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Highlighting JAPAN

ビジネスでアフリカの暮らしを変える

アフリカの生活に実直に向き合った日本企業のビジネスが、50年以上にわたり人々の持続的な生活改善や産業振興に貢献している。

アフリカは約40か国が海に面しており、そうした国々の沿岸では水に関わる産業が盛んである。また、アフリカ東部のヴィクトリア湖やタンガニーカ湖などの湖の沿岸、ナイル川などの河川沿いでも、漁業が重要な産業となっている。

こうした地域の漁業において大きな役割を果たしているのが船外機である。かつてアフリカでは手漕ぎと帆の船が一般的であったため、漁の範囲は限られていた。しかし、船に船外機を取り付けることで漁の範囲が広がり、漁獲量は増加していった。そうしたアフリカでの漁業振興に大きく貢献したのが、静岡県磐田市に本社を構えるヤマハ発動機株式会社である。

「1970年代にアフリカで船外機の導入を開始しました。当時、アフリカの漁師には船外機を購入する資金はありませんでしたが、アフリカの漁業振興を支援し、漁師の所得を向上させることができれば、船外機の販売につながると考えたのです」と同社の広報グループ・主務の岩崎慎さんは話す。

以降、日本の政府開発援助(ODA)をきっかけとしてビジネスは拡大した。船外機の販売だけでなく、メンテナンスの指導にも取り組んだ。さらに、イラストや写真をふんだんに使い、日本各地で調べた漁法、船上での鮮度の保ち方、加工・販売方法などの情報を掲載した英文タブロイド誌「Fishery Journal」(一部、フランス語とスペイン語)を1977年から発行し、アフリカの沿岸漁業に携わる人々に無償で配布した。

しかし、アフリカでは重荷で船外機を長時間運転させる上に、燃料も粗悪であった。また、泥水や砂利が多く混じる水の中での利用が多く、故障が頻発した。同社は、壊れにくく、修理しやすい製品の開発を行うとともに、メンテナンスや修理を行う現地の整備士の育成も進め、故障にもすぐに対応できるアフターサービスのネットワーク整備にも取り組んだ。

「船外機の故障は命にも関わるため、現地でのメンテナンス体制を整えることが重要です。現地で車の整備経験者を募り、船外機の整備士として育成しました」と同社の広報グループリーダーの壬生貴さんは話す。

製品の販売のみならず、現地の人々のニーズに応えるこうした様々なサービスやノウハウを提供することで、アフリカの漁業の自律的、持続的な発展に貢献している。

また、同社はFRP(繊維強化プラスチック)製ボートの現地製造の技術支援を行っている。それまで主流だった木造漁船が、耐久性のあるFRP製ボートに変わることで、木造船用の木材の使用が減り、森林伐採の減少につながっている。さらに、安全な漁業や雇用創出にも貢献している。

タコなど魚介類が重要な輸出品となっているモーリタニアでは、2011年に現地政府系企業からの技術援助要請を受け、同国北部の港町ヌアディブで沿岸漁業用の造船工場建設の支援を行った。同社はFRPボートを建造するために必要な工場、設備、工具に関するアドバイスや量産に欠かせない船の「型」や生産・製造技術や工場運営、品質管理などのノウハウを提供、2014年に第1号艇が完成・進水している。

この他、外務省、国際協力機構(JICA)などの組織と協力して、小型浄水装置の普及を進めている。この浄水装置は、自然界の水浄化機能をベースにしたシンプルな構造で、大きな電力や、専門の技術者によるメンテナンスが不要なことが特徴である。河川や湖沼の水で1日8,000リットル(約2,000人分)の浄水を供給することが可能で、アフリカでは、8か国で計21基(2019年6月末現在)が設置されている。これにより、病気の減少、女性や子どもの水くみ労働からの解放など、住民の生活が改善されている。

同社は今後、IoTを活用した物流システムへの取組みなど、新しい分野のビジネスの構想も進めている。日本企業の製品やサービスが、遠く離れたアフリカの人々の暮らしを着実に変えている。