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Highlighting JAPAN

 

 

日本の文房具の魅力

高い品質と多彩なデザインを備えた日本の文房具。実用性主体のステーショナリーを超えた、ポップで遊び心あふれる魅力が世界に広がり始めている。

日本の文房具の人気が世界中で広がっている。訪日観光客が帰国する時のお土産としてはもちろん、海外において自分で使うために日本の文房具を購入するケースも増えている。

東京・表参道で、コーヒーや料理を楽しみながら様々な文房具に実際に触れて購入もできる『文房具カフェ』を運営する奥泉徹さんは、人気の理由について「優れた実用性と、多様な発想とそのデザインにある」と説明する。

実用面で支持され、海外・国内両方でヒットした日本の文房具は数多く存在する。近年の代表例が、株式会社パイロットコーポレーションの『フリクション』である。ペンの後ろにあるラバーでこすると文字を消せる『フリクション』は、2006年にヨーロッパで販売を開始した。翌年に日本で発売され、世界累計販売本数は20億本を突破した。「ヨーロッパでは学校の授業で鉛筆を使わず、ボールペンや万年筆を使用します。書き間違えるといちいち“インク消し”を使わなければいけないため、簡単かつきれいに消せる『フリクション』は、ヨーロッパの学生にとって大変便利な文房具です。この実用性と利便性が爆発的なヒットにつながったのでしょう」と奥泉さんは分析する。

また、多様な発想から生まれたデザインは日本の文房具の特徴と言える。文房具カフェに訪れた海外の方や、海外の方に日本の文房具の魅力を伝えるイベントを開催した時に、文房具なのにカラフルでキュートだ、面白い発想の商品ばかりで見ていてワクワクする、という感想を多く聞いたと言う。「確かに、外国の文房具はカラーバリエーションや商品の種類が限られています。例えば日本では、おもちゃの風車をヒントに風で回るカラフルなマグネットがあったり、付箋の塊を豆腐に捉え、豆腐のパックに真似て販売するなど、斬新な発想の商品がありますが、海外ではそういった文房具はほとんど販売されていないため、これが文房具なのかと驚きながら購入するケースはとても多いです。このような状況を見るにつれて、外国人がイメージする文房具と、日本のそれは、少し違う物なのだろうと感じます」と奥泉さんは話す。

日本国内の文房具市場は、オフィスのペーパーレス化やIT化、学校授業でのタブレット端末導入、人口減や少子高齢化により、今後、規模の拡大は難しいと考えられている。そのため、国内の文房具メーカーは積極的に海外に展開している。

「日本の文房具メーカーの海外売り上げは増えていますが、現在、海外の文房具・事務用品売り場には、日本の文房具が豊富に並んでいる状況ではないので、まだまだ広がるチャンスはあります。そのためには、日本の文房具が実用性や品質の高さはもちろん、ステーショナリーとは少し違う発想でデザインの多彩さを見せ、発想の面白さから生じる“使う楽しさ”をさらにイメージしてもらう必要があるでしょう。多くの人に日本の文房具の魅力が伝わることで、人気はさらに高まるはずです」と奥泉さんは語る。