たり前でした。しかし、それが宇都宮ならではのこととは知らなかったのです」と協同組合宇都宮餃子会の事務局長、鈴木章弘さんは言う。

この調査結果に注目した当時の宇都宮市役所の職員が、餃子を宇都宮の名物にすることを考え、地元の餃子店に一軒一軒、協力を依頼して回った。1993年には38店舗により宇都宮餃子会が発足、市と餃子会は餃子イベントの開催や、餃子店を紹介したマップ作成などの活動に積極的に取り組んだ。それが、テレビ、新聞、雑誌などのメディアで頻繁に取り上げられるようになり、宇都宮の餃子は全国的な知名度を得ていった。

宇都宮餃子会は「味は競争、宣伝は共同で」をポリシーに、加盟店と密接に協力しながら様々なプロモーション活動を行っている。

「私たちは『宇都宮餃子』の名称で商標登録を取得していますが、特に共通のメニューやレシピは作っていません。宇都宮には店の数だけ餃子の味があるとも言われ、その違いを楽しむため市内の人気店を食べ歩きする人も多いのです」と鈴木さんは言う。

宇都宮市中心部にある餃子会直営の「来らっせ」本店には、常設5店舗のほか加盟店の餃子を日替わりで提供するコーナーが用意され、一カ所で様々な餃子の味を楽しめることから、休日には大行列ができるほどの人気スポットになっている。

また、毎年11月には市内の公園で「宇都宮餃子祭り」が開催され、例年、東京など関東近県から2日間で約15万人が訪れる。宇都宮から離れた神奈川県横浜市の観光施設「横浜赤レンガ倉庫」でも毎年4月に「宇都宮餃子祭りin YOKOHAMA」が開催されており、3日間の来場者が約15万人に達する大規模イベントになっている。

2017年の宇都宮市の調査では、餃子を食べることを目的に年間900万人もの人が県外から市を訪れている。宇都宮市は、この餃子人気を活かして地域の振興を図るために、日本を代表するバーテンダーが集まる「カクテルのまち」や、様々なジャズライブを行う「ジャズのまち」としてのプロモーションも行っている。さらには、サッカーやバスケットボール、自転車ロードレースなどのプロチームもある。2019年11月2日、3日には、3人制バスケットボールのクラブチーム世界一決定戦、宇都宮餃子祭り、ジャズフェスティバル「ミヤ・ジャズイン」が同時開催され、市内は大勢の人でにぎわった。

「人気の高い餃子を核にして、宇都宮のスポーツや文化などの魅力も国内外へと広めていきたいです」と鈴木さんは話す。

宇都宮市では、餃子が市民、そして町のエネルギーの源となっている。