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Highlighting JAPAN

 

日本のベストホテルを率いる総支配人

国内外の旅行者が評価する数々のアワードで日本のベストホテルに輝いたザ・リッツ・カールトン京都。日本生活通算22年となる総支配人マーク・ノイコムさんに、日本での経験と日本の魅力について話を伺う。

職人教育と徒弟制度で有名なスイスに生まれ育ったマーク・ノイコムさんは、約40年前、15歳の時にシェフとして職業人生を始めた。3年間の見習い生活を終えるとローザンヌの著名なホテルスクールへ進み、サービスや経営、語学を学んで修了証書を獲得した。「生粋の欧州人の自分にとって良い挑戦になる」と、東京でのインターンシップを皮切りにホテルマンとしてのキャリアを開始して以来、日本での生活は通算22年になる。

リッツ・カールトンの一員となって、最初のアジアの歴任地は2000年の上海であった。以来、家族を帯同して大阪、バーレーン、モスクワを経て、現在のザ・リッツ・カールトン京都では総支配人を務めて3年になる。

ノイコムさんは、アジアや非西洋の歴史文化の中で創意工夫を凝らすホテル経営は楽しくて仕方がないと言う。現在の京都では伝統的な長屋をイメージした静ひつで落ち着いた内装デザインや、彼も自ら参加する神社仏閣を巡るランニングアクティビティなどが人気を博している。「ザ・リッツ・カールトン京都はラグジュアリーアーバンリゾートホテル。ここで滞在する楽しさとは、その土地の要素をゲストが自分の好みに応じて楽しむ、創造的な体験にある。従業員を巻き込み、閃ひらめきを具体化し、そこにゲストが参加し楽しんでくれ、弊社のミッションである、生涯の思い出を作ってくださったときに、ホテルサービスの醍醐味を感じます」とサービスのプロであるノイコムさんは語る。

日本生活の長いノイコムさんだが、「こんなに長く過ごすとは思わなかった」と笑う。日本は地方と都市がそれぞれ異なる表情や特徴を見せる。また、和食の奥深さ、桜や紅葉などの自然の美しさ、長い歴史や洗練された文化も尽きない魅力を放つ。すっかり魅了され、アジアを知るホテルマンとしてキャリアアップしていった。

日本の良さとは、礼儀正しさと清潔さ、そして規律。祇園祭の喧騒と興奮の裏で、参加者が自発的にゴミをきちんと集めて美観を維持する姿勢には「日本人の天性のホスピタリティ」が表れているとノイコムさんは感じている。それは日本でのホテル経営の強みでもある。総支配人としては外国人宿泊客と日本人の宿泊客のニーズのバランスに苦心する場面もあるが、日本で働く上で、従業員たちの才能やホスピタリティ溢れる提案にはいつも大いに助けられている。

ノイコムさんは現在住む京都の街を愛し、その街を自分の足で味わい尽くすことのできるランニングを公私両面で心から楽しんでいる。ザ・リッツ・カールトン京都で大人気のランニングプランでは、総支配人自らコースを開発し、宿泊客を率いて走る。ホテルマンとして宿泊客を楽しませることを様々なアプローチで追求し続ける彼の人生の目標は「充実した人生を送ること」である。志を高く持ち、自分を含めた家族の成功と社会への貢献を実現する。コツコツと、日々、努力を積み重ねていく彼の理念は、日本とスイスのどちらのものづくりに携わる者に共通する。それが、ノイコムさんが日本で成功を手にした理由なのかもしれない。