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Highlighting JAPAN

 

 

日本最後の秘境の島・西表島

沖縄の離島・西表島(いりおもてじま)は、島の大半が亜熱帯の原生林とマングローブ林に覆われ、日本最後の秘境の島とも言われる。イリオモテヤマネコなどの希少な動植物も生息し、他の島々とは異なる魅力がある。

沖縄本島からさらに南西へ400km、大小の美しい島々からなる八重山諸島。中でも西表島は沖縄県で本島に次ぐ2番目に大きな島で、今なお9割が原生林に覆われている。
自然あふれる島ながら、古くから人が暮らしており(5千年前とも言われる)、また500年以上前から稲作が行われてきた。祖納(そない)地区や干立(ほしたて)地区に今も残る節祭(しち)は、神に五穀豊穣を願い感謝する祭りで、500年前から続いている。
島民たちは、植物も動物も生活に必要な分だけを採取し、「使いながら守る」文化を育んできた。亜熱帯の森の手入れをしながら、取った植物を糸や布に変えて使う。また琉球イノシシ猟ではその年の最後に、海にイノシシの頭を捧げて来年の猟を祈願するなど、自然への感謝も忘れない。

島の魅力について、西表島エコツーリズム協会の徳岡春美さんは「西表島の魅力は圧倒的な自然度の高さです。特にマングローブ林の面積は日本一です」と語る。鬱蒼としたジャングルから低地のマングローブ林を抜け、海へと流れる川は、淡水域から淡水と海水が混ざる汽水域、そして海水域と表情豊かである。マングローブの根は小魚たちの絶好の隠れ場所でもあり、島内最長の浦内川では現在400種以上の魚が確認されている。

そのマングローブ林を眺めるには、リバークルーズがお勧めである。島の北側の浦内川、島の南側の仲間川などに遊覧船がある。またカヌーとトレッキングを組合せた、アウトドアツアーも多数用意されている。人気スポットはピナイサーラの滝で、落差が55mあり見応えがある。浦内川から遊覧船に乗り、船着場からマリユドゥの滝とカンピレーの滝まで歩くツアーはトレッキング初心者でも参加しやすい。体力に自信があれば、徳岡さんが「神々しい」と絶賛するマヤグスクの滝までトレッキングもできる。

シュノーケリングも西表島で人気である。星砂の浜は北端に位置するビーチで、星の形をした砂(有孔虫の殻)があることからその名が付けられ、浅瀬で波が穏やかなため家族連れに向いている。島の西側のイダの浜は、定期船に乗るなどアクセスに少々時間がかかるが、人影も少なく絶好のシュノーケリングスポットである。また、上原港沖合に浮かぶ、白いサンゴのかけらでできたバラス島は奇跡の島とも呼ばれ、写真映えもすることから今注目を浴びている。

西表島では、子どもたちの大好きな昆虫を始め、多くの生き物に出会うことができる。バードウォッチングが好きなら「カンムリワシが見たい」などガイドにリクエストしておくと良い。特別天然記念物のイリオモテヤマネコは簡単には見られないが、夜間に行動することが多いため星空ツアーなどナイトツアーに参加すれば、可能性はゼロではない。

西表島は、フランス語版の旅行誌『GEO』に2016年に紹介されたこともあり、ヨーロッパを始め訪日観光客も増えている。八重山諸島の拠点となる石垣島にはクルーズ船が停泊し、新石垣空港(南ぬ島 石垣空港)には中国、香港の航空会社が就航している。

西表島エコツーリズム協会では、自然と共に育まれた文化の継承にも注目し、島の住民やガイド向けに勉強会も開いている。徳岡さんは「島に来ていただいた方へ、島の自然を一緒に守ってもらえるような語りかけをしていきたいです。島を大切にする心を、受け入れる我々から発信していきたいです」と語る。