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Highlighting JAPAN

ケニアで人材を育む

日本の総合商社が、自動車整備などの技能を学べるセンターをケニアに設立し、アフリカの自律的発展を支える人材の育成を支援している。

2016年8月、ケニアの首都ナイロビで第6回アフリカ開発会議 (TICAD VI) が開催され、「ナイロビ宣言」が採択された。宣言では、3つの優先分野の一つ「経済の多角化・産業化を通じた経済構造改革の促進」を実現するための課題として、「人材育成」が挙げられた。

ナイロビ宣言を踏まえ、日本の政府や民間企業は、アフリカの経済を支える人材育成に取り組んでいる。そうした取組を行っている企業の一つが、トヨタグループの商社、豊田通商株式会社である。豊田通商のアフリカ事業は、1922年の東部アフリカにおける綿花の輸入に始まる。2012年にアフリカで事業を展開していたフランス大手の商社CFAOへ資本参加、2016年に完全子会社化し、アフリカでのビジネスを拡大してきた。2017年に同社では初の地域を軸とする「アフリカ本部」を立ち上げた。

アフリカ本部の担当者は「豊田通商グループは『With Africa, For Africa』の理念の下に、人々と共に成長していくという長期的視野で、事業創造に取り組んでいます」とその意義を語る。また、「産業の多角化や雇用の創出は、アフリカ各国政府の希望に沿うところでもあります。地域の成長に寄与するという面からも、安全への意識改革やスキルアップなど、人材の育成に注力しています」とも話す。

この一環として同社が運営しているのが、人材育成トレーニングセンター「トヨタケニアアカデミー」である。トヨタケニアアカデミーは、CFAOの子会社であるトヨタケニア社がそれまで、自社や東アフリカ地域のトヨタ正規輸入代理店・ディーラーの技術者の育成に使用していたセンターを、2014年の移設を機に、施設と機能を拡充し開設したものである。ケニア国家ビジョンが掲げるグローバル人材育成のための能力開発に貢献するため、若年層・女性・障害者を中心とした一般向けの講座も展開することにした。

アカデミーの運営に携わっていたアフリカ本部の担当者は「安全・健康・教育・環境を柱に、多岐にわたるプログラムを企画し、提供しています。特に自動車分野の講座は基礎的ながらトヨタスタンダードの技能が学べるとあって、非常に多くの若者が応募し、定員を超える応募がある人気のプログラムとなっています」と話す。

自動車分野の講座のほか、トヨタ生産方式として広く知られる“カイゼン”は、総合的品質管理やPDCAとともに、効果的で生産性の高い職場と参加者の組織を実現するため、トヨタ認定トレーナーが指導にあたる。また、国際協力機構(JICA)から派遣された講師の協力を受け建設機械や農業機械の操作、修理の研修を実施するなど、グループ内に知見が乏しい分野も、日本政府、国連関係と協力してプログラムを企画している。さらに、起業家や経営者を目指す人を対象に、リーダーシップやマネジメントを教えるビジネスプログラムも実施している。

「受講者は延べ1500人以上となり、中には、自動車整備業を自営する方も出てきました。ケニアの人々が自ら考え、自主性を育むことで社会貢献につながると思っています」と担当者は言う。

他のアフリカ諸国の政府からも、このアカデミーに熱い注目が集まっている。日本企業の人材育成の取組が、アフリカの自律的発展、経済構造改革を後押ししている。